AMDが自社ブランドのAI開発用ミニPC「Halo Box」を6月に発売します。NVIDIA DGX Sparkの対抗製品として、128GBの統合メモリとROCmフルサポートを備えながら、価格は半額以下になる見込みです。

この記事でわかること:

  • Halo Boxの主要スペックと設計
  • NVIDIA DGX Sparkとの価格・性能の違い
  • ROCm 7.2.2で対応するAIツールとモデル
  • 既存のサードパーティStrix Halo機との差別化ポイント

AMD AI Dev Dayで実機が公開

https://videocardz.com/newz/amd-ryzen-ai-halo-box-with-ryzen-ai-max-395-reportedly-coming-in-june-price-still-unknown

2026年5月1日、サンフランシスコで開催されたAMD AI Dev Dayで、Halo Boxの実機が公開されました。イベント参加者のReddit投稿によると、AMDの幹部がステージ上で片手で持ち上げて見せるほどコンパクトな筐体です。展示機はUbuntuで動作しており、前面のLEDストリップはソフトウェアから制御できます。LinuxカーネルのRGBドライバパッチもすでに確認されています。

Halo BoxはCES 2026で初めて発表されたAI開発者プラットフォームです。当時はQ2 2026発売とされていましたが、今回6月という具体的な時期が明らかになりました。

スペックの全体像

Halo Boxに搭載されるRyzen AI MAX+ 395は、AMDのStrix Haloアーキテクチャの最上位SKUです。主要スペックは以下のとおりです。

  • CPU: Zen 5、16コア / 32スレッド
  • GPU: RDNA 3.5、40コンピュートユニット
  • NPU: XDNA 2(AI推論の高速化に対応するニューラルプロセッシングユニット)
  • AI性能: 合計126 TOPS
  • メモリ: LPDDR5x-8533、128GBオンボード
  • メモリ帯域: 273 GB/s
  • OS: Windows / Linux デュアルサポート

冷却はデュアルブロワー方式を採用し、プロセッサとオンボードメモリに直接エアフローを当てる設計です。ダイレクトコンタクトヒートパイプと専用ベースプレートで放熱します。ポート構成はHDMI×1、USB Type-C×2〜3、USB Type-A×1が確認されています。

筐体は業務用を意識した控えめなデザインで、天面と前面にフライス加工のAMDロゴ、表面にはダイヤモンドパターンの穴あき加工が施されています。この穴が吸気口を兼ねています。

DGX Sparkとの価格差が最大の武器

https://wccftech.com/amd-aims-ryzen-ai-halo-mini-pc-at-nvidia-dgx-spark-targets-june-launch/

Halo Boxの最大の訴求点は、NVIDIA DGX Sparkに対する価格優位性です。DGX Sparkは128GB構成で$4,699です。2026年2月にメモリ供給の逼迫を理由に$3,999から値上げされました。

一方、同じRyzen AI MAX+ 395を搭載するサードパーティのミニPCは$2,300〜$3,000で販売されています。Framework Desktopの128GB構成は$2,348、GMKtec EVO-X2の96GB構成は$2,300〜$2,400です。AMD自社ブランドのHalo Boxも$2,000〜$3,000の範囲に収まると予想されています。

メモリ帯域はDGX Sparkと同じ273 GB/sです。ただし、NVIDIAはGrace Blackwell(GB10)チップを搭載しており、CUDA対応のソフトウェアエコシステムで大きくリードしています。ローカルAI開発でどちらを選ぶかは、使いたいフレームワークやモデルがCUDAとROCmのどちらに最適化されているかで決まります。

ROCm 7.2.2とDay 0モデルサポート

Halo BoxはROCm 7.2.2をフルサポートします。ROCmはAMD GPU向けのオープンソースAIソフトウェアスタックで、NVIDIAのCUDAに相当します。

対応が確認されているツールとモデルは以下のとおりです。

  • 開発ツール: LM Studio、ComfyUI、VS Code
  • AIモデル: GPT-OSS、FLUX.2、SDXL
  • Day 0サポート: 発売時点で主要なAIモデルがすぐ動作する状態で出荷

AMDのマーケティングでは200Bパラメータ(2,000億パラメータ)モデルの実行も可能としています。ただし、これは量子化(モデルの精度を落としてメモリ消費を減らす手法)を前提とした数値であり、クラウドのGPUクラスタと同等の速度は期待できません。128GBメモリで70B〜141Bクラスのモデルを4bit量子化で動かすのが現実的な用途です。

サードパーティ機との違い

同じRyzen AI MAX+ 395を搭載するミニPCはすでに複数のメーカーから発売されています。Halo Boxとの主な違いは、AMD自社による品質管理、ソフトウェアの最適化、そして価格戦略です。

マザーボードの設計が他メーカーの標準AXB35ボードとは異なり、専用設計になっています。ROCmやAIモデルがプリインストールされた状態で出荷される予定で、セットアップの手間が省けます。WindowsとLinuxの両方で動作保証されている点も、開発者にとっては安心材料です。

AMD自社ブランド製品として、サードパーティ機より戦略的な価格設定がされる可能性もあります。ただし、DRAM価格の高騰が続いているため、大幅な値下げは難しい状況です。

発売タイミングへの懸念

VideoCardzの記者は、Halo Boxの発売タイミングについて「遅すぎる」と指摘しています。サードパーティのStrix HaloミニPCがすでに市場に出回っており、Halo Boxが新しいハードウェアを持ち込むわけではないためです。

価格でサードパーティ機を下回らなければ、存在意義が薄れるという見方もあります。一方で、AMD純正のソフトウェア最適化とサポートが付く点は、企業のAI開発チームにとっては判断材料になります。個人開発者はサードパーティ機のほうが選択肢が広く、法人ユーザーはHalo Boxの統合サポートが魅力になるという棲み分けが生まれそうです。

6月の正式発売時に価格が発表されれば、ローカルAI開発用ハードウェアの価格競争がさらに動きます。ROCmエコシステムの成熟度が購入判断の分かれ目です。