AIエージェントが自分でコードを書いて実行する時代が来た。その実行環境として、コンテナよりも100倍速く起動するCloudflareの新技術「Dynamic Workers」がオープンベータに移行した。
この記事でわかること:
- Dynamic WorkersがなぜAIエージェントのコード実行に向いているか
- コンテナとの速度・メモリ効率の違い
- Cloudflareが「Agents Week 2026」で発表した主要な新機能
https://blog.cloudflare.com/dynamic-workers/
AIエージェントがコードを書く時代の課題
Claude CodeやCursorのようなコーディングエージェントが普及した今、AIがその場でコードを生成してすぐ実行するという処理が至る所で起きている。このとき問題になるのが、生成されたコードをどこで安全に実行するかだ。
AIが生成したコードをそのままアプリ内で eval() するのはセキュリティ上のリスクが高い。そのため多くのシステムはコンテナを使ってコードを隔離して実行している。ただしコンテナには課題がある。起動に数百ミリ秒かかり、メモリ消費も数百MB規模になる。ウォームアップのために常時起動しておくとコストがかかり、複数のタスクでコンテナを使い回すと隔離性が下がる。
1ユーザーにつき複数のエージェントが並行稼働するようなスケールを想定すると、コンテナベースの方式では費用対効果が合わなくなる。
Dynamic Workersの仕組み
Dynamic WorkersはV8 JavaScriptエンジンの「アイソレート」をベースにしている。アイソレートはGoogle ChromeがWebコンテンツを安全に実行するために使っている技術で、Cloudflare Workersが8年前のサービス開始時から採用してきたものだ。
起動時間は数ミリ秒、メモリ使用量は数MBで済む。コンテナと比べると起動は約100倍速く、メモリ効率は10〜100倍高い。
Dynamic Worker Loader APIを使うと、Cloudflare Worker内から別のWorkerをコードを指定してその場で起動できる。LLMが生成したTypeScriptコードを受け取り、それを隔離されたサンドボックスで実行し、結果を返すという処理が数行で書ける。
並行サンドボックス数やレート制限のようなグローバル制約もなく、Cloudflareの数百箇所のデータセンターすべてで動作する。リクエストが来た場所と同じマシン上でDynamic Workerが起動するため、余分なレイテンシも生じない。
Code ModeとTypeScript APIでトークンを81%削減
Dynamic WorkersにはCode Modeという考え方が組み合わさっている。通常、エージェントにAPIを呼ばせるときはMCPツール定義を与えるが、Code ModeではAPIのTypeScript型定義を与えてコードを書かせる。
OpenAPI仕様と比べてTypeScript型定義はトークン数が大幅に少なく、CloudflareのMCPサーバーでは全CloudflareAPIへのアクセスをわずか2つのツールと1,000トークン以下で提供できている。LLMがAPIを呼ぶためのコードを自分で書いて実行するため、データをすべてLLMに渡さずに済み、推論コストを最大81%削減できると報告されている(参考)。
Agents Week 2026で同時に発表された主要機能
https://blog.cloudflare.com/agents-week-in-review/
Cloudflareは2026年4月13〜17日の「Agents Week 2026」でAIエージェント向けに20本以上の機能を発表した。その中でも実務への影響が大きい主なものを挙げる。
Cloudflare Sandboxes GA:シェルとファイルシステムを持つ永続型の隔離環境。Dynamic Workersが軽量なコード実行に向いているのに対し、Sandboxesはパッケージのインストールやターミナルコマンドが必要なエージェントに使う。
Agent Memory:AIエージェントに持続的な記憶を提供するマネージドサービス。会話をまたいで情報を保持し、必要なものを呼び出し、不要なものを忘れる管理を自動で行う。
Browser Run:以前のBrowser Renderingを刷新した機能で、エージェントにブラウザを与える。ライブビュー、Human in the Loop、CDP(Chrome DevTools Protocol)アクセス、セッション録画に対応し、同時実行数が4倍に拡大した。
Cloudflare Mesh:エージェントがプライベートなデータベースや内部APIに安全にアクセスするためのネットワーク基盤。Workers VPCと統合しており、手動でトンネルを設定せずにスコープを絞ったアクセス権をエージェントに付与できる。
AI Search:エージェント向けの検索プリミティブ。インスタンスを動的に作成してファイルをアップロードし、ハイブリッド検索と関連度ブーストで横断検索できる。
Cloudflare Email Service(パブリックベータ):エージェントがメールを送受信・処理できるインフラ。エージェントを既存のメール受信箱に接続するのに使う。
まとめ
Dynamic Workersのオープンベータ移行は、AIエージェントがコードを生成して即座に安全実行する処理を、コンテナなしで大規模に運用できることを意味する。コンテナとの比較で100倍の起動速度と大幅なメモリ削減は、ユーザーごとにエージェントを動かすような用途では特に大きな差になる。
Code Modeと組み合わせることで推論コストの削減にも直結するため、AIエージェントを本番運用しているチームにとって検討の価値がある選択肢だ。Agents Week 2026の全発表は公式サイトでまとめて確認できる。