金融エージェントを作るとき、リアルタイムの株価・決算資料・アナリスト予想を一度に揃えるのは思った以上に手間がかかります。データプロバイダーごとにAPIキーを管理し、レスポンス形式を統一し、引用元をトレースする仕組みが別途必要です。
Perplexityは2026年5月6日、Agent APIにfinance_searchツールを追加しました。ライセンス済みの金融データセット、リアルタイム市場データ、Webソースを1回のツール呼び出しでまとめて取得できます。
この記事でわかること:
- Finance Searchがどんな課題を解決するか
- Agent APIでの実装手順(コード例あり)
- FinSearchComp T1ベンチマークの結果と他ツールとの差
- Sonar APIとの使い分け方
https://www.perplexity.ai/hub/blog/introducing-finance-search-in-the-agent-api
金融エージェント開発の課題
株価・財務諸表・決算トランスクリプト・SECファイリングといった各データは、それぞれ異なるプロバイダーが提供しています。開発者がそれらを統合しようとすると、各APIへの接続、認証管理、レスポンス形式の変換という作業が積み上がります。
一般的なWebサーチツールで代替しようとすると、今度は別の問題が生じます。関連性の低いテキストを大量にLLMへ渡すことになり、コストが増え、ノイズも混入しやすくなります。金融データには「正確性」「リアルタイム性」「引用元の明示」という3要件が同時に求められるため、Web検索だけでは対応が難しい場面が多くあります。
Finance Searchの仕組み
Finance SearchはAgent APIのfinance_searchツールとして動作します。モデルがリクエストを受け取ると、財務情報が必要と判断したタイミングで自動的にFinance Searchを呼び出し、ライセンス済みのデータソースへルーティングします。返却されるのは引用元が付いた統一スキーマのデータです。
対応するデータカテゴリは次のとおりです。
- 価格・ファンダメンタルズ: 株価、PER、セグメント別業績など
- 決算情報: 収益レポート、決算説明会トランスクリプト、アナリスト予想の推移
- ファイリング: SECへの提出資料、バランスシート、損益計算書、キャッシュフロー計算書
- 市場活動: ETF、市場全体の動向
プロバイダーの変更や新カテゴリの追加があっても、ツールインターフェース自体は変わらない設計です。アプリケーション側のコードを書き直す必要はありません。
実装手順
まずSDKをインストールします。
pip install perplexityai
APIキーを環境変数PERPLEXITY_API_KEYに設定したうえで、以下のようにfinance_searchツールを有効化します。
from perplexity import Perplexity
client = Perplexity()
response = client.responses.create(
model="perplexity/sonar",
input="NVIDIAの現在の株価とPERを教えてください",
tools=[{"type": "finance_search"}],
)
print(response.output_text)
エンドポイントはPOST https://api.perplexity.ai/v1/agentです。OpenAI SDKを使用している場合はPOST /v1/responsesも受け付けているため、既存のコードベースへの統合がしやすくなっています。
ドキュメントにはFinSearchComp T1ベンチマークで検証済みのデフォルト設定が公開されています。初めて使う場合はその設定を起点にするのが確実です。
https://docs.perplexity.ai/docs/agent-api/quickstart
代表的な活用例
Finance Searchを組み込むことで、次のようなワークフローをエージェントに持たせられます。
バリュエーションルックアップ: 最新株価・セグメント業績・決算コメンタリーを1回の呼び出しで取得し、バリュエーションレポートを自動生成する。
財務モニター: バランスシートや損益計算書の変化を定期チェックし、異常値が出たときにアラートを送る。
決算リキャップ: 報告数値と経営陣の発言をセットで取得し、決算サマリーを自動作成する。
リサーチアシスタント: アナリスト予想の推移を追跡し、コンセンサスの変化を日次でレポートする。
いずれも、以前は複数のプロバイダーAPIを個別に叩く必要があった処理です。Finance Searchはその統合部分を引き受けるため、開発者はエージェントのロジック本体に集中できます。
FinSearchComp T1ベンチマークの結果
PerplexityはFinSearchComp T1という、時間依存の金融データ取得を測定するオープンベンチマークでの比較結果を公開しています。Finance Searchは精度・レイテンシ・正解1件あたりのコストの複合評価でトップに立ちました。
コストが低い理由は、モデルに渡すトークン数にあります。Finance Searchは構造化されたソースから直接データを取得するため、大量のWebテキストを処理させずに済みます。返答のなかにインライン引用が含まれているため、どのプロバイダーのどの数値を使ったかも確認できます(参考)。
Sonar APIとの使い分け
Perplexityが提供するAPIには、Finance SearchのほかにSonar APIがあります。Sonar APIはWebを横断した情報収集や対話型Q&Aに向いており、幅広いトピックに対応できます。
一方、Finance Searchはライセンス済みの金融データソースへのルーティングに特化しています。株価・決算・SEC資料のように「出典と鮮度が重要な金融情報」を扱うなら、Finance Searchを使う方が精度・コスト両面で有利です。
また、Agent APIはマルチプロバイダー対応という特徴もあります。OpenAI・Anthropic・Google・xAIのモデルを単一のAPIキーで呼び出せるため、モデルの切り替えや比較も容易です。
金融エージェントの開発起点として
Finance Searchが登場したことで、金融エージェントの開発に必要な「データ取得層」を自前で構築するコストが大幅に下がりました。証券データプロバイダーとの個別契約・統合作業なしに、ライセンス済みのデータへアクセスできる環境が整ったことは、個人開発者やスタートアップにとっても影響が大きいです。
Perplexityは「プロフェッショナルファイナンス向けのAI」として既にアナリストや投資家に使われており、Finance SearchはそのデータパイプラインをAPIとして開発者に開放した位置づけです。金融系エージェントを検討しているなら、まずAgent APIのFinance Searchドキュメントを確認してみてください。