GBrainは、Claude Code・ChatGPT・Codex CLIなど複数のAIツールに共通の長期記憶を持たせるオープンソースの知識ベースです。YCombinator代表のGarry Tan氏が開発し、2026年4月10日にMITライセンスで公開されました。リリース後24時間でGitHubスター5,400件超を獲得し、大きな注目を集めています。
この記事でわかること:
- AIエージェントが会話をまたいで記憶を保持できない問題とその背景
- GBrainの仕組みと主な機能
- Claude Code・ChatGPTなど複数クライアントへの接続方法
- インストールと初期設定の手順
AIエージェントはなぜ記憶を持てないのか
現在のAIチャットは基本的にステートレスです。会話が終わると前回の内容はリセットされ、次のセッションでは何も覚えていません。
プロジェクトのコーディング規則、チームのレビュー基準、繰り返し使うプロンプトのパターン——こうした文脈を毎回手動で与え直す必要があります。AIを業務に組み込む際の大きな摩擦点のひとつが、このコンテキストロスです。
GBrainはこの問題に正面から取り組みます。マークダウンファイルをgitリポジトリで管理し、Postgres+pgvectorで検索可能にする構成で、複数のAIクライアントが同じ知識ベースを参照できるようにします。
GBrainの仕組み
https://github.com/garrytan/gbrain
GBrainの設計は「マークダウン+データベース」の2層構造です。
知識は通常のマークダウンファイルとしてgitリポジトリに保存されます。各ページは「コンパイル済みの事実(summary)」と「時系列のタイムライン」の2部構成になっており、情報が更新されるたびに事実部分が書き換えられ、更新履歴はタイムラインに追記されます。
このマークダウン群をPostgresデータベースにインデックスし、ベクトル検索・キーワードマッチ・Reciprocal Rank Fusionを組み合わせたハイブリッド検索で取り出します。独自のベンチマーク(240ページのテストコーパス)では、P@5で49.1%、R@5で97.9%を記録しています。
Garry Tan氏自身はこのシステムを12日間で構築し、現在17,888ページ・4,383人・723社の情報を継続的に蓄積しています。cron jobを21本走らせ、ミーティングの文字起こし・メール・ツイート・音声メモを自動で取り込んでいます。
主な機能
34のスキルと30以上のMCPツール
GBrainは34のスキルファイルを内蔵しており、知識の取り込み・検索・エンリッチメント・レポート生成といった作業をAIエージェントが自動で実行できます。MCPサーバーとして起動すれば、Claude Code・Cursor・WindsurfなどMCP対応クライアントからそのまま利用できます。
エンティティ自動抽出と知識グラフ
ページへの書き込み時に、LLMの呼び出しなしで人名・企業名・関係性(「〜に投資した」「〜に所属する」など)を抽出し、ページ間のリンクを自動生成します。「Acme AIで働いているのは誰か」「今四半期にBobが投資した案件は何か」といった質問に、ベクトル検索単体では届かない精度で答えられます。
Dream Cycle(夜間自動処理)
「Dream Cycle」は夜間に自律で動く知識整理サイクルです。新たに取り込んだミーティングの文字起こしやメールをもとに、人物・企業ページを更新し、引用を修正し、知識を統合します。Garry Tan氏は「朝起きると昨晩より脳が賢くなっている」と表現しています。
複数AIクライアントへの接続方法
stdio経由(Claude Code・Cursor・Windsurf)
~/.claude/server.json に以下を追加するだけで、Claude CodeからGBrainを呼び出せます。
{
"mcpServers": {
"gbrain": { "command": "gbrain", "args": ["serve"] }
}
}
OAuth 2.1経由(ChatGPT・Claude Desktop)
gbrain serve --http でHTTPサーバーを起動し、ngrokで公開することでChatGPTやClaude Desktopからも接続できます。OAuth 2.1に対応しており、クライアントごとにスコープ(read / write / admin)を制限できます。管理ダッシュボードがバイナリに同梱されており、ブラウザから接続クライアントの管理やアクセスログの確認ができます。
インストール手順
初期設定はgitクローンから始めます。
git clone https://github.com/garrytan/gbrain.git
cd gbrain
bun install
bun link
gbrain init # PGLiteを初期化(約2秒)
gbrain import ~/notes/ # 既存のマークダウンを取り込む
PGLiteはWebAssembly上で動くPostgres 17.5の組み込み実装で、外部サーバーの準備が不要です。ファイル数が増えてきたらSupabaseまたはセルフホストのPostgresに移行できます。
ひとつ注意が必要な点として、npm install -g gbrain や bun install -g は使えません。npmには別パッケージが同名で登録されており、Bunはグローバルインストール時にpostinstallフックをスキップするため、どちらも正常に動作しません。公式が推奨する git clone + bun link の手順を使う必要があります。
料金
GBrainはMITライセンスのオープンソースソフトウェアで、ツール自体の利用料金はありません。ただし、エンリッチメントや記事要約など一部機能は内部でLLM APIを呼び出すため、使用量に応じたAPI料金がかかります。book-mirror機能(書籍解析)は20章の本でOpus利用時に約6ドルとドキュメントに記載されています。
注意点:実装の信頼性に関する指摘
公開直後に独立したコードレビューが行われ、「Dream Cycle」「コンパイル済み事実の自動書き換え」「エンティティ検出」の3機能が、実行可能なコードではなくAIへの指示書(マークダウン)として実装されている点が指摘されました(参考)。スケジューラや書き換えロジックの実体コードが見当たらないというものです。
一方で、PostgreSQLストレージ・pgvector・ハイブリッド検索・チャンキングパイプラインといったインフラ部分は「合理的に実装されている」と評価されています。リポジトリは現在も活発にメンテナンスされており、v0.28.8まで継続的にリリースが続いています。実運用前にコードと動作を自分で確認することをお勧めします。
まとめ
GBrainは「ステートレスなAI」という現在の限界を乗り越えようとするアプローチの代表例です。Claude Code・ChatGPT・Codex CLIなど複数ツールが同じ知識ベースを参照することで、ツールを切り替えてもコンテキストが引き継がれる環境を構築できます。
MITライセンスで無料から試せるため、AIを業務に組み込んでいる開発者にとって評価する価値があるツールです。