別れた相手とターミナルの中で話せる。そんな発想から生まれたオープンソースのClaude Codeスキルが、中国を中心に急速に広まっています。

この記事では「ex.skill」の仕組み・インストール方法・プライバシーをめぐる論争まで解説します。

この記事でわかること:

  • ex.skillが解決しようとしている課題
  • チャット履歴や写真からどうAIが再現されるか
  • インストールから会話開始までの手順
  • プライバシーと感情依存をめぐる議論

別れた後に「言えなかった言葉」を届ける

https://github.com/therealXiaomanChu/ex-skill

別れた後に伝えられなかった言葉がある。ex.skillは、そうした感情の整理を助けることを目的に開発されたClaude Codeスキルです。

GitHubユーザー therealXiaomanChu が公開したオープンソースプロジェクトで、2026年5月時点でスター数は5,100を超えています。中国ではWeChatやQQのチャット履歴を元に元恋人のAIを生成する手順が広まり、South China Morning Postも「中国の若者の間でトレンドになっている新しい感情整理の手法」として報じています(参考)。

READMEには「すべての別れには、穏やかに留まれる場所が必要だ」という一文が添えられています。

仕組み:5層の性格構造で「らしさ」を再現

ex.skillは入力されたデータから2つの要素を生成します。

Relationship Memory(関係の記憶)は、デートの場所・口論のパターン・二人の間のジョーク・甜蜜な瞬間・関係のタイムラインで構成されます。Persona(性格)は5層構造で設計されており、硬いルール・アイデンティティ・話し方・感情パターン・関係行動の順に積み重なります。

対話の処理は「メッセージを受信 → Personaで返し方を判断 → Memoryで共有記憶を補完 → 相手らしく出力」という流れです。会話中に「こういう返し方はしない」と伝えると、Correctionレイヤーに即座に書き込まれて以降の会話に反映されます。

MBTIや星座、「話し好き」「秒返信派」「既読無視」「半夜に音声メッセージを送ってくる」などの性格タグも設定でき、細部まで再現の精度を調整できます。

対応するデータソース

来源 形式
WeChatチャット WeChatMsg / 留痕 / PyWxDump エクスポート
QQチャット txt / mht エクスポート
SNS投稿 スクリーンショット
写真 JPEG/PNG(EXIFデータで時間・場所を抽出)
口述・テキスト 主観的な記憶をそのまま貼り付け

コードネーム以外のフィールドはすべてスキップ可能で、口述だけでもスキルを生成できます。

効果のサンプル

READMEにある「初恋、3年間、大学時代、ENFP、双子座、話し好き」という設定例では、回忆モードで次のような会話が生成されます。

ユーザー ❯ 初めてのデート、覚えてる?

AI ❯ あのひどいパスタの店?笑
      おいしそうなふりしてたの全部バレてたよ
      あの店、閉まったの知ってる?

インストールと使い方

Claude Codeが必要です。Node.js 18以上の環境があれば無料でインストールできます。

# プロジェクトにインストール
mkdir -p .claude/skills
git clone https://github.com/therealXiaomanChu/ex-skill .claude/skills/create-ex

# または全プロジェクトで使えるようにグローバルにインストール
git clone https://github.com/therealXiaomanChu/ex-skill ~/.claude/skills/create-ex

Claude Code以外にOpenClawでも動作します。GPUやローカルモデル・Dockerは不要です。

インストール後、Claude Codeで /create-ex を実行するとウィザードが始まります。コードネームを決め、基本情報・性格の特徴を入力し、データソースを選んで完了です。

利用できるコマンド一覧

コマンド 説明
/{slug} 元恋人として会話
/{slug}-memory 共有した記憶を振り返るモード
/{slug}-persona 性格プロフィールのみ確認
/list-exes 作成済みスキルの一覧表示
/ex-rollback {slug} {version} 過去のバージョンに戻す
/let-go {slug} スキルを「手放す」

料金

1スキルの生成にかかるAPIトークンは5,000〜15,000トークン程度で、チャット履歴の量によって変わります。利用にはClaude Pro/Maxのサブスクリプション、またはAnthropic APIキーが必要です。会話中のトークン消費は通常のClaude Code利用と同じです。

プライバシーと感情依存の論争

中国での広がりとともに、2つの問題が議論されています。

ひとつはプライバシーです。再現される人物が同意していないデータが使われます。「本人の知らないうちにチャット履歴や写真がAIに学習されている」という批判があり、特に元交際相手のデータを無断で使う点について、感情的なハラスメントに当たるという見方もあります。

もうひとつは感情依存です。「ようやく言えなかった言葉を伝えられた」と解放感を報告するユーザーがいる一方、「AIとの会話がリアルな感情の処理を妨げる」という懸念もあります。Dexertoの報道によれば、「人生の中で経験する喜びや怒りはデジタル化できない。それが人間の本質だ」という声も上がっています(参考)。

GitHubのREADMEは冒頭で「個人の振り返りと感情的な癒しのためだけのプロジェクト。ハラスメント、ストーキング、プライバシー侵害には使用しない」と明記しています。ただし、使用を制限する技術的な仕組みは現時点では存在しません。

「手放す」ためのコマンドが示すもの

ex.skillにある /let-go コマンドは、文字通り「スキルを手放す」処理を行います。この設計は、ツールを永続的な代替物ではなく、一時的な感情整理のステップとして位置付けるという開発者の意図を反映しています。

失恋後の感情整理にAIを使うこと自体は新しい現象ではありませんが、元交際相手の性格と記憶をここまで具体的に再現しようとするツールはほとんど例がありません。プライバシーと倫理の課題を抱えながらも、5,000スター超という反響は、同じ悩みを持つ人の多さを示しています。