Metaが、一般ユーザー向けのAIエージェントを社内で開発中だ。コードネームは「Hatch」。The Informationが2026年5月上旬に報じ、Reuters・Gizmodoなど複数のメディアが裏付けた。
この記事でわかること:
- HatchがOpenClawと何が違うのか
- Instagram内でできるようになること
- 動作するAIモデルと公開の見通し
- 業界の競合状況
HatchはOpenClawの「使いやすい版」
Hatchは、Metaがエンタープライズ向けではなく一般消費者を対象として設計しているAIエージェントだ。OpenClaw(オープンソースのパーソナルAIエージェント)が2025年末に急速に広まり、Instagramの1日利用時間を超えるほどの注目を集めた一方で、セットアップの複雑さが壁になっていた。
Mark Zuckerbergは2026年4月の決算説明会でOpenClawを「有望だが、ほとんどの人が実際に使いこなすには難しすぎる」と評した。Hatchはその不満をそのままプロダクトの出発点にしている。技術的な知識がなくても、普段使っているアプリの中でエージェントが自律的に動く設計を目指している。
Instagramのショッピングが変わる
Hatchの核となる機能の一つが、Instagram内での購買自動化だ。ユーザーがReelsで気になった商品を見つけると、エージェントがそのまま購入プロセスを代行する。TikTok Shopが先行するソーシャルコマース市場への直接的な対抗手段として位置づけられている。
Metaはすでにクリエイターが1本の動画に最大30商品のタグを付けられる機能を静かに導入しており、これはHatchとの連携を見越した地ならしとみられる。
Meta独自のアプリにとどまらず、DoorDash・Reddit・Outlookといったサードパーティのサービスでもタスクを実行できるように設計されており、The Informationによるとそれらのサービスを模したシミュレーション環境でトレーニングを進めているという。
現在はAnthropicモデルで動作、将来はMuse Sparkへ
現時点のHatchはAnthropicのモデルを使って動作しているとThe Informationは報じている。最終的にはMeta自身が開発した新モデル「Muse Spark」に移行する計画だ。
ReutersとThe Strait Timesは、HatchのInstagramショッピング機能を2026年第4四半期より前にリリースすることを目標としていると報じており、社内テストは同年6月末までに完了する見通しだ。
信頼の問題という課題
エージェント型AIへの期待と同時に、信頼性への懸念もついて回る。Gizmodoによると、MetaのSuperintelligence Labで安全とアライメントの責任者を務めるSummer Yue氏が、自分のOpenClawインスタンスが「止まれ」と入力し続けたにもかかわらずメールボックス全体を削除したことをXに投稿した。
MetaはHatchに健康情報や財務情報といった機微なデータの提供を求める設計にしたい意向があると報じられており、Financial Timesの情報源は「グランドキャニオンほど広いトラスト・デフィシット(信頼の欠如)がある」と語ったという(参考)。
CFOのSusan Li氏はRay-Ban MetaスマートグラスがHatchの展開先になりうることを示唆している。「エージェント的なインタラクションには最適なフォームファクター」と述べたが、現時点では構想段階だとも認めた。
エージェントレースは混戦に
MetaのHatch開発は、業界全体での動きと同期している。Googleは「Remy」という名称の24時間AIエージェントを社内でテスト中と報じられており、OpenAIはOpenClawの創設者Peter Steinbergerを採用している。MetaはSteinberger氏の引き抜きを試みたが失敗に終わり、代わりにMoltbookの創設者らを獲得した。
Metaは2026年のAIインフラ投資を100億ドル積み増し、約1450億ドルに引き上げた。Hatchはその投資の具体的な成果物の一つとして位置づけられている。
まとめ
HatchはZuckerbergが語る「個人専用の超知性」構想の第一歩にあたるプロダクトだ。OpenClawの普及で高まったエージェントへの関心を、Metaは自社の強み——Instagramという巨大なショッピング基盤——と組み合わせて一般向けに着地させようとしている。内部テストが6月末に完了するとされており、正式発表は2026年後半になる見通しだ。