企業のAI導入は、モデルの性能より運用面で止まりがちです。

2026年6月1日、OpenAIのフロンティアモデルGPT-5.5・GPT-5.4とコーディングエージェントCodexが、Amazon Bedrockで一般提供(GA)になりました。既存のAWSセキュリティ、請求、ガバナンスの枠組みを変えずに、本番環境へ載せやすくなった点が今回の核心です。

この記事でわかること

  • GAで何が使えるようになったか
  • GPT-5.5とGPT-5.4の違いとリージョン制約
  • CodexをBedrock経由で動かす手順の要点
  • 料金・セキュリティ・未提供機能の整理

何が変わったか

2026年4月28日のLimited Previewから約1か月で、次の3つがGAに移行しました。

  • GPT-5.5(openai.gpt-5.5
  • GPT-5.4(openai.gpt-5.4
  • Codex on Amazon Bedrock

提供形態は2ルートに分かれます。アプリやエージェント構築向けの「OpenAI models on Amazon Bedrock」と、コード作成・レビュー・デバッグなど開発ワークフロー向けの「Codex on Amazon Bedrock」です。いずれも推論はBedrock上で完結し、OpenAIホストのResponses APIリクエストパスには入りません。

背景:実験から本番へ

企業がAIを本番に載せるとき、性能評価の次に来るのはセキュリティレビュー、コンプライアンス、調達、監査ログの整備です。OpenAI APIを単独で契約・運用するより、すでに使っているAWSのIAM、PrivateLink、KMS、CloudTrail、Bedrock Guardrailsに乗せた方が、既存のクラウド運用と整合しやすい、というのがAWSとOpenAIの訴求です。

2026年4月、OpenAIはMicrosoftとの契約を改定し、他クラウド経由での提供を可能にしました。Amazonは同年2月にOpenAIへ500億ドル規模の投資を発表しており、今回のBedrock GAはその提携の具体化と読めます。Bedrock上ではAnthropic、Meta、Mistralなどと並んでOpenAIモデルを選べる構成です。

モデルの位置づけと制約

GPT-5.5

OpenAI・AWS双方が「最も能力の高いフロンティアモデル」と位置づけています。大規模コードベースの読み書き、データ分析、複数ツールをまたぐエージェントタスク向けです。コンテキストウィンドウは272Kトークン。利用リージョンはUS East (Ohio) us-east-2 のみです。

GPT-5.4

GPT-5.5よりベストな価格対性能を狙った選択肢です。OpenAIのモデル情報では速度はmedium(GPT-5.5はfast)とされていますが、実際のレイテンシは推論のeffort、出力長、ツール呼び出しに左右されます。リージョンは us-east-2 と US West (Oregon) us-west-2 の2つです。

推論基盤

両モデルはBedrockの次世代推論エンジン上で動きます。顧客ごとの分離キュー、リクエスト状態の耐久保存(障害時も途中再開)、高負荷時の性能予測性が特徴として挙げられています。

料金と契約

トークン単価はOpenAIファーストパーティと同額で、AWS側の追加手数料はありません。利用量は既存のAWSクラウドコミットメントにカウント可能です。Codexはシートライセンスや開発者あたりの最低コミットがなく、トークン従量課金です。詳細はAmazon Bedrock Pricingページを参照してください。

セキュリティとガバナンス

Bedrock経由のOpenAIモデル・Codexは、次のAWSエンタープライズ統制を継承します。

  • IAMベースのアクセス管理
  • AWS PrivateLinkとVPC分離
  • KMSによる保存時・転送時の暗号化
  • CloudTrailによる監査ログ
  • Bedrock Guardrails

AWS MLブログは、プロンプトとレスポンスがモデルプロバイダーの学習に使われないと明記しています。Codexの推論は選択したBedrockリージョン内で完結します。OpenAIの6月1日投稿ではCommercialおよびGovCloudリージョンでの利用に言及がありますが、Codex開発者ドキュメントはBedrock MantleパスがGovCloud非対応と記載しているため、Codex利用時はドキュメントのリージョン表を個別に確認してください。

APIと呼び出し方

Bedrock上のGPTモデルはResponses APIのみをサポートします(2026年6月1日時点でコンソールサポートは近日公開)。エンドポイントは他モデルと異なる bedrock-mantle で、パスは openai/v1/responses です。OhioのURL例は次のとおりです。

https://bedrock-mantle.us-east-2.api.aws/openai/v1/responses

環境変数の例:

  • OPENAI_BASE_URL="https://bedrock-mantle.us-east-2.api.aws/openai/v1"
  • OPENAI_API_KEY="<BEDROCK_API_KEY>"
  • BEDROCK_OPENAI_MODEL_ID="openai.gpt-5.5"

PythonではOpenAI SDKの responses.createreasoningtext のverbosityを渡す形がGetting Startedブログで示されています。

Codexの設定

Codexはデスクトップアプリ、CLI、VS Code・JetBrains・Xcode連携から利用できます。OpenAIは週間500万人規模の利用があるとGA投稿で述べています。

認証はBedrock APIキー(AWS_BEARER_TOKEN_BEDROCK)が最優先で、未設定時はIAM・SSOなどのAWS SDKクレデンシャルチェーンにフォールバックします。model_provider = "amazon-bedrock" のとき、OPENAI_API_KEY は使いません。

~/.codex/config.toml の設定例:

model = "openai.gpt-5.5"
model_provider = "amazon-bedrock"

[model_providers.amazon-bedrock.aws]
region = "us-east-2"
wire_api = "responses"

デスクトップアプリやVS Code拡張はシェル環境変数を継承しない場合があるため、必要な変数は ~/.codex/.env に書き、設定変更後はアプリを再起動してください。Bedrock初期提供ではFast Modeは非対応で、オンデマンド推論のみです。一部のOpenAIホスト向けクラウド機能やホストツールも未対応です。

まだBedrockにないもの

GA対象外として、次がロードマップ上のComing Soonです。

  • Daybreak: サイバー防御向けのCodex Securityなど。GPT-5.5-Cyberなど関連モデルはOpenAIサイトで案内されていますが、現時点ではBedrock未提供です。
  • Amazon Bedrock Managed Agents, powered by OpenAI: OpenAIのエージェントハーネス上の本番向けエージェント。4月28日発表時点ではLimited Previewのままです。

導入を検討する際の整理

観点 内容
メリット 既存AWS運用のままフロンティアモデルとCodexを本番投入できる
モデル選び 最高性能はGPT-5.5、コスト重視はGPT-5.4
注意 GPT-5.5はOhioのみ、APIはResponses APIとMantleエンドポイントに限定
料金 OpenAI直契約と同額トークン課金、AWSコミットメントに計上可能

AmgenやAutodeskなどは、AWS MLブログでBedrock上のOpenAIモデル・Codexを評価・活用していると紹介されています。自社がすでにAWS中心のガバナンスを持つなら、今回のGAは「モデルを試す」段階から「本番運用の設計」段階へ進むタイミングとして意味があります。リージョン制約とAPI制限を先に確認し、Ohio限定のGPT-5.5が要件に合うか、GPT-5.4で十分かを切り分けてから着手するのが現実的です。