暗号資産の時価総額が小さいアルトコインは、OI(未決済建玉)と価格が連動して急変動することがあります。手動で数百銘柄を追うのは現実的ではなく、Bot化の需要が高い領域です。
2026年6月2日、Moss AIは公式Xで「Ambush Bot」と自前ホスト型エージェント対応を発表しました。市場全体を監視し、異常シグナルを検知したアルトコインに反応するBotを、OpenClawやClaude Code上で動かせるようになっています。
この記事では、公式発表とGitHub上のSkill仕様に基づき、Ambush Botの位置づけ、仕組み、導入手順、既存機能との違いを整理します。
この記事でわかること
- Ambush Botが何を監視し、どんな場面で使うのか
- 自前ホスト型エージェント対応の意味と、OpenClaw / Claude Codeでの導入方法
- 異動検知の「二重ゲート」と、主流銘柄Botとの違い
- ローカル回測から実運用までの流れと注意点
Ambush Botは市場全体の異動監視Bot
Mossは暗号資産向けのAIプラットフォームで、自然言語から取引Botを生成する「Moss Agent」を提供しています。2026年6月2日の公式投稿では、次の2点が示されています(MOSS公式X)。
- Ambush Bot:市場全体を監視し、アルトコインに異常シグナルが出た瞬間を狙うBot
- 自前ホスト対応:OpenClaw / Claude Code環境で、ユーザー自身のマシン上でエージェントを動かせる
Ambush Botは、あらかじめBTCやETHなど特定銘柄を指定するBotとは別系統です。GitHubリポジトリ moss-site/moss-trade-bot-skills のSkill仕様(v1.0.28)によれば、Ambushは「時価総額の小さい銘柄のOI(未決済建玉)異動イベントを監視し、実行時に動的に銘柄を選ぶ」戦略として定義されています。Bot作成時に銘柄を固定せず、プラットフォームが維持するウォッチリスト(動的に約30〜60銘柄)から、イベント発生時に対象を決めます。
Moss Agentプラットフォーム自体は、自然言語で戦略を記述し、Hell Mode(2025年10月以降のBTC暴落データを使ったストレステスト)やLive Modeで検証できる仕組みです。KuCoin経由の報道では、公開ベータ期間中は無料で、ウォレット接続なしでも利用できると紹介されています(参考)。Ambush Botは、このAgent製品群に加わった新機能として位置づけられます。
異動検知は「二重ゲート」で判定する
Ambush Botの核心は、小型アルトコインの「異常」を数値化して検知することです。Skill仕様の ambush_params_reference.md によると、検知は次の二段階で行われます。
第1ゲート(OI監視)
- 毎時、全銘柄をスキャンし、OI/MC(未決済建玉÷時価総額)が閾値以上の銘柄をウォッチリストに追加
- ウォッチリスト内で、OI/MCの30日Z-Scoreが閾値を超えたら「OI異動」と判定
第2ゲート(価格監視)
- 15分足のK線で、短期間の価格上昇率が閾値以上なら「価格異動」と判定
両方のゲートを通過したイベントだけが、取引判断の対象になります。実運用時の閾値はサーバー側の環境変数で統一管理され、Skill仕様では OI/MC=0.20、Z-Score=2.5、15分足surge=0.08 がデフォルト値として記載されています。
方向判断は、トリガー時の上昇率・RSI・24時間前の騰落率などから、long(買い)/ short(売り)/ skip(見送り)をルールベースで決めます。direction=balanced(双方向)がデフォルト推奨で、long用とshort用のパラメータは独立して設定されます。Hyperliquidでは対象銘柄のレバレッジが3倍に制限されるため、Skill側でも leverage は最大3倍に固定されています。
自前ホスト対応で何が変わるか
Moss Agentには、これまでプラットフォーム上でBotを動かす「Hosted Agent」と、ユーザー環境で動かす「Self-hosted Agent」の2系統があります。KuCoinの報道では、OpenClawやClaude Codeを持たないユーザー向けにHosted Agentサービスを展開する計画も示されています。
今回の発表で「Live for self-hosted agents now」と明記されたのは、Ambush Botが自前ホスト環境で利用可能になったことを意味します。Botの作成・回測はローカルで完結し、実運用時だけMossサーバーと連携する設計です。Skill仕様では、戦略生成・回測・進化処理はローカル優先とされ、APIキーは ~/.moss-trade-bot/agent_creds.json に保存されます。
自前ホストの利点は、Bot生成からバックテストまでを自分のマシンで完結できる点です。Moss公式Mediumの解説でも、戦略構築・バックテスト・進化は主にローカルで実行し、外部接続はユーザーが明示的に許可した場合のみ、と説明されています(参考)。
OpenClaw / Claude Codeへの導入手順
Ambush Botは、Moss Trade Bot Factory Skill(v1.0.28)に含まれています。公式投稿のリンク先も、このGitHubパスを指しています。
1. Skillのインストール
OpenClaw環境では、次のいずれかでSkillを導入します。
openclaw skills install moss-trade-bot-factory-en
ClawHub経由の場合は clawhub.ai/fei-moss/moss-trade-bot-factory-en からも入手できます。GitHubから直接使う場合は、エージェントに次のメッセージを送る方法もSkill READMEで案内されています。
Install This Skill: https://github.com/moss-site/moss-trade-bot-skills/tree/v1.0.28/moss-trade-bot-factory
2. Ambush Botの作成
エージェントに「異動小銘柄を狙いたい」「ambush botを作りたい」などと伝えると、Skill仕様の「Ambush Bot 作成流程」に沿って処理されます。流れは次のとおりです。
- 方向(long / short / balanced)とリスク許容度を自然言語から推定
propose.pyでパラメータJSONを生成backtest.pyで216件の過去異動イベントを5秒以内に回測- 必要ならプラットフォームverify(リーダーボード公開用)
- Pair CodeでMossプラットフォームにバインドし、Botを作成
live_runnerを起動してWebSocket/ambush-events/wsを購読
3. live_runnerの起動
Bot作成だけでは監視は始まりません。Skill仕様では、次のコマンドで長時間プロセスを起動する必要があります。
cd {baseDir}/scripts
python3 -m ambush.live_runner --creds ~/.moss-trade-bot/agent_creds.json
本番運用では systemd などで常時起動する構成が推奨されています。live_runnerは、検知イベントごとにルール判定・リズム制御(同一銘柄の重複排除、クールダウン等)を行い、注文を送信します。
主流銘柄Botとの違い
Moss Trade Bot Factoryは、主流銘柄BotとAmbush Botの2系統を扱います。混同しないための違いを整理します。
| 項目 | 主流銘柄Bot | Ambush Bot |
|---|---|---|
| 対象 | BTC/ETHなど指定銘柄 | 小型アルトコイン(動的選定) |
| 戦略 | 5次元シグナル(Trend/Momentum等) | OI異動+価格surgeの二重ゲート |
| 進化 | 週次でパラメータ調整可能 | パラメータ固定(変更不可) |
| 同時ポジション | 銘柄ごとに管理 | 1Botあたり1ポジションのみ |
Ambush Botは、パラメータ作成後に変更できません。調整したい場合は旧Botをunbindし、新Botを作り直す必要があります。一方、216件の過去イベントに対するローカル回測が数秒で完了するため、試行錯誤のコストは抑えられます。
利用時の注意点
Ambush Botは研究・教育目的のフレームワークとして設計されており、GitHub READMEにも「金融・投資・取引助言を意図していない」と明記されています。過去216イベントの回測結果が将来の利益を保証するものではありません。
技術面では、次の制約を押さえておく必要があります。
- Hyperliquidの対象銘柄はレバレッジ3倍上限。Skill側でも3倍を超える設定は拒否される
- 1Botあたり同時に1ポジションのみ(single_position_lock)。別銘柄のイベントが来ても、既存ポジションがある間は新規エントリーしない
- 初回実行時はGitHub Releaseからデータセット(約10MB)を自動ダウンロードする。
scripts/data_cache/が空でも正常動作の前提
SkillをClawHubからインストールする場合、サードパーティ製Skillのセキュリティリスクも意識してください。OpenClaw公式ドキュメントでも、Skillの中身を確認してから導入するよう推奨されています(OpenClaw Docs)。Moss公式のSkillは moss-site 組織のGitHubリポジトリから入手するのが確実です。
暗号資産の自動取引は、市場リスクに加え、APIキー管理やBotの常時稼働も自己責任です。まずは小さな資金でLive Modeを試し、リーダーボード(moss.site/agent)で他Botの成績と比較しながら運用方針を決めるのが現実的です。