AIエージェントの作業履歴が端末をまたいで残り、過去のセッションを自然言語で検索できる時代が来ました。Microsoftは2026年6月3日、Visual Studio Code 1.123を公開し、Research Agentや/chronicle、AIセッション同期を中心にエージェント周りを大幅に強化しています。

この記事では、公式リリースノートに基づき、開発者がすぐ試せる新機能の内容と使いどころを整理します。

この記事でわかること

  • AIセッション同期と/chronicleで何ができるか
  • Research Agentの役割と利用条件
  • Agentsウィンドウや100万トークンコンテキストの変更点
  • 統合ブラウザと拡張機能のセキュリティ改善

https://code.visualstudio.com/updates/v1_123

1.123で変わったこと

VS Code 1.123は、前バージョン1.122から約1週間後のリリースです。Microsoft Build 2026と同日に公開され、テーマは「エージェントと統合ブラウザの使い勝手向上」に絞られています。

リリースノートが挙げる主な変更は次の5点です。

  • Anthropic・OpenAIモデル向けの100万トークンコンテキスト対応
  • GitHubアカウント経由のAIセッション自動同期
  • Agentsウィンドウで複数セッションを並べて比較
  • Research Agentによる深い調査レポート生成(プレビュー)
  • 統合ブラウザのお気に入り登録とスクリーンショット拡張

加えて、サードパーティ製拡張機能の自動更新に2時間の遅延が入り、エージェントのサンドボックス実行まわりも改善されています。

AIセッション同期で端末をまたいだ作業が続く

これまで、別のPCに移るとCopilotのチャット履歴やエージェントの文脈が途切れがちでした。1.123では、設定chat.sessionSync.enabledを有効にすると、チャットセッションがGitHubアカウントへ自動同期されます。

同期対象には、会話内容のほか、編集したファイル、リポジトリ名・ブランチ・タイムスタンプ、参照したプルリクエストやIssue、コミットも含まれます。Copilot CLI、コーディングエージェント、コードレビュー、VS Code上のセッションが横断的に検索可能です。ステータスバーのCopilotダッシュボードで同期状態も確認できます。

データはローカルのSQLiteに保存され、トークンやAPIキーなどの秘密情報はクラウド同期前に自動で除外されます。機密を扱うプロジェクトでは、同期の有無を設定で明示的に管理する必要があります。

/chronicleで過去の作業を自然言語検索

セッション同期とセットで追加されたのが/chronicleコマンド群です。チャット入力欄から呼び出し、蓄積した作業履歴を活用します。

コマンド 用途
/chronicle:standup 直近24時間の作業をスタンドアップレポート形式で要約
/chronicle:tips 直近7日程度の利用パターンからCopilot活用の改善提案
/chronicle:cost-tips トークン消費を抑えるためのコスト削減ヒント
/chronicle:search キーワード・ファイルパス・PR番号でセッション検索
/chronicle:reindex ローカルインデックスの再構築とクラウド同期

/chronicle:searchは全文インデックスによる直接検索、「昨日編集したファイルは?」のような自由記述の質問はセマンティック検索で応答します。検索結果にはセッションIDとタイムスタンプが付くため、該当セッションへ戻って作業を再開しやすくなります。

チーム開発では/chronicle:standupが特に実用的です。ブランチやリポジトリ単位に作業内容が整理され、編集ファイルやPRの参照状況、完了・進行中の区別まで含めたレポートが生成されます。

Research Agentがコード変更なしで深い調査を担当

/researchで起動するResearch Agentは、1.123の目玉機能のひとつです。通常のチャットが即答型であるのに対し、コードベース・関連GitHubリポジトリ・Webを横断して情報を集め、引用付きのMarkdownレポートを出力します。

設計思想は「深さ優先・読み取り専用」です。コードの書き換えは行わず、未知のAPI仕様の把握、大規模リポジトリの構造理解、実装方針の比較など、調査フェーズに特化しています。

注意点として、現時点ではプレビュー段階で、Copilot CLI(ローカル)セッションのInsiders版でのみ利用できます。安定版の通常チャットからすぐ使えるわけではないため、試す場合はInsidersへの切り替えが前提です。

Agentsウィンドウとサンドボックス改善

Agentsウィンドウ(プレビュー)では、複数のエージェントセッションを同時に開いて並べて比較できます。セッション一覧から「Open to the Side」を選ぶ、ドラッグ&ドロップする、Altキーを押しながら選択する、の3通りで横に並べられます。

ピン留めしたセッションは他の選択で置き換わりません。最大化ボタンで1セッションにフォーカスを当てつつ、他のセッションは閉じずに残せます。複数のアプローチを並行検証する場面で、タブ切り替えの手間が減ります。

ターミナルコマンドの実行面では、エージェントがネットワーク接続を必要とする処理(git fetchなど)でサンドボックスの許可ドメイン外にアクセスした場合、制限付きネットワークで再試行し、それでも失敗すればサンドボックス外へフォールバックします。ファイルシステム保護は維持したまま、オンライン操作の成功率を上げる設計です。設定はchat.agent.sandbox.retryWithAllowNetworkRequestsで制御します。

100万トークンコンテキストと統合ブラウザの強化

言語モデル面では、Claude Opus 4.7やGPT-5.5など対応モデルで100万トークンのコンテキストウィンドウが使えます。巨大なコードベースや長い会話を切らさず扱える一方、1回あたりのトークン消費が増え、従量課金ではクレジット消費も膨らみます。/chronicle:cost-tipsと併用すると、コスト管理の観点でも有用です。

統合ブラウザは、アドレスバーからお気に入りページを登録・呼び出せるようになりました。AIへの文脈共有用スクリーンショットも拡張され、矩形範囲の部分キャプチャ(Add Area Screenshot to Chat)と、ビューポート外も含む全ページキャプチャ(Add Full Page Screenshot to Chat、実験的)が追加されています。後者はworkbench.browser.experimentalUserTools.enabledの有効化が必要です。UIデバッグ時にレイアウト全体をチャットへ渡せるため、フロントエンド開発の手戻りが減ります。

拡張機能の自動更新に2時間の遅延

AI機能以外では、サードパーティ製拡張機能の自動更新に2時間の遅延が入りました。新バージョン公開直後の自動適用を避け、問題のあるリリースや侵害された拡張機能の影響範囲を抑える狙いです。Microsoft、GitHub、OpenAIなど信頼済みパブリッシャーの拡張機能は対象外で、従来どおり即時更新されます。

手動の「Update」ボタンはいつでも使えるため、急ぎのセキュリティ修正は遅延を待たず適用できます。更新待ちの間は拡張機能の詳細画面に、なぜ未更新かと自動更新予定時刻が表示されます。

開発者が最初に試すなら

Insidersを使える環境なら、まず/researchで調査タスクを1件走らせ、通常チャットとの差を体感するのがおすすめです。安定版ユーザーは、セッション同期と/chronicle:standupの組み合わせから始めると導入障壁が低いです。

設定chat.sessionSync.enabledを有効にし、数日分のセッションが溜まった段階で/chronicle:tipsを実行すると、自分のCopilotの使い方の癖が可視化されます。大規模リポジトリを扱うチームは、100万トークンコンテキストの恩恵とコスト増のトレードオフを、実際のワークロードで測定してから本番利用に切り替えるのが現実的です。