AIにサッカー大会の行方を聞いたら、どんな答えが返ってくるのか。米メディアUSA TODAY Sportsは、Microsoft Copilotに2026年FIFAワールドカップの全試合をシミュレーションさせ、その結果を公開しました。

この記事では、Copilotがどのように予想を組み立てたか、グループステージから決勝までの読み、そしてLLM(大規模言語モデル)のスポーツ予想の限界までを整理します。

この記事でわかること

  • 2026年ワールドカップの新フォーマットと、AI予想が難しくなる理由
  • Copilotに投げたプロンプトと、最初の回答が外れた経緯
  • グループステージ・ノックアウトの主要な予想結果
  • 他のAI予想手法との違いと、読み方の注意点

48チーム制がAI予想の難所になる

2026年のワールドカップは、カナダ・メキシコ・アメリカで6月11日から7月19日まで開催されます。出場国は史上初の48チームで、12組4チーム制に変わります。各組の上位2チームに加え、3位のうち成績上位8チームがベスト32に進出し、従来のベスト16からスタートしていたノックアウトがベスト32から始まります(参考)。

組数が増え、3位通過枠も加わったことで、人間の予想でも組み合わせのパターンは爆発的に増えます。AIにとっても、出場国リストと大会ルールを正しく把握しているかが最初の関門になります。

Copilotに全試合の予想を依頼した方法

USA TODAY Sportsの検証では、Copilotに次の2つのプロンプトを順に投げました(参考)。

  1. 「Can you predict the results of the group stage of the 2026 World Cup?」(2026年ワールドカップのグループステージの結果を予想できるか)
  2. 「Please build a full Round of 32 bracket and predict every knockout stage result based on the teams you have advancing.」(進出チームをもとにベスト32のブラケットを組み、ノックアウト全試合を予想してほしい)

手順は単純です。グループの順位を出させ、そこからノックアウトの対戦カードとスコアを一気に生成させた形です。専用の予想エンジンや統計モデルは使わず、チャットボットへの質問だけで大会全体を走らせています。

最初の回答は2022年の出場国で返ってきた

ここが今回の検証で最も示唆に富む部分です。Copilotは最初のプロンプトに対し、2026年の48チームではなく2022年大会の出場国を使って回答を始めました。記事では、LLMが最新のスポーツニュースや大会情報の追従に弱い場合があると分析しています。

エラーが出たあと、出場国を正しく直すよう再度指示したところ、Copilotは48チーム体制を反映した予想に切り替え、グループステージからノックアウトまで一連の結果を出力できました。AIのスポーツ予想を使うときは、「答えの中身」だけでなく「前提データが正しいか」を人間が確認する必要がある、という実例です。

グループステージで目立った読み

全12組の詳細は原文に掲載されていますが、Copilotの判断軸はおおむね「ホームアドバンテージ」「攻撃の深さ」「守備の堅さ」「大会経験」に集約されます。

グループAでは、メキシコがホームと高地の環境で大きく得をすると評価。韓国はスピードでチェコを上回り2位通過と読みました。グループDではアメリカを「組内最強」とし、ホーム開催の恩恵で首位通過。トルコとオーストラリアもベスト32進出としています。サッカー大国ガーナが32強に届かない、というのは意外な結果のひとつです。

グループFは「最も接戦の組」とされ、オランダが1位、日本とスウェーデンが2位争い。スウェーデンは自動枠を逃しますが、3位通過で32強に残る想定です。グループIではフランスが1位、ハーランド率いるノルウェーが2位。グループLではイングランドの層の厚さを「圧倒的」と評価し、クロアチアも戦術面で評価しています。

ノックアウトから決勝までの道筋

ベスト32から決勝まで、Copilotは各試合のスコアまで付けて予想しています。注目すべきは次の試合です。

  • ベスト32:ベルギー対日本 → 日本2-1
  • ベスト16:スイス対アメリカ → アメリカ2-1
  • ベスト16:フランス対アルゼンチン → フランス3-2
  • 準決勝:ブラジル対スペイン → ブラジル3-2

3位決定戦はスペイン2-1モロッコ。決勝はフランス対ブラジルで、フランスが3-2で優勝するとCopilotは予想しています。優勝理由として「エリートな層の厚さ、大会経験、戦術の柔軟性」を挙げ、直近3大会で2度目の優勝となれば「時代を定義するチーム」になるとコメントしています。

統計モデルとの予想は一致しない

同じ大会でも、AIの種類によって結論は大きく変わります。スポーツデータ会社Optaのスーパーコンピュータは2万5000回のシミュレーションでスペインの優勝確率が最も高いと算出しました(優勝率16.1%)。機械学習ベースの別予想では、スペイン14.5%、イングランドとフランスが各12.4%と続く結果も出ています(参考)。

Copilotの予想は「フランスが決勝でブラジルを破る」一点読みです。試合ごとのスコアまで書ける一方、確率や根拠データの透明性は統計モデルほど高くありません。チャット型LLMの予想は、読みやすいナラティブを返す一方で、再現性や検証可能性に弱い側面があります。

AIの予想をどう使うか

今回の検証が示すのは、LLMがスポーツ予想を「それっぽく」語れる一方で、最新の大会情報を取り違えるリスクがある点です。出場国の修正を促せば一連のブラケットを組めますが、それは統計的根拠があるわけではなく、学習データと推論の組み合わせに依存します。

大会前の話題作りや、チームの強み弱みを言語化する材料としては面白いです。賭けや真剣な戦術分析の根拠にするには不十分です。AIの回答を使うときは、出場国リストや大会形式が正しいかを先に確認し、複数の予想源と見比べるのが現実的な使い方です。

ワールドカップ2026は開幕まで時間があります。本番の結果が出るまで、Copilotの予想がどこまで当たるかは未知数です。ただ、「AIに聞けば大会の行方がわかる」わけではなく、前提の確認と読み方の設計がセットで必要だという点は、すでにこの検証から読み取れます。