スタートアップの創業者が、クラウドの専門家を雇わなくてもAWS上でプロダクトを立ち上げられる時代が来ました。

この記事では、2026年6月にAWSが発表したスタートアップ向けAI機能2つについて、何が変わったのか、誰に向いているのか、どう使い始めるのかを整理します。

この記事でわかること

  • AWS Startup Advisorが提供する支援内容と料金体系
  • エージェント型移行ツールが短縮する作業と対応範囲
  • Kiro・Cursor・Claude Codeなど開発環境との連携方法

AWSがスタートアップ向けに2つのAI機能を公開

2026年6月4日、AWSはスタートアップ創業者向けに「AWS Startup Advisor」とエージェント型移行ツールの2つを公開しました(公式発表)。前者は構築中のプロダクトに合わせたクラウド設計の助言、後者は他社クラウドや外部AI基盤からAWSへの移行計画と実行支援です。

AWS VPのJason Bennett氏は、創業者が「どう作るか」に悩む時間を減らし、「何を作るか」に集中できるよう、創業者体験そのものにAIを組み込む方針を示しています。

なぜ今、創業者向けのAI支援が必要か

AIの普及で、コンピュータサイエンスの専門知識がなくてもプロトタイプを作れる環境は整いつつあります。一方で、クラウドの選定、セキュリティ設定、コスト管理、スケール時の移行は、依然として創業者の大きな負担です。

AWSは、35万社超のスタートアップの運用パターンと、数千人のSolutions Architectの知見をもとに、創業段階ごとに異なる推奨を出す仕組みが必要だと判断しました。MVP段階とエンタープライズ向け販売段階では、求められるアーキテクチャもセキュリティ水準も変わるため、一律のガイドでは足りないという課題認識が背景にあります。

AWS Startup Advisorの変更点

AWS Startup Advisorは、スタートアップの技術スタックと成長段階を学習し、次に取るべきアクションを提案するAIアシスタントです。35万社超のスタートアップ運用データと、数十億件規模のインタラクションパターンを学習源にしています。

主な機能は次のとおりです。

  • 初日からの環境整備: IAM、請求、セキュリティのベースラインを設定し、土台を固める
  • インフラの足場づくり: プロジェクト内容を読み取り、AWSが推奨する構成をエディタ上で提示する
  • コスト抑制: 不要な支出を防ぐための具体的な節約アクションを提案する
  • 段階に応じたセキュリティ: 成長段階に合ったセキュリティ基準を提示する
  • プロアクティブなアラート: IAM、予算、Amazon Bedrockの利用状況、CloudWatchを分析して通知する

AWS Activate(クレジットプログラム)に参加している場合は、クレジット残高の監視と活用方法の提案も行います。

料金は、推奨の生成やスキル呼び出し、ガイダンス取得は無料です。実際にAWSリソースをデプロイした場合のみ、通常のAWS料金が発生します。

エージェント型移行ツールの変更点

移行ツールは、他社インフラや外部AI基盤からAWSへ移す計画を数分で作成し、実行まで支援します。従来は数週間から数か月かかる移行作業を、数日単位に短縮することを目指しています。

対応範囲は次の2系統です。

  • GCPからのインフラ移行: KubernetesからEKS・ECS・Fargate、PostgreSQL・MySQLからRDS・Aurora、Google Cloud StorageからS3
  • AI・LLM推論の移行: Anthropic、Gemini、OpenAIからAmazon Bedrockへ

移行計画には、サービスマッピング、コスト見積もり、アーキテクチャ図、Terraformテンプレート、クレジット適用可否、ステップごとの手順書が含まれます。計画生成は無料で、実際にプロビジョニングしたリソースに対してのみ課金されます。移行コストの一部はAWSクレジットで相殺できる場合もあります。

実行パスは3つから選べます。AIエージェントがプロビジョニングやデータ移行、設定変更、テストを進めながら、重要な判断は人間が確認する方式、AWSエキスパートへの相談、認定AWSパートナーへの委託です。途中で方式を変更することも可能です。

使い方と開発環境との連携

両機能は2026年6月時点で利用可能です。Webはstartups.awsから、移行計画の作成はstartups.aws/migrate/wizardから始められます。

開発環境との連携も用意されています。AWS Startup AdvisorはKiro、VS Code、CursorのIDE拡張機能と、Claude Codeのプラグインとして提供されます。移行ツールもKiro、Claude Code、Cursorのプラグインから起動できます。どの入口から使っても、同じスキルとコンテキストが共有される設計です。

非エンジニアの創業者がAIで初めてプロダクトを作るケースでも、エディタやチャット上で次の一手を確認しながら進められる点が特徴です。

既存のAWSスタートアップ支援との違い

AWS Activateなどのクレジットプログラムや、Solutions Architectへの問い合わせは以前から存在します。今回の違いは、創業者のスタックと段階を継続的に学習し、IDE上でリアルタイムに推奨を出す点です。

移行支援についても、個別のコンサルティング契約に頼らず、請求データやInfrastructure as Codeをアップロードするだけで計画を自動生成できるのが新しい部分です。GCPや単一のAIプロバイダに依存しているスタートアップが、Amazon Bedrockのモデル選択肢や240以上のクラウドサービス群へ乗り換える際の入口として位置づけられています。

AWSによると、世界トップ100スタートアップの過半数がAWSのAIサービスを利用しており、米国トップ500スタートアップではAWSを主要クラウドとする企業が、第2・第3位のクラウドを合わせた数を大きく上回るとのことです。AWS Marketplace経由のスタートアップ売上は前年比2倍以上に伸びており、インフラ選定が収益化のスピードにも直結する流れが背景にあります。

創業者がクラウド選定と移行に費やす時間を減らし、プロダクト開発と顧客獲得に注力できる環境づくりが、今回の2機能の狙いです。まずはstartups.awsでAdvisorを試し、移行が必要ならwizardで計画を生成する、という流れが現実的な第一歩になります。