ChatGPTなどのLLM(大規模言語モデル)経由の流入は、全体の転換率では従来の検索を上回ることが多い。一方で、サイト内の滞在や操作はページの種類によって大きく変わる。2026年6月、マーケターのNeil PatelがSEO代理店Saltboxのデータを引用し、この点を指摘した。

この記事でわかること

  • LLM経由トラフィックと従来検索の違い
  • ページ型ごとに変わるエンゲージメントの傾向
  • マーケティング施策に活かす分析の切り口

LLM流入は「量」より「質」のチャネル

https://neilpatel.com/marketing-stats/ai-vs-traditional-search-performance/

NP Digitalの調査では、年商1,000万ドル以上のB2B企業50社とB2C企業43社を対象に、AIプラットフォーム経由と従来検索経由のトラフィック・売上比率を比較している。

B2Bでは、従来検索がトラフィックの19%・売上の11.6%を占めるのに対し、AI経由はトラフィック0.38%ながら売上9.7%に達する。B2Cでも、従来検索がトラフィック27.5%・売上11.4%に対し、AIはトラフィック0.49%・売上0.38%だ。流入の割合に比べて、売上への寄与が大きい傾向が読み取れる。

SEOツール大手Semrush傘下のSearch Engine Landが紹介した別調査でも、2025年1月から2026年2月までの13か月間、Google Analytics上のLLMリファラルトラフィックは全体のリファラルの2%未満にとどまった。一方、コンバージョン率は約18%で、有料ショッピングやPPC、SEOを上回った(参考)。

LLM経由の訪問者は、ChatGPTやPerplexity上で質問と比較を済ませたうえでサイトに来ることが多い。従来の検索では、検索結果を順に開いて情報を集める。到着時点の購買意欲に差が出るのは自然な流れだ。

ページ型でエンゲージメントは真逆になる

https://x.com/neilpatel/status/2063954194063917286

Neil Patelは2026年6月8日の投稿で、次のように述べた。「LLM traffic isn’t always stickier than traditional search traffic(LLM経由のトラフィックが、常に従来検索より滞在が長いわけではない)」。転換率は概ね高いが、サイト上での行動はページ型で大きく異なるという。

同投稿で引用されたSaltboxのデータでは、ツール紹介ページやデモリクエストのページで、LLM経由のエンゲージメントが特に高い。記事やサービス紹介ページでは、従来検索の方が強いケースもある。

この差は、LLM上で「どの段階の情報」を求めているかと直結する。ツール比較やデモ申込は、導入判断の直前に行われる行動だ。LLMが候補を絞ったあと、公式サイトで機能や料金を確認する流れと合う。記事やサービス概要は、まだ情報収集の途中のユーザーが従来検索から流入しやすい。

なぜ「LLMは強い」と一括りにすると見誤るか

マーケティング担当者が陥りやすいのは、AI経由を単一のチャネルとして集計することだ。全体の転換率だけを見れば、LLMは有望に見える。ページ別に分解すると、強い領域と弱い領域がはっきり分かれる。

Neil PatelのNP Digital調査でも、AI経由と従来検索では到着時の意図が異なるため、同じランディングページを使い回すのは非効率だと指摘している。ソリューション検討段階のクエリに応えるコンテンツをAI向けに整備し、認知拡大には従来のSEOを維持する、という二層構造が現実的だ。

LLMリファラルは成長も速い。Search Engine Landの調査では、2025年の前半と後半を比べるとLLMリファラルは平均80%増加した。全体の比率はまだ小さいが、伸び率の監視は早めに始める価値がある。

実務で取るべき3つの対策

流入元とページ型を掛け合わせて計測する

Google Analyticsなどで、リファラー(ChatGPT、Perplexity、Gemini、Claudeなど)とランディングページの種類を組み合わせてレポートを分ける。ツールページ、デモ申込ページ、ブログ記事、製品ページで、滞在時間・スクロール率・コンバージョンを別々に追う。Saltboxの示唆は、この分解なしでは見えない。

AI向けに整備するページを選ぶ

デモリクエストや無料ツール、料金比較表は、LLM経由の高意図ユーザーと相性がよい。FAQ形式で質問と回答を並べ、構造化データ(schema markup)を入れると、AI回答への引用されやすさも上がる。NP Digitalの調査でも、AI経由ユーザー向けにソリューション検討段階のコンテンツを優先するよう勧めている。

従来SEOの役割を維持する

トラフィックの大半は依然として従来検索が担う。B2Bで従来検索がトラフィックの19%を占める一方、AIは0.38%だ。認知獲得と上位ファネルは従来のSEOが主役のままだ。LLMは「少数だが購買に近い層」を取りにいく補完チャネルとして位置づけるのが妥当だ。

測定の盲点にも注意する

LLM経由の一部は、リファラー情報なしで「直接流入」として計上されることがある。AI経由の実態は、表の数字より大きい可能性がある。コンバージョン率やページ別エンゲージメントを軸に評価し、セッション数だけでチャネルの価値を判断しないことが重要だ。

LLM経由トラフィックは、転換の質の高さとページ型による行動差の両方を持つ。Saltboxのデータが示すのは、ツールやデモ申込に投資したサイトほど、AIマーケティングの成果が出やすいということだ。全体平均に惑わされず、ページ型ごとに設計と計測を分けることが、2026年の集客戦略の分かれ目になる。