数百万行のCOBOL資産を抱えたまま、エージェント型AIの導入を先送りにしている企業は少なくありません。PegasystemsとAWSは2026年6月8日、年次カンファレンスPegaWorldで、Pega Blueprint AIをAWS Transformに組み込む連携を発表しました。レガシー解析からクラウド向けアプリ設計までを一つの画面で進められる点が、今回の変更の核心です。

この記事でわかること

  • Pega Blueprint AIとAWS Transformの統合が解決する課題
  • COBOL資産を近代化する具体的な処理の流れ
  • リフト&シフトとの違いと、連携がもたらすメリット
  • 提供状況と料金、導入事例の位置づけ

https://www.pega.com/about/news/press-releases/pega-launches-ai-driven-modernization-capability-aws-reimagine-legacy

何が変わったか

Pega Blueprint AIは、生成AIと業界のベストプラクティスを組み合わせてワークフローやデータモデルを設計するPegasystemsの設計エージェントです。AWS Transformは、メインフレーム資産のクラウド移行と近代化を担うAWSのエージェント型AIサービスで、COBOLコードの解析やドキュメント生成、ビジネスルールの抽出を自動化します。

今回の統合により、AWS TransformがCOBOLから抽出した仕様情報を、Pega Blueprint AIがそのまま受け取り、将来像のクラウド向けアプリ設計を自動生成します。画面を切り替えずに一連の作業を完結できるのが新機能です。AWS側の担当者は統合作業は完了しており、Pega Blueprint AIはすでにAWS Transform上で利用可能だと述べています(参考)。

なぜ今、COBOL近代化が急務なのか

企業がエージェント型AIを本格導入しようとすると、古い基幹システムが最初の壁になります。COBOL(Common Business-Oriented Language)は1960年代から使われてきた業務向け言語で、金融や保険、公共など多くの業界で基幹処理を支えてきました。一方、仕様書のないまま積み上がった数百万行のコードと、開発当時の担当者不在という問題が、刷新を長期化させています。

Pegasystemsの公式発表では、エンタープライズが大規模にAIエージェントを採用するにはメインフレーム近代化が最優先課題になる一方、断片化したツールと手作業の調査がプロジェクトを遅らせると指摘しています。コストと時間のかかるリフト&シフトだけでは、クラウド上にレガシーの非効率を持ち込むだけにとどまるリスクもあります。

AWS Transformが担う「逆方向の解析」

AWS Transformは、COBOLをはじめJCL(Job Control Language)、CICS、BMS、Db2、VSAMといったメインフレーム関連資産を対象に、コードベースの分析から分解、リファクタリングまでを自動化するサービスです(AWS公式ドキュメント)。

具体的には、元のソースコードを解析し、アプリの発見とビジネスルール抽出を行います。ソフトウェアの振る舞いや利用データのモデルを組み立て、開発当時の意図を読み解くためのドキュメントを生成します。AWS Transform担当のOmri Kessel氏は、単にクラウドへ移すだけでは不十分で、アプリケーションそのものを近代化することが重要だとCRNの取材で語っています(参考)。

Pega Blueprint AIが担う「将来像の設計」

AWS Transformの出力をPega Blueprint AIが取り込むと、クラウド向けの将来状態アプリ設計を自律的に生成します。業界のベストプラクティスや規制要件も反映し、古いメインフレームの業務プロセスを、俊敏で信頼性の高い現代のワークフローへ組み替えます。

Pegasystemsのプレスリリースによると、デモ動画やスクリーンショット、BPMNファイル、SQLファイルなども取り込み可能で、業務文脈やルール、データモデル、連携先の情報を設計に残せます。解析で得た仕様をもとに設計を進める「逆方向の解析」から、近代化の実装に向けた「順方向の設計」へつなぐ流れが、今回の連携の骨格です。

導入の流れと期待できる効果

利用イメージは次のとおりです。まずAWS TransformでCOBOL資産を投入し、ビジネスルールとデータ構造を文書化します。続けてPega Blueprint AIがその結果からクラウド向けのエージェント型アプリ設計を生成します。すべてAWS Transformの画面内で完結するため、ツール間のデータ持ち運びや再入力が減ります。

PegasystemsとAWSは、パートナーやSI(システムインテグレーター)にとっても、近代化プロジェクトの成功率と収益性が上がると説明しています。Kessel氏は、顧客の期待するビジネス成果を届ける確率が高まり、パートナーのプロジェクトコストも大きく下がると述べています(参考)。

料金と提供状況

Pega Blueprint AIのAWS Transform内での利用は、クライアント向けに追加費用なしで提供されています(Pegasystems公式プレスリリース)。AWS Transform本体の利用料金は別途発生するため、全体コストは移行規模やAWSの課金体系に依存します。統合自体は2026年6月8日の発表時点で利用開始済みです。

導入事例として語られたUnum

保険大手Unum GroupのShelia Anderson氏は、COBOLベースのクレーム処理基盤の一部を近代化する必要があり、従来は数年単位の作業だったと語っています。AWS TransformとPega Blueprint AIを活用し、主要事業領域での近代化を加速しているとのことです。長年の技術的複雑さを整理し、チームがより速く動ける基盤を作ることが目的だと説明されています(Pegasystems公式プレスリリース)。

リフト&シフトとの違い

メインフレーム近代化には、インフラだけ移すリフト&シフト、言語を変換するリファクタリング、業務そのものを作り直すリイマジンなど複数の選択肢があります。AWS TransformはCOBOLからJavaへの変換も担いますが、今回のPega連携は、その先の業務アプリ設計まで含めた「リイマジン」寄りの体験を強化する位置づけです。

Pegasystems CEOのAlan Trefler氏はPegaWorldの基調講演で、AIが大量のコードを生成する時代だからこそ、AI・コード・エージェントを整理し予測可能な成果を出す仕組みが必要だと訴えました。レガシー資産の解析と設計を一気通貫で進める今回の統合は、その考え方をメインフレーム刷新の現場に持ち込む試みと読めます。

COBOL資産の刷新は、技術課題であると同時に、埋もれた業務知識を取り戻す作業でもあります。解析と設計を分断せずにつなぐことで、エージェント型AIを前提とした次の基幹システムへ踏み出す足場が、一段具体化しました。