AIに指示を出すだけでなく、実際の作業まで任せられる時代が来ています。
Microsoftは2026年春から初夏にかけて、Microsoft 365 CopilotとCopilot Studioに大規模なアップデートを展開しています。チャット型アシスタントから、業務アプリ上で動くエージェント型AIへと進化が進んでいます。本記事では、公式発表とリリースノートに基づき、ワークフローに直結する変更点を整理します。
この記事でわかること
- Copilot Studioのコンピュータ操作エージェントとワークフロー再設計の内容
- Word・Excel・PowerPointで一般提供となったエージェント機能の効果
- Copilot CoworkやUI刷新など、日常業務に影響するアップデート
- 管理者向けのコネクタ管理・エージェント運用の新機能
Copilotは「会話」から「実行」へシフトしている
Microsoft 365 Copilotの進化の軸は、回答を返すだけのAIから、業務プロセスを代行するエージェントへ移行することです。基盤となるのがWork IQです。Work IQはメール、ファイル、チャット、会議などの仕事のシグナルを読み取り、Copilotの回答や行動を組織の文脈に合わせて調整するインテリジェンス層です。
2026年5月26日の公式ブログでは、Copilot Studioにおいてコンピュータ操作エージェント(computer-using agents)が一般提供(GA)になったと発表されました。APIが用意されていないレガシーシステムや、画面構成が変わりやすいWebアプリでも、UIを通じて操作できるエージェントを構築できます。人材移動サービスのGraebel社は、API非対応の自社基盤に対し、この機能でサービスオーダー処理を自動化し、30以上の移動サービスカテゴリへ展開する設計としています。
同時に、ワークフロー体験も再設計されています。早期リリース環境では、APIアクション、承認、ビジネスロジック、UI操作を1つのキャンバス上で組み合わせるビジュアルデザイナーが提供されます。エージェントノードをワークフローに組み込み、単純なif-thenでは表現しにくい判断をAIに委ねる構成も可能です。
Word・Excel・PowerPointのエージェント機能が一般提供に
2026年4月22日、Word・Excel・PowerPointにおけるCopilotのエージェント機能が一般提供となりました。Copilotはドキュメント、ワークシート、プレゼン資料の中で複数ステップの操作を直接実行します。書式変更、データ分析、スライド更新など、アプリ固有の操作を人間の代わりに進めます。
Microsoftの社内データでは、導入後1か月でエンゲージメントと満足度が上昇しています。Wordは週あたりの利用回数が52%増、Excelは67%増、PowerPointは11%増です。新規ユーザーの継続率も、Excelで50%、PowerPointで36%上昇しました。サムズアップ率はExcelで65%増と、実務での有用性が数値として示されています。
2026年6月2日のリリースノートでは、Word Web版でCopilotがデフォルトで文書を直接編集できるようになったことも記載されています。変更は追跡可能で取り消しも可能で、不要なら設定でオフにできます。段落の書き直しや見出しの再構成を、チャット指示からそのまま文書に反映できる流れです。
Copilot Coworkがモバイルと外部ツールへ拡張
Copilot Coworkは、チャットを超えてタスクの委任と実行を担う機能です。2026年5月のアップデートで、iOSとAndroidに対応し、通勤中や会議の合間でも作業をバックグラウンドで進められます。
Skills(スキル)は、繰り返し作業の手順や文体、構成を再利用可能な指示セットとして保存する仕組みです。ドキュメント作成、会議調整、リサーチなどの組み込みスキルに加え、チーム独自のカスタムスキルも作成できます。
Plugins(プラグイン)では、Microsoft Fabric IQとPower BI、Dynamics 365の営業・カスタマーサービス・ERP連携に加え、LSEG、Miro、monday.com、S&P Global Energyなど外部サービスとの接続が拡張されています。CoworkはFrontierプログラム経由で提供され、機能は継続的に追加中です。
UI刷新とCopilot Chatのモデル選択肢
2026年5月28日、Microsoft 365 Copilotのアプリデザインが刷新されました。プロンプト入力欄を中心に、タスクに応じたツールや操作を段階的に表示する設計です。Microsoftのテストでは、アプリの読み込み時間が50%以上短縮され、複雑なチャットの初回応答も95パーセンタイルで約10%高速化しています。
新UI導入後の利用データでは、Wordで27%、Excelで33%、PowerPointで43%、Outlookで30%と、Copilotの利用が増加しました。各アプリに統一されたエントリーポイントが設けられ、サイドペインやキャンバス上からCopilotを呼び出せます。
Copilot Chatでは、2026年5月19日のリリースでOpenAIのGPT-5.5 InstantとGPT-5.5 Thinkingが利用可能になりました。Instantは素早い応答向け、Thinkingは多段階の推論や計画立案向けです。画像解析やSTEM(科学・技術・工学・数学)系の質問でも精度が改善されています。
データ連携と管理者向けのガバナンス強化
外部データとの接続も大きく進んでいます。2026年6月2日、Federated Copilot Connectorsが一般提供となり、Model Context Protocol(MCP)を通じてサードパーティのデータソースへリアルタイムにアクセスできます。Microsoft 365 Chat、Researcher、ExcelのAgent Modeで利用可能です。管理者はMicrosoft Admin CenterのCopilot > Connectorsから、コネクタの有効化・無効化を一括管理します。
エージェント運用面では、ポリシーベースのルールでファーストパーティエージェントの一括インストールや、オーナー不在エージェントの自動再割り当てが可能になりました。Copilot Studioでは、エージェント評価にExact、Similarity、Compare Meaningなど複数の採点方式を使えるGrader Frameworkも追加されています。
さらに、model-driven apps(モデル駆動型アプリ)内にCopilotが埋め込まれ、レコードの要約やタスク完了をアプリを離れずに実行できるようになりました。Outlookではメール本文をCopilot Chatのプロンプトに直接追加するImplicit Groundingも提供されています。
既存のCopilot利用者が押さえるべきポイント
今回のアップデート群は、単体機能の追加ではなく、業務フロー全体をAIに委ねる方向への転換点です。日常利用者は、Word・Excel・PowerPointでの直接編集やCopilot Chatのモデル選択を試す価値があります。定型業務が多いチームは、Copilot Studioのワークフローとコンピュータ操作エージェントの組み合わせを検討する余地があります。
管理者は、Federated Connectorsの段階的ロールアウトとエージェントライフサイクル管理ルールの設定が、セキュリティと運用効率の両面で重要です。Frontierプログラムに参加できる組織は、CoworkのSkillsとPluginsで部門横断の自動化を先に試せます。
Microsoftは2026年春の段階で、Copilotを「助言するAI」から「動くAI」へと位置づけを変えています。チャットの質向上に加え、アプリ内操作、ワークフロー自動化、外部ツール連携が同時に進んでいる点が、今回のアップデートの本質です。



