SAPや大規模データベースをAzureで動かす企業に、次世代の選択肢が加わりました。

Microsoftは2026年7月、Azure向けMbv4仮想マシン(Mbsv4・Mbdsv4)の公開プレビューを発表しました。メモリとストレージの両面を強化したMシリーズ最新世代で、SAPをはじめとするミッションクリティカルなワークロード向けに設計されています(参考)。

この記事では、Mbv4で何が変わったのか、前世代Mbv3との違い、プレビュー利用の条件を整理します。

この記事でわかること

  • Mbv4公開プレビューの概要と対象ワークロード
  • 第6世代Intel XeonとAzure Boostによる性能向上の中身
  • Mbv3からの主なスペック差分
  • プレビュー利用時のリージョンと料金

Mbv4は何が変わったのか

Mbv4は、Mbsv4(ストレージ最適化)とMbdsv4(メモリ最適化)の2系統で構成されます。いずれも第6世代Intel Xeon Scalableプロセッサをベースに、最大4TBのメモリまでスケールします。

リモートディスク性能は最大780,000 IOPS、帯域16GBpsです。ローカルNVMe一時ディスクは最大3,200,000 IOPS、16GBpsのスループットに対応します。メモリ・ディスク・ネットワークの各層で障害への耐性を高めた設計とされています(参考)。

公開プレビューは無料で、East US 2とEast USの2リージョンで利用できます。

SAPワークロードが抱える性能の壁

SAP HANAやS/4HANAは、大量のデータをメモリ上で処理するインメモリデータベースです。ディスクI/Oの遅延がボトルネックになると、バッチ処理やレポート生成の待ち時間が増え、業務停止リスクにもつながります。

AzureのMファミリーは、SAP HANAのような大容量メモリを要するワークロード向けに長年使われてきました。2024年9月に一般提供されたMbv3(Mbsv3・Mbdsv3)は、第4世代Intel Xeon Scalable(Sapphire Rapids)を採用し、リモートディスクで最大650,000 IOPS・10GBpsを実現しました(参考)。

一方、データ量の増加やリアルタイム分析の普及で、ストレージ帯域とIOPSの要求はさらに高まっています。Mbv4はこのギャップを埋めるための次世代として位置づけられています。

Azure Boostが担う役割

Mbv4はAzure Boostの最新技術を搭載しています。Azure Boostは、仮想化・ネットワーク・ストレージ処理をホストCPUから専用ハードウェアへオフロードする仕組みです(参考)。

ストレージ処理をFPGAなどの専用回路に任せることで、ゲストVMのCPUをアプリケーション処理に回せます。ネットワーク面ではMicrosoft Azure Network Adapter(MANA)がハードウェアアクセラレーションを提供し、ストレージとネットワークをホストから分離する構成は、セキュリティの論理的分離も強化します。

Mbv3世代のMv3 Medium Memoryでは、Azure Boostによりネットワークスループットが約25%向上し、リモートストレージは最大1.5倍の改善が報告されていました(参考)。Mbv4はこの基盤の上に、第6世代Xeonと新しいストレージ設計を載せた形です。

Mbv3との主なスペック比較

項目 Mbv3(GA済み) Mbv4(公開プレビュー)
CPU 第4世代Intel Xeon Scalable 第6世代Intel Xeon Scalable
最大メモリ 4TB 4TB
リモートディスクIOPS 最大650,000 最大780,000
リモートディスク帯域 最大10GBps 最大16GBps
ローカルNVMe一時ディスク なし(Mbsv3) 最大320万IOPS・16GBps
提供リージョン 6リージョン(GA時) East US 2、East US(プレビュー)

リモートIOPSは約20%、帯域は60%の増加です。ローカルNVMe一時ディスクの高性能化は、Mbv4の目立つ差分です。Mbv3のMbsv3シリーズはローカルストレージを持たない設計でしたが(参考)、Mbv4は一時ディスクの高速化を前面に出しています。

公開プレビューの使い方と注意点

https://azure.microsoft.com/en-us/products/virtual-machines/

Mbv4は2026年7月時点で公開プレビュー段階です。East US 2またはEast USにワークロードを配置できる環境であれば、プレビュー期間中は無料で試せます(参考)。

SAP環境への適用を検討する場合、AzureはSAP認定インフラのポートフォリオを拡充しており、Mbv4もその一環として位置づけられています。ただし、プレビュー版は本番移行の前に性能検証や互換性確認を行う前提で使うべきです。Mbv3は2024年9月に一般提供済みで、South Central USやWest Europeなど複数リージョンで本番利用が可能です(参考)。

プレビュー中のVMは仕様変更やGA後の料金体系の発表があり得ます。本番SAPシステムを直接載せ替えるのではなく、ステージング環境でのベンチマークや移行計画のたたき台として使うのが現実的です。

企業ITへの影響

クラウド上のSAP運用では、VMサイズ選定がコストと性能の両方を左右します。Mbv4の登場により、ストレージ帯域がボトルネックだった既存構成を、より小さいVM数に集約できる可能性があります。Azure Boostの公式ドキュメントでも、ワークロードの集約によるコスト削減の余地が示されています(参考)。

一方、プレビューは東米2リージョンに限定されているため、日本や欧州でSAPを運用する企業は、まず性能データの公開とリージョン拡大を待つ段階です。Mbv3が本番で使える選択肢として残る点も押さえておく必要があります。

Mbv4は、SAPや大規模RDBMS向けAzureインフラの次の一手です。第6世代Xeon、780,000 IOPS、16GBpsのリモート帯域、そしてローカルNVMeの高速化が、データ集約型ワークロードの性能要件に応える設計になっています。プレビューが無料で試せる今のうちに、自社ワークロードとの適合性を測っておく価値があります。