AIエージェントは増えたが、セッションをまたいで学習し続けるものはほとんどない。
Nous Researchが公開したHermes Agentは、その問題を正面から解決するOSSプロジェクトだ。公開から7週間でGitHubスターが9万5,600を超え、2026年で最も速い成長速度を記録している。
この記事でわかること:
- Hermes Agentの仕組みと他のAIエージェントとの違い
- ターミナルUI・メッセージング連携・スキル機能など主な機能
- インストール方法と基本コマンド
- 最新リリース v0.10.0(2026年4月16日)の追加内容
https://github.com/NousResearch/hermes-agent
使い続けるほど精度が上がる設計
一般的なAIチャットは会話ごとにリセットされる。コンテキストを渡せば前回の内容を参照できるが、「経験から手順を改善する」仕組みは持っていない。
Hermes Agentはこの限界をクローズドな学習ループで解決する。タスクを完了すると自動的にスキルを生成し、次回の同種タスクでそのスキルを参照して実行する。会話履歴はFTS5でインデックス化されており、過去セッションから関連情報を検索できる。ユーザーの作業傾向や好みは「ユーザーモデル」として蓄積され、セッションをまたいで引き継がれる。
主な機能
ターミナルUI
hermesコマンドで起動するフルTUIを持つ。マルチライン編集、スラッシュコマンドのオートコンプリート、会話履歴ブラウザ、ストリーミングツール出力、Ctrl+Cによる割り込みと再指示が使える。ブラウザやGUIは不要で、ターミナルだけで完結する。
メッセージングゲートウェイ
hermes gateway startでゲートウェイを起動すると、Telegram・Discord・Slack・WhatsApp・Signal・Email・iMessage・WeChatからエージェントと会話できる。ターミナルとメッセージングアプリでスラッシュコマンドを共有しており、どちらからでも同じエージェントを操作できる。音声メモの文字起こしにも対応している。
スキルシステム
スキルは手順をMarkdownファイルとして記述した「プロシージャルメモリ」だ。エージェントが複雑なタスクを完了すると自動でスキルを作成し、利用しながら内容を更新する。agentskills.ioのオープンスタンダードに準拠しており、コミュニティが公開したスキルも利用できる。
スケジュール自動化
cronスケジューラを内蔵する。日次レポート、夜間バックアップ、週次監査を自然言語で設定し、任意のプラットフォームへ配信できる。コードを書く必要はなく、/scheduleコマンドで対話的に登録する。
サブエージェントとMCP対応
複数のサブエージェントを並列に起動してワークストリームを分割できる。PythonスクリプトからRPC経由でツールを呼び出す構成も取れる。MCPサーバーを接続すれば任意のツールを追加でき、デフォルトで40以上のツールを備えている。ターミナルバックエンドはLocal・Docker・SSH・Daytona・Singularity・Modalの6種類に対応する。
インストールと基本コマンド
Linux・macOS・WSL2・Android(Termux)に対応する。インストールは1コマンドで完了する。
curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/NousResearch/hermes-agent/main/scripts/install.sh | bash
インストール後にシェルをリロードして起動する。
source ~/.bashrc # または source ~/.zshrc
hermes # 起動
主要コマンドは次のとおりだ。
hermes model # LLMプロバイダーとモデルを選択
hermes tools # 使用するツールを設定
hermes gateway # メッセージングゲートウェイを起動
hermes setup # 全設定をまとめて行うウィザード
hermes update # 最新版へ更新
hermes doctor # 問題を診断
対応モデルはNous Portal・OpenRouter(200以上)・OpenAI・Anthropic・NVIDIA NIM・Hugging Faceなど幅広い。hermes modelコマンドでいつでも切り替えられる。コードの変更は不要だ。
最新リリース v0.10.0(2026年4月16日)
最新版はNous Portalの有料プラン向けにNous Tool Gatewayを追加した。追加のAPIキーを取得しなくても、既存のサブスクリプションでウェブ検索(Firecrawl)・画像生成(FAL/FLUX 2 Pro)・テキスト読み上げ(OpenAI TTS)・ブラウザ自動化(Browser Use)が利用できる。hermes modelでNous Portalを選択し、使用するツールを有効にするだけで動作する。
このリリースにはバグ修正・プラットフォーム改善・信頼性向上を含む180以上のコミットが含まれている。
料金
Hermes Agent自体はMITライセンスの無料OSSだ。月額5ドルのVPSでも動作する。DaytonaとModalのサーバーレスバックエンドを使えば、アイドル時はほぼ無課金の構成にできる。
接続するLLMプロバイダーの利用料は別途発生する。Nous Portalの有料プランに加入すると、Tool Gatewayを通じてAPIキー不要でツールを利用できる。
OpenClawからの移行
既存のOpenClawユーザーはhermes claw migrateコマンドで移行できる。設定・メモリ・スキル・APIキー・メッセージング設定をまとめてインポートする。--dry-runオプションで移行内容を事前に確認することも可能だ。
常時稼働エージェントの現実的な使い方
Hermes AgentはVPSやクラウドVMに常駐させ、スマートフォンのTelegramやDiscordから指示を送る使い方に向いている。ターミナルを開かなくても、移動中にタスクを投げて結果を受け取れる。定期レポートや夜間バックアップを自然言語でセットすれば、手動作業の大半をエージェントに委ねられる。
スキルが蓄積されると、同じ種類の作業にかかる指示量が減っていく。一度覚えた手順を次回から省略できるため、使い続けるほど操作が簡潔になっていく。