AIの学習・推論を担うデータセンターの電力消費が、いま急速に拡大している。その解決策として原子力が再び注目を集めるなか、小型モジュール炉(SMR)メーカーのX-Energyが2026年4月24日にNasdaqに上場し、10億ドル超の資金調達を完了した。
この記事でわかること:
- X-Energyが開発するXe-100小型原子炉の技術的な仕組み
- AmazonをはじめとするIT企業との契約内容
- SMR市場の成長と実用化のタイムライン
AIデータセンターの電力消費が2030年に3倍になる
国際エネルギー機関(IEA)は2026年4月、AIデータセンターの電力消費が2030年までに現在の3倍に達するとの見通しを発表した。データセンターの増設ペースに電力インフラが追いつかない状況が生まれており、24時間安定して供給できるカーボンフリーな電源の確保が業界の共通課題になっている。
再生可能エネルギーは天候に依存するため、ベースロード電源として使いにくい。そこで注目されているのが小型モジュール炉(SMR:Small Modular Reactor)だ。IEAの調査によると、データセンター事業者とSMRプロジェクトの条件付き電力供給契約は2024年末の25GWから2026年4月時点で45GWへと急増しており(参考)、市場の期待が急速に膨らんでいる。
Xe-100はヘリウムで冷やす小型原子炉
X-EnergyはAmazonの出資を受けた米国の核エネルギー企業で、「Xe-100」と呼ばれる高温ガス冷却型の小型原子炉を開発している。
Xe-100の最大の特徴は、冷却材に水ではなくヘリウムを使う点にある。ヘリウムはより高温での運転を可能にし、電力と高温熱の両方を同時に取り出せる。燃料にはTRISO-Xと呼ばれる粒子燃料を使用する。これはビリヤードボールほどの大きさの球体(ペブル)に、BB弾サイズのウラン粒子をセラミック層でコーティングして封入したものだ。ヘリウムがこのペブルの間を流れて熱を回収し、その熱でタービンを回す仕組みになっている。
1基あたりの出力は電力80MW(電気)または高温熱200MW(熱)。4基を組み合わせた「4パック構成」では320MWに達し、さらに拡張すれば最大960MWまでスケールアップできる。モジュール方式のため、データセンターの電力需要の拡大に合わせて段階的に増設できる点も評価されている。
Amazon・Dow・Centricaと大型契約を締結済み
X-Energyの受注パイプラインはすでに11GWを超えており、主要な顧客はAmazon、Dow、英国のCentricaだ。
Amazonとは2039年までに最大5GWの原子力電力を供給する契約を結んでいる。AmazonはAIインフラ向けの脱炭素電源確保を目的として2024年に約5億ドルをX-Energyに出資しており、AIデータセンターの運用に必要な24時間安定した電力の確保を狙っている。DowとはテキサスDow化学プラントへの熱・電力供給契約を締結しており、産業用の高温熱需要にも対応できるXe-100の特性を活かした提携だ。製造面では韓国水力原子力(KHNP)と斗山エナービリティ(Doosan Enerbility)とのパートナーシップも構築しており、商用炉の量産体制の整備を進めている。
IPOは15倍超の過剰応募で10億ドル超を調達
X-Energyは2026年4月24日、Nasdaqに上場した(ティッカーシンボル:XE)。当初の想定レンジ(1株16〜19ドル)を21%超える1株23ドルで4430万株を売り出し、10億2000万ドルを調達した。IPOへの需要は15倍超の過剰応募となり、株価は初日に30.11ドルで寄り付き、約31%高で取引を終えた。時価総額は119億ドル(約1.7兆円)に到達している。
SMR関連のIPOとしては記録的な規模で、AIインフラ向けのクリーンエネルギー確保への投資家の期待が数字に表れた。
実用化は2030年代前半が目標
Xe-100の初号機の納入目標は2030年代前半だ。現在は規制認証の取得と燃料供給チェーンの構築が中心で、X-Energyは米国原子力規制委員会(NRC)への設計認証申請を進めている。認証取得後、建設段階へ移行する計画だ。
SMR全体の商業化は2030年代に本格化するとIEAは見通しており、X-Energyはその最前線に立つプレイヤーとして位置づけられている。今回の10億ドル超の調達資金は、Xe-100の開発継続と製造インフラの整備に充てられる予定だ。AI電力問題の解決を主軸に据えた核エネルギー企業が、資本市場から大きな支持を受けたIPOとなった。
