MicrosoftのAIエージェント開発基盤が正式版を迎えました。2026年4月、Microsoft Agent Framework v1.0のGA、Foundry Toolkit for VS Code(旧AI Toolkit)のGA、そしてHosted Agentsのプレビュー開始と、ローカル開発から本番デプロイまでをカバーする複数ツールが同時にリリースされています。
この記事でわかること:
- Microsoft Agent Framework v1.0でSemantic KernelとAutoGenが1つのSDKに統合された内容
- Foundry Toolkit for VS Codeで何ができるようになったか
- Hosted Agentsの仕組みと料金体系
- 本番運用を支えるObservabilityとToolboxの機能
Microsoft Agent Framework v1.0とは
Microsoft Agent Frameworkは、2025年10月に発表されたオープンソースのAIエージェント開発SDKです。v1.0のGAは2026年4月3日に達成されました。
このフレームワークの核心は、これまで別々に存在していたSemantic KernelとAutoGenを1つのSDKに統合した点です。Semantic Kernelはエンタープライズ向けの堅牢な基盤を持ち、AutoGenは複数エージェントのオーケストレーションに強みがあります。これまで開発者はどちらを使うか選択を迫られていましたが、v1.0ではその判断が不要になりました。
既存ユーザー向けに、Semantic KernelとAutoGenそれぞれのマイグレーションガイドも公開されています。
v1.0で提供される主な機能
v1.0では以下の領域の機能が安定版として提供されます。
接続先の幅広さも特徴です。Azure OpenAI、Anthropic、Google Gemini、Amazon Bedrock、Ollamaなど主要なモデルプロバイダーに対応しており、MCP(Model Context Protocol)とA2A(Agent-to-Agent)という2つのオープン標準をデフォルトでサポートしています。
マルチエージェントのオーケストレーションパターンは、逐次実行(sequential)、並列実行(concurrent)、ハンドオフ(hand-off)、グループチャットなど複数のパターンが組み込まれています。長時間実行セッション向けのContext Compaction(コンテキスト圧縮)機能も追加され、トークン上限を意識しながら会話履歴を自動管理できます。
.NETとPythonの両方に対応しており、GitHub Copilot SDKとの統合も公開プレビューとして提供されています。また、Agent Harness機能によってローカルまたはホスト上でのシェル実行と承認フローを組み合わせた自律的なエージェント動作も実現できます。
Foundry Toolkit for VS Code GA
4月16日、VS Code拡張機能としてFoundry Toolkit(旧称AI Toolkit)がGAを迎えました。名称変更はリブランドであり、既存機能の廃止や破壊的変更はないとMicrosoftは明言しています。
モデルPlaygroundは100種類以上のモデルにVS Code内からアクセスでき、設定不要でチャットが始められます。Azure AI Foundry、GitHub、OpenAI、Anthropic、Ollamaなど複数のソースから選択可能で、レスポンスをサイドバイサイドで比較し、本番用コードをエクスポートできます。
Agent Builderはコードを書かずにエージェントを構築できるUIです。指示(Instructions)を定義し、Foundryのツールカタログからツールを選ぶか、ローカルのMCPサーバーに接続するだけでエージェントが動作します。GitHub Copilotを使ったエージェント生成も可能で、プロンプト1つからMicrosoft Agent Frameworkを使ったエージェントを生成できます。
Agent Inspectorはデバッグ機能で、エージェントの実行フローをリアルタイムで可視化し、ツール呼び出しやエージェント間の連携にブレークポイントを設定できます。ツール呼び出しの連鎖をブラックボックス扱いせず追跡できる点は、実際の開発で起きる「どこで失敗したのかわからない」問題への直接的な回答です。
デプロイはFoundry Agent Serviceへのワンクリック操作で完結します。ローカルで動作確認したエージェントをそのままクラウドに送り出せるため、ローカルと本番の環境差異によるトラブルを減らせます。
Hosted Agentsで本番環境へ
本番デプロイ先となるHosted Agents in Foundry Agent Serviceはプレビューとして公開されており、2026年4月22日から課金が開始されました。
各エージェントセッションは専用の分離されたサンドボックス上で実行され、セッション間でのデータ共有は発生しません。VNETサポートにより、プライベートネットワーク内のデータソースやAPIへの接続も可能です。
起動時間は100ミリ秒未満で、アイドル状態ではコストが発生しない従量課金モデルです。Azure Developer CLI(AZD)を使えば1コマンドでデプロイでき、オートスケーリングやCI/CDゲートが自動で設定されます。
料金は実行時間に応じた課金で、コンピュートが$0.0994/vCPU時間、メモリが$0.0118/GiB時間です。モデルの推論コストと長期メモリは別途課金されます。
長期メモリとToolbox
エージェントに記憶を持たせる「memory in Foundry Agent Service」もプレビューとして利用できます。外部データベースを用意せず、Foundry側で管理された長期メモリをエージェントに接続できます。Microsoft Agent FrameworkとLangGraphの両方からネイティブに利用でき、課金は2026年6月1日開始でそれ以前は無料です。
Toolbox in Foundry(プレビュー)はエージェントが使うツールを一元管理する仕組みです。ウェブ検索、ファイル検索、コードインタープリタ、Azure AI Searchなどを単一エンドポイントから提供し、OAuth認証やEntraのAgent Identityも組み込み済みです。Microsoft Agent Framework、LangGraphなど複数のフレームワークから同じToolboxを利用できるため、チーム間での認証情報の重複管理という問題を解消できます。
本番運用を支えるObservability
Observability in Foundry Control PlaneはフルGAを達成しました。OpenTelemetryベースのトレーシングが提供されており、モデル呼び出し、ツール呼び出し、エージェント間のハンドオフまで全実行パスを記録します。低品質スコアが出た評価結果から、そのスコアを生じさせた具体的なトレースへ直接ジャンプできる連携機能も備わっています。
AI Red Teaming AgentもGAとなりました。敵対的な攻撃シミュレーション(コンテンツ安全性、禁止アクション、プロンプトインジェクションなど)を自動化し、デプロイ前のリスク評価をCI/CDパイプラインに組み込めます。コードを書かずにFoundryポータルから実行するNo-code UIも用意されています。
まとめ
今回のリリースで、Microsoftのエンタープライズ向けAIエージェント開発スタックの主要コンポーネントが出揃いました。ローカルSDK開発(Agent Framework)、IDE統合(Foundry Toolkit)、本番ホスティング(Hosted Agents)、長期メモリ(Foundry Memory)、ツール統合(Toolbox)、監視・評価(Observability)という各レイヤーが接続されており、開発者は環境を行き来せず一つの流れの中で作業できる構成になっています。
Microsoft Agent Framework v1.0のGitHubリポジトリ、およびFoundry Toolkit for VS CodeのVS Code Marketplaceページから今すぐ試せます。