AIエージェントを実際にリリースするとき、本当に大変なのはエージェント自体の設計ではなく、それを動かすインフラです。
2026年4月8日、AnthropicはClaude Managed Agentsをパブリックベータとして公開しました。エージェントの実行環境・状態管理・セキュリティ・エラーリカバリーといったインフラ的な処理をすべてAnthropicが担うホスト型サービスです。
この記事でわかること:
- Managed Agentsがどういう課題を解決するか
- セッション/ハーネス/サンドボックスを分離した設計の意味
- 料金体系と利用開始の手順
- Notion・Rakutenなどの実導入事例
本番稼働まで3〜6ヶ月かかっていた課題
AIエージェントを開発するとき、タスクを実行させるロジックの設計は比較的早く進みます。問題はその周辺です。サンドボックス化されたコード実行環境の準備、セッション状態の永続化、認証情報の安全な管理、長時間実行中のエラーからの自動回復——これらを自前で構築すると3〜6ヶ月かかると言われていました。
Managed Agentsはこの「2つ目の仕事」を丸ごと引き受けます。開発者はエージェントが何をするか(ツール・ガードレール・タスク定義)だけに集中できます。
脳と手を切り離した設計
Anthropicがこのサービスで解いた技術的な核心は、「ブレイン(Claudeとハーネス)」と「ハンズ(サンドボックス)」と「セッション(イベントログ)」を3つの独立したインターフェースに分離することでした。
https://www.anthropic.com/engineering/managed-agents
それ以前の設計では、ハーネス・サンドボックス・セッションが1つのコンテナに同居していました。コンテナが落ちるとセッションが失われ、デバッグのためにエンジニアがコンテナ内にシェルで入らなければならず、そのコンテナにはユーザーデータも含まれるという問題がありました。
分離後の構造はシンプルです。ハーネスはサンドボックスを というインターフェース越しに呼び出し、コンテナが落ちてもツール呼び出しのエラーとして受け取るだけです。ハーネス自体も、セッションログが外部に保存されているため、クラッシュしても で再起動してログから再開できます。
この設計変更の結果、初回レスポンスまでの待ち時間(TTFT)はp50で約60%、p95で90%超も短縮されたとAnthropicは報告しています。
セキュリティの構造的な解決
従来の設計では、ClaudeのコードがAPI認証情報と同じコンテナで実行されていました。プロンプトインジェクション攻撃が成功すれば、Claudeが自分の環境から認証情報を読み出せてしまいます。
Managed Agentsはこれを構造的に解決しています。認証情報はコード実行環境の外部に保管され、Claudeが生成したコードが動くサンドボックスからは一切アクセスできません。GitリポジトリへのアクセストークンはサンドボックスのInitialization時にgit remoteに組み込まれ、MCPツールへのOAuthトークンはセキュアボルトに格納されて専用プロキシ経由でのみ利用されます。
主な機能と現在の提供範囲
パブリックベータで利用できる機能は以下の通りです。
- 長時間セッション: 接続が切れても状態を保持し、最後の地点から再開
- コード実行サンドボックス: スコープ制限されたパーミッションで安全に実行
- ツールオーケストレーション: MCP対応、自動エラーリカバリー付き
- セッショントレース: Claude Console内で全エージェント行動を確認可能
- コンテキスト管理: セッションログがClaudeのコンテキストウィンドウの外部に永続化
リサーチプレビューとして、エージェントが別のエージェントを起動するマルチエージェント連携と、Claude自身が成果物を評価するセルフエバリュエーション機能も提供されています。
料金
セッションの実行時間に対して1時間あたり0.08ドルが課金されます。課金対象は「実際に動いている時間」のみで、ユーザー入力待ちやツール確認待ちなどのアイドル時間は無料です。これに加えて、使用したClaudeモデルの通常トークン料金がかかります。
24時間365日稼働するエージェントであれば、ランタイムコストだけで月約58ドルです。多くのユースケースではバースト実行なので、実コストはさらに低くなります。
APIリクエストには ベータヘッダーが必要ですが、Claude SDKを使えば自動で付与されます。ウェイトリストはなく、すべてのAnthropicアカウントから即時利用可能です。
実導入の状況
複数の企業がパブリックベータ以前から利用しています。
Notionはコーディング・スライド作成・スプレッドシート操作をClaudeに委任し、数十件の並列タスクをワークスペース内から実行できるようにしました。RakutenはプロダクトやHRなど部門ごとに特化したエージェントを1週間以内に本番稼働させています。AsanaはAssigned TasksをピックアップするAI Teammatesを構築し、「機能開発が劇的に速くなった」とCTOがコメントしています。SentryはバグレポートからPull Requestまでを全自動で処理するエージェントを本番稼働させています。
まとめ
Managed Agentsは「エージェントを作ること」と「エージェントを動かすこと」の間にあった壁を取り除くサービスです。インフラ設計に費やしていた数ヶ月が不要になり、エージェントのロジック自体に集中できます。
利用開始のドキュメントはAnthropicの開発者向けプラットフォームで公開されています。Anthropic APIアカウントがあれば、今すぐ試せます。