AIエージェントに「記憶」を持たせると、何が変わるのか。

MercuryはNode.js製のOSSエージェントで、会話のたびに事実を自動抽出し、SQLiteに蓄積していく「Second Brain」を内蔵しています。パーミッション管理・トークン予算・常時起動まで揃っており、個人のAIアシスタントとして使える完成度です。

この記事でわかること:

  • Mercuryの特徴と他エージェントとの違い
  • Second Brain(10種類の記憶タイプ)の仕組み
  • インストールから初期設定までの手順
  • マルチプロバイダー構成と対応チャンネル

Mercuryとはなにか

Mercuryは「Soul-driven AI agent」を自称するOSSのAIエージェントです。MITライセンスで公開されており、npx一行でセットアップが始まります。

多くのAIエージェントはファイル読み書きやコマンド実行ができますが、それを黙って実行します。Mercuryは違います。実行前に必ず確認を求め(Permission-hardenedモード)、会話内容から重要な事実を自動抽出して記憶に残します。「ユーザーのことを学習し続ける」という設計思想が根底にあります。

Second Brain — 10種類の記憶タイプ

Mercuryのもっとも特徴的な機能がSecond Brainです。すべてのデータはローカルの ~/.mercury/memory/ にSQLite + FTS5形式で保存され、クラウドには一切送信されません。

記憶のタイプは10種類あります。identity(自己認識)、preference(好み)、goal(目標)、project(進行中の作業)、habit(習慣)、decision(意思決定の記録)、constraint(制約)、relationship(関係者)、episode(出来事)、reflection(振り返り)です。

各記憶には confidence・importance・durability の3スコアが付きます。会話終了後にMercuryが自動で0〜3件の事実を抽出し、次の会話の前に関連度の高い上位5件(900文字以内)をコンテキストに注入します。60分ごとにプロフィールサマリーと振り返りを自動生成する仕組みも備えています。

矛盾する記憶が生じた場合は、confidence(高い方)または recency(新しい方)で自動解決します。古くなった記憶は21日〜120日で自動削除されるため、ゴミが溜まり続ける問題もありません。

パーミッション制御の仕組み

sudorm -rf / などの危険なシェルコマンドはブロックリストで実行不可になっています。ファイル操作はフォルダ単位でスコープを絞ることができ、承認待ちフローも用意されています。

セッションごとに「Ask Me(都度確認)」か「Allow All(全許可)」を切り替えられ、気になる操作は /permissions コマンドでいつでも変更できます。

インストールと初期設定

Node.js 18以上が必要です。インストールは以下の一行です。

npx @cosmicstack/mercury-agent

グローバルにインストールする場合:

npm i -g @cosmicstack/mercury-agent
mercury

初回起動でセットアップウィザードが起動します。名前・APIキー・Telegramボットトークン(任意)を入力するだけで、30秒ほどで完了します。後から設定を変更したいときは mercury doctor を実行します。

常時起動させるには mercury up を使います。macOSではLaunchAgent、LinuxではSystemdユーザーユニット、WindowsではTask Schedulerにサービスとして登録され、再起動後も自動起動します。クラッシュ時は指数バックオフで自動再起動します。

主なCLIコマンドは以下の通りです。

コマンド 内容
mercury up サービス登録 + デーモン起動(推奨)
mercury stop バックグラウンドプロセスを停止
mercury logs デーモンのログを表示
mercury upgrade 最新版に更新
mercury doctor 設定を変更

チャット中は /memory でSecond Brainの確認・検索・一時停止、/budget でトークン消費の確認ができます。

マルチプロバイダー構成と対応チャンネル

デフォルトのLLMはDeepSeek(deepseek-chat)です。OpenAI、Anthropic(Claude Sonnet 4)、Grok(xAI)、OllamaのローカルモデルもAPIキーを追加するだけで切り替えられます。複数のプロバイダーを設定しておくとフォールバックが機能し、あるプロバイダーが落ちても自動的に次のプロバイダーに切り替わります。

対応チャンネルはCLIとTelegramの2種類です。Telegramはデーモンモード時のメイン入力として機能します。ペアリングコード方式でユーザー認証を行い、管理者・メンバーのロール管理も可能です。グループメッセージは常に無視され、プライベートチャットのみ受け付けます。

まとめ

Mercuryはnpx一行で試せる一方、Second Brain・パーミッション管理・デーモン常時起動・マルチプロバイダーフォールバックと、個人の自律型AIアシスタントとして必要な要素をほぼ揃えています。すべてのデータがローカルに留まる点も、長期的に使い続けるうえでの安心材料になります。ローカルLLM(Ollama)と組み合わせれば、完全オフラインの運用も可能です。