小型ロケット市場のリーダーであるRocket Labが4月23日、2つのニュースを同時に打ち出した。新型の高精度スタートラッカー「ST-HP」の発表と、48時間以内に2つのミッションを成功させたという実績だ。

この記事でわかること:

  • 新型スタートラッカーST-HPの技術仕様と何が変わったか
  • JAXA向け「Kakushin Rising」ミッションの詳細
  • HASSTEロケットによる極超音速テスト「Bubbles」とは何か

1arcsecond以下の精度と高放射線耐性を両立

https://www.globenewswire.com/news-release/2026/04/23/3280387/0/en/rocket-lab-unveils-new-high-performance-star-tracker-optimized-for-accuracy-in-increased-radiation-environments.html

スタートラッカー(Star Tracker)とは、星の位置を基準に宇宙機の姿勢を決定するセンサーだ。GPS が使えない深宇宙や高軌道でも正確な方向を把握できるため、衛星や探査機に欠かせない部品の一つになっている。

Rocket Labが今回発表した「ST-HP(High-Performance Star Tracker)」の主な強化点は2つある。一つはポインティング精度を1arcsecond(角秒)以下に抑えたこと。1arcsecondは1度の3600分の1に相当し、長期ミッションで精密な姿勢維持が求められる観測衛星や科学衛星に対応できる水準だ。

もう一つは放射線耐性の強化だ。ST-HPは基板レベルで50kRad超の総イオン化線量(TID)に対応する。高軌道や深宇宙では太陽風や宇宙線による放射線量が増すため、電子機器の劣化が問題になりやすい。50kRad超の耐性は、低軌道にとどまらず月・火星探査など長期ミッションへの応用も視野に入れた仕様だ。

185機以上の実績をベースに開発

Rocket Labはこれまで185機以上のスタートラッカーを宇宙へ送り出してきた実績を持つ。ST-HPはその飛行実績から得たノウハウと、新たな放射線硬化技術を組み合わせた設計になっている。

製造は米国・カナダ・ドイツ・ニュージーランドにまたがるRocket Lab自社施設が担う。特にカナダ・トロントの工場には熱試験チャンバー、振動試験台、X線装置、光学検査・較正設備、クリーンルームが揃っており、設計から品質確認まで一貫して社内で完結する体制を取っている。

コストと納期を抑えながら性能を確保できる点が売りで、Rocket Lab USAのBrad Clevenger社長は「数十年の経験を活かし、コストや納期、製造リスクを増やすことなく高い精度と性能を顧客に届ける」とコメントしている。

同日、JAXA向け「Kakushin Rising」打ち上げに成功

https://www.globenewswire.com/news-release/2026/04/23/3279536/0/en/Rocket-Lab-Completes-Second-Dedicated-Launch-for-Japan-Aerospace-Exploration-Agency-JAXA.html

スタートラッカー発表と同じ4月23日、Rocket LabはElectronロケットによるJAXA専用ミッション「Kakushin Rising」を成功させた。ニュージーランド・マヒアの打ち上げ施設(Launch Complex 1)から日本時間23日12時09分に離陸し、高度540km・軌道傾斜角97.5度の太陽同期軌道に8機の衛星を投入した。

Electronは全長18mの小型ロケットで、100〜300kgの小型衛星を専用打ち上げできる点が強みだ。大型ロケットへの相乗りと異なり、顧客が指定した軌道・日時に打ち上げられるため、JAXAのような研究機関や大学向けのミッションに活用されている。

搭載したのはJAXAの革新的衛星技術実証プログラム(Innovative Satellite Technology Demonstration Program)の一環として開発された8機だ。学生が製作した超小型衛星、海洋観測衛星、超小型マルチスペクトルカメラの実証機、そして折り紙技術を応用した展開アンテナが含まれる。折り紙アンテナは収納時の約25倍まで展開でき、コンパクトな打ち上げと広い展開面積の両立を目指した技術だ。

このミッションは、2025年12月に実施したJAXA専用ミッションに続く2回目の専用打ち上げでもある。Rocket Labにとっては2026年の8回目の打ち上げ、通算87回目のElectron打ち上げにあたる。

48時間前に極超音速試験「Bubbles」も完了

Kakushin Risingの打ち上げ前日には、米国バージニア州ウォロップス島の施設からHASTEロケットによる「Bubbles」ミッションも成功している。HASTEは「Hypersonic Accelerator Suborbital Test Electron」の略で、Electronをベースにした弾道飛行専用ロケットだ。

軌道に乗らず大気圏内を超音速・極超音速で飛行し、米国防総省(DoD)が開発中の極超音速兵器・防衛技術の試験に用いるための機体だ。従来は実際の試験機材を使った実験が中心だったが、HASTEを使えばより低コストで繰り返し試験環境を再現できる。

2つのミッションを別大陸の2拠点から48時間以内に完了したことは、Rocket Labが単一の小型打ち上げサービス会社にとどまらず、複数の顧客・用途・地点に同時対応できる運用体制を持つことを示している。

小型衛星市場での垂直統合を着実に拡大

ST-HPの発表に見られるように、Rocket Labは打ち上げサービスだけでなく衛星部品・宇宙システム全体の供給者としての地位固めを進めている。リアクションホイール、分離システム、無線機、飛行ソフトウェア、太陽光発電モジュール、光学ペイロードなど、衛星に必要な主要コンポーネントを社内で設計・製造する体制を整えている。

打ち上げコストの低下と衛星の小型化が進む中、部品調達から打ち上げまでを一括して提供できるワンストップの宇宙企業としての競争力を強化している。