2026年4月28日、GMは2022年式以降のCadillac・Chevrolet・Buick・GMC計約400万台にGoogle GeminiをOTA(無線通信)で順次配信すると発表した。現行のGoogle Assistantから自動的に切り替わるアップデートで、新しいハードウェアの購入は不要だ。業界でこれほどの規模でGeminiを車両展開するのはGMが初めてとなる。
この記事でわかること:
- Google AssistantからGeminiへの具体的な変更点
- Geminiで何ができるようになるか(主要機能)
- 利用開始に必要な条件と配信スケジュール
- GMが年内に計画している次世代AI統合の内容
Google AssistantからGeminiへ——何が変わるか
従来のGoogle Assistantは特定のコマンドを覚えて使う必要があった。「音楽を再生して」「目的地を設定して」といった定型フレーズが前提で、会話の文脈は1つのやり取りごとにリセットされる。
Geminiはその制約をなくす。文脈を保持したまま追加・修正・質問を重ねられる。「最寄りの郵便局に連れて行って。途中でコーヒーも寄りたい」と話した後、「やっぱりバーベキューが食べたい。1マイル以内で探して」と続けても、前の指示が残ったまま条件だけが更新される。コマンドを組み立て直す手間がなく、会話をそのまま引き継げる。
GMのTim Twerdahl副社長(製品管理担当)は「Geminiは、OnStarが30年かけて築いてきたコネクテッド車両基盤があってこそ、あらゆる価格帯のドライバーへ大規模に届けられる」と話している。
搭載される主な機能
メッセージと翻訳
受信メッセージをGeminiが要約して読み上げ、返信内容を音声で下書きできる。外国語への翻訳もその場で可能で、異なる言語でメッセージを送る場面でもハンズフリーで完結する。「Annaにデザートを持っていくと伝えて。ケーキの絵文字も付けて」のように絵文字を指定して追加することもできる。
エンターテインメント
Amazon Music・Apple Music・Spotify・YouTube・HBO Maxなど主要なストリーミングサービスに対応する。ルートや気分に合わせたプレイリストを自動生成でき、残り時間に合わせたPodcastエピソードの提案も行う。一部のCadillacモデルではDolby Atmos対応楽曲の再生も可能だ。
移動中のブレインストーミング・学習
ナビゲーション以外の用途として、旅行先のアイデア出しや職場での会話の事前準備なども想定されている。「上司との昇給交渉をどう進めるか一緒に考えたい」「家族で行ける暖かくて冒険できる場所を提案して」といった自由な問いかけに答える。ドライブ中の空き時間を活用したい用途に向けた機能追加といえる。
商用ドライバー向けの支援
燃料残量を考慮した最安ガソリンスタンドの案内や、大型トレーラーが停められる駐車場の検索など、業務利用を想定した機能が盛り込まれている。造園業者や配送ドライバーのように複数の停車地を管理する用途での活用を見込んでいる。
利用開始の条件と配信スケジュール
アップデートは数ヶ月かけて段階的に配信される。準備ができた段階で車内ディスプレイに通知が表示される仕組みで、手動でダウンロード操作する必要はない。Geminiを使うには以下の4点を満たす必要がある。
- OnStar接続が有効であること
- Google Playストアにサインイン済みであること
- アシスタント言語をUS English(英語)に設定していること
- Geminiへのオプトインを完了していること
対象車種は2022年式以降でGoogle built-in(Android Automotive OS)を搭載したモデルに限られる。現時点の対象は米国のみで、言語も英語に限られる。他の市場や言語への対応時期は未定とされている。
年内に計画される次のステップ
GMはGemini展開と並行して、OnStarのデータを活用した車両固有のカスタムAIアシスタントを年内に投入する計画を明らかにしている。
今回のGeminiはクラウドの汎用AIとして動作するが、このカスタムアシスタントは自社のパーツ情報・システム構成・車両データを学習した「その車専用の知識を持つAI」として設計される。車に異常が起きたとき部品単位で状況を把握したAIに聞ける——というビジョンをGMは昨秋の「GM Forward」イベントで示していた。
Geminiは汎用会話の土台を作る1段目、OnStar連携AIは車両固有の専門知識を乗せる2段目という位置づけだ。
まとめ
GMのGemini展開は、既存の400万台をOTAで更新するという規模感が業界でも最大級だ。コマンド型のGoogle Assistantから文脈を保つ会話型AIへの移行が、追加費用なしで届く。年内に控えるOnStar連携の専用AIと組み合わせることで、GMは車内AIを2段階で引き上げていく。量産車で進む「車がAIの窓口になる」転換点として注目したい動きだ。
