既存のSEOツールは、あなたのサイトをクロールして評価する。しかし、あなたの製品が何を解決しているかは、HTMLページからだけでは読み取れない。
serpIQは2026年4月28日に公開された、開発者向けのオープンソースSEO監査CLIだ。ほかのSEOツールと一線を画すのは、監査を始める前にコードベースを読む点と、サードパーティの推計値ではなく自分のGoogle Search Console(GSC)の実データを使う点にある。
この記事でわかること:
- serpIQがほかのSEOツールと何が違うのか
- 監査レポートに含まれる7種類の成果物の内容
npx1コマンドで動くインストール不要の使い方- LLMプロバイダーの設定方法(Ollamaで完全ローカル実行も可能)
なぜ既存のSEOツールでは足りないのか
AhrefsやSEMrushをはじめとする一般的なSEOツールは、ライブサイトをHTMLクロールして評価する。ページタイトルやメタ説明、バックリンク数などは取得できても、「この製品が何をするものか」は判断できない。
たとえばAPIライブラリのドキュメントサイトを監査するとき、ツールはHTMLを見るだけで、README.mdやpackage.jsonに書かれたプロダクトの本質を理解しない。その結果、的外れなキーワード提案が出てくることがある。
また、多くのツールはサードパーティのキーワードボリューム推計を使う。実際のインプレッション数やクリック率ではなく、あくまでベンダー側のモデルによる推計だ。あなたのサイトの実力は、自分のGSCデータにしかない。
serpIQの2つの軸
1. コードベースを先に読む
serpiq auditを実行すると、まずREADME.md、package.json、ランディングページのHTML、サイトマップ、robots.txtを読み込む。LLMがこれらを解析し、プロダクトが何をするものかを把握した上でSEO戦略を組み立てる。このため、監査結果はサイト固有の内容になる。
2. GSCの実データを使う
serpIQはGoogle Search Console APIに直接接続し、過去90日分のクエリ・ページデータを取得する。サードパーティの推計値は使わない。表示回数・クリック数・掲載順位という「あなたのサイトの真実」だけを使って分析する。
監査レポートの内容
npx serpiq auditを実行すると、プロジェクト直下の.serpiq/ディレクトリに以下のファイルが生成される。
.serpiq/
├── audit-2026-04-28.md # メインレポート(人間が読む形式)
├── audit-2026-04-28.json # 同内容をJSON形式で出力
├── blog-briefs/
│ └── brief-{slug}.md # AIが推奨するブログ記事ごとにブリーフを生成
└── pseo/
└── pseo-plan.md # プログラマティックSEOのテンプレート
メインレポートが含む情報は次の通りだ。
ヘルススコア(0〜100) — 現在のSEO状態をスコアで評価する。サイトの規模に応じてしきい値が自動調整されるため、小規模サイトが大規模サイト用のデフォルト値で不当に低評価されない設計になっている。
クイックフィックス — タイトルタグ・メタディスクリプション・H1など、インパクト順に優先度をつけた修正リスト。
ストライキングディスタンスキーワード — GSCで現在8〜20位に掲載されているクエリを抽出する。少し最適化するだけで上位表示できる可能性が高いキーワード群だ。
高インプレッション・低CTRページ — 表示回数は多いがクリック率が低いページを特定する。タイトルやスニペットを書き直すだけでCTRを改善できる余地がある。
ブログコンテンツプラン — ターゲットキーワード・検索意図・アウトラインを含む詳細なブリーフを記事ごとに生成する。
プログラマティックSEO(pSEO)テンプレート — URLパターンとデータソースを含む、量産ページ向けのテンプレート設計を出力する。
テクニカル課題 — コードベースの中に見つかった問題(メタタグ不足、サイトマップ未設定、robots.txtの欠落など)を報告する。
インストールと基本的な使い方
serpIQはNode.js製で、インストール不要でnpxからすぐに実行できる。
# 1. GSC認証(初回のみ)
npx serpiq auth
# 2. 任意:製品コンテキストファイルを生成
npx serpiq init
# 3. 監査を実行
npx serpiq audit --gsc-site sc-domain:yoursite.com
npx serpiq authを実行すると、ブラウザが開いてGoogleアカウントの認証が行われる。取得したリフレッシュトークンは~/.serpiq/credentials.jsonに保存される(自動的に.gitignore対象になる)。
npx serpiq initは任意ステップだ。.serpiq.mdというテンプレートファイルをプロジェクトに生成し、競合他社・ターゲット読者・SEOゴールなどコードベースから読み取れない情報を補足できる。
GSCアカウントがない場合や、まずコードベース分析だけ試したい場合は--skip-gscフラグを使うと、GSCなしで動作する。
LLMプロバイダーの設定
serpIQはLLMをユーザーが持ち込む設計(BYOLLM)だ。対応プロバイダーとデフォルトモデルは以下の通り。
| プロバイダー | デフォルトモデル | APIキー環境変数 |
|---|---|---|
anthropic(デフォルト) |
claude-sonnet-4-5 | ANTHROPIC_API_KEY |
openai |
gpt-4o | OPENAI_API_KEY |
openrouter |
anthropic/claude-sonnet-4-5 | OPENROUTER_API_KEY |
openai-compatible |
gpt-4o | OPENAI_API_KEY |
ollama |
llama3 | 不要 |
デフォルトはAnthropicで、品質面でも推奨されている。7B〜13Bの小規模ローカルモデルは監査精度が下がり、不正なJSONが出力される可能性があるため、品質重視ならClaude Sonnet 4.5かGPT-4oを選ぶのが無難だ。
プロバイダーを変更する場合は--providerフラグで指定する。一度指定すると~/.serpiq/config.jsonに保存され、次回以降は省略できる。
# Anthropic(デフォルト)
export ANTHROPIC_API_KEY=sk-ant-...
npx serpiq audit --gsc-site sc-domain:yoursite.com
# ローカルOllama(APIキー不要)
ollama pull llama3
npx serpiq audit --provider ollama --gsc-site sc-domain:yoursite.com
Ollamaを使えば、コードの断片もGSCデータも自分のマシンの外に出ない。プライバシーを重視する環境での利用に向いている。
内部パイプラインの仕組み
serpIQは5つのステップで動く。各ステップはTypeScriptの独立したファイルとして実装されており、改造しやすい構成だ。
最初のステップでLLMがコードベースを読んでプロダクト概要とキーワードの種を生成する。次のステップでGSCから90日分のデータを取得し、サイトの現在の段階を「no_data」「low_visibility」「rank_improvement」「has_traction」「scaling」などの6段階に分類する。この段階判定が以降の戦略全体を方向付ける。
キーワードリサーチはGoogle Autocompleteへの直接スクレイピングで行い、LLMによる推測ではなく実際の検索候補を取得する。AI分析は1つの巨大なプロンプトではなく、「全体戦略→ブログブリーフ展開→pSEO展開」と複数の的を絞ったLLM呼び出しに分割されており、小規模モデルでも処理しやすくなっている。
現時点での制約
serpIQは意図的に実装していない機能がある。Ahrefs・SEMrushのようなサードパーティキーワードボリュームAPIとの連携は持たない。競合サイトのライブSERP取得もロードマップには挙がっているが現時点では未実装だ。既存のGSCデータと無料のGoogleシグナル(Autocomplete)を使うという設計思想を貫いている。
まとめ
serpIQは「コードベースを読む」「GSCの実データを使う」という2点で既存ツールと異なるアプローチを取る。TypeScript製・MITライセンス・npxで即実行という手軽さも開発者フレンドリーだ。Ollamaを使えばAPI費用ゼロ・データ完全ローカルで動かせる。プロジェクトのSEO改善を始めたい開発者にとって、試す敷居は低い。