AIコーディングツールに「フロントエンド開発者として振る舞って」と指示しても、出てくるのは汎用的な回答ばかり。専門知識を持った人間のような、深い文脈理解と実務レベルの成果物は得られません。この問題を正面から解決しようとするOSSプロジェクトが、GitHubで急速に支持を集めています。

この記事でわかること:

  • The Agencyが解決する課題と仕組み
  • 147エージェントの部門構成と具体的な中身
  • Claude Codeなど主要AIツールへの導入方法
  • 類似プロジェクト「agent-skills」との違い

AIエージェントに「役割」を与えるOSSプロジェクト

https://github.com/msitarzewski/agency-agents

The Agencyは、AIコーディングツールに読み込ませる専門エージェントペルソナ集です。Michael Sitarzewski氏がRedditのスレッドから着想を得て開発しました。2025年10月の公開以降、GitHubスターは89,000を超え、フォーク数も14,000以上に達しています。

このプロジェクトの核心は、単なるプロンプトテンプレートではない点です。各エージェントファイルには、性格特性、コアミッション、ワークフロー手順、成果物テンプレート、成功指標が構造化されたMarkdown形式で定義されています。AIツールにこのファイルを読み込ませると、そのペルソナとして振る舞うようになります。

12部門・147エージェントの全体像

エージェントは実際の企業組織を模した12の部門に分かれています。

Engineering部門が最大で、Frontend Developer、Backend Architect、DevOps Automator、Security Engineer、AI Engineer、SRE、Database Optimizerなど30近いエージェントが揃います。コードレビュー専門のCode Reviewerや、新メンバーのオンボーディングに特化したCodebase Onboarding Engineerといった、実務で必要だが見落とされがちな役割もカバーしています。

Design部門にはUI Designer、UX Researcher、Brand Guardianに加えて、UIに遊び心を注入するWhimsy Injectorという変わったエージェントもいます。Marketing、Sales、Finance、Product、Testing、Support、Strategy、Project Management、Paid Mediaといったビジネス系部門も充実しています。

さらにGame DevelopmentやSpatial Computingなど、ニッチだが需要のある専門分野もカバーしています。

エージェントファイルの中身

各エージェントのMarkdownファイルは、共通のフォーマットに沿って記述されています。たとえばFrontend Developerエージェントの場合、冒頭のメタデータで名前・説明・カラー・絵文字を定義した後、以下のセクションが続きます。

「Identity & Memory」ではロール定義と性格特性を指定します。「Core Mission」にはそのエージェントが取り組むべき具体的なタスク群を列挙します。Frontend Developerなら、Reactコンポーネント開発、Core Web Vitals最適化、アクセシビリティ対応などが並びます。

「Critical Rules」はそのエージェントが守るべきルールです。パフォーマンスファーストの開発やWCAG 2.1 AA準拠といった制約が明記されています。「Technical Deliverables」にはコード例が含まれ、「Workflow Process」で作業手順を定義し、「Success Metrics」で成功の基準を数値で示します。

この構造により、AIツールは汎用的な回答ではなく、特定の専門家としての一貫した振る舞いを維持します。

Claude Codeへの導入手順

Claude Codeで使う場合、リポジトリをクローンしてインストールスクリプトを実行するだけです。

git clone https://github.com/msitarzewski/agency-agents.git
cd agency-agents
./scripts/install.sh --tool claude-code

これで全エージェントのMarkdownファイルが ~/.claude/agents/ にコピーされます。特定の部門だけ使いたい場合は、手動でフォルダを指定してコピーします。

cp engineering/*.md ~/.claude/agents/

Claude Codeのセッション中に「Frontend Developer modeで対応して」と指示すれば、そのペルソナが適用されます。

対応ツールはClaude Code以外にも、GitHub Copilot、Cursor、Windsurf、Gemini CLI、Aider、OpenCode、OpenClaw、Kimi Codeなど幅広くサポートしています。./scripts/convert.sh で各ツール向けの設定ファイルを自動生成し、./scripts/install.sh で対話的にインストールできます。

agent-skillsとの違い

似たプロジェクトに、Google ChromeチームのAddy Osmani氏が主導する「agent-skills」があります。両者は補完的な関係にあります。

agent-skillsはAIエージェントのワークフローを規律づけるもので、テスト駆動開発やセキュリティレビューといった工程を強制する仕組みです。「何をどの順番でやるか」を定義します。

一方、The Agencyは「誰として振る舞うか」を定義します。専門知識、判断基準、コミュニケーションスタイルまで含めたペルソナをAIに与えます。

両方を組み合わせれば、専門家のペルソナを持ちつつ、規律あるワークフローに従うAIエージェントが構成できます。

使いどころと注意点

The Agencyが効果を発揮するのは、特定の専門性が求められるタスクです。セキュリティレビュー、パフォーマンス最適化、UXリサーチなど、汎用的なAI回答では物足りない場面で役立ちます。

注意点として、エージェントファイルのサイズが大きいものがあります。1ファイルで20KB超のエージェントも存在するため、コンテキストウィンドウの消費には気を配る必要があります。必要な部門のエージェントだけを選んで導入するのが現実的です。

MITライセンスで公開されているため、自分のプロジェクトに合わせてエージェントをカスタマイズしたり、独自のペルソナを追加したりも自由にできます。コミュニティからの貢献も活発で、291コミットを重ねて現在の規模に成長しました。