PS5がSteamマシンになる。2026年4月28日、セキュリティエンジニアのAndy Nguyen(TheFlow)氏が「ps5-linux」をGitHubに公開しました。PS5 Phatのハードウェア性能をフルに引き出し、Ubuntu 24.04を4K 60Hzで動かせるオープンソースのツールチェーンです。
この記事でわかること:
- ps5-linuxの概要と対応ファームウェア
- Zen 2 × 8コアとRDNA 2 GPUを解放するブースト機能
- 導入に必要なものとセットアップ手順
- 現時点での制約と注意点
ps5-linuxとは
https://github.com/ps5-linux/ps5-linux-loader
PS5 Phat本体にUbuntu 24.04をインストールし、フルスペックのLinux PCとして使えるようにするオープンソースツールです。パッチ済みのハイパーバイザー脆弱性を利用して、PS5のZen 2 CPU 8コア(16スレッド)とRDNA 2 GPUの性能をすべて解放します。
2026年3月、Andy Nguyen氏がGTA V Enhanced Editionをレイトレーシング付きでPS5 Linux上で動かすデモを公開し、大きな注目を集めました。今回のv1.0リリースで導入手順がドキュメント化され、対応ハードウェアを持つ人なら誰でも再現できる状態になっています。GitHubスター数は639(2026年4月30日時点)、ライセンスはGPL-3.0です。
対応するPS5の条件
対応するのはPS5 Phat(初期型の大きいモデル)のみです。PS5 Slimは対象外になります。
ファームウェアごとの対応状況は以下のとおりです。
- 3.00 / 3.10 / 3.20 / 3.21 — Linux動作可。M.2 SSDサポートなし
- 4.00 / 4.02 / 4.03 / 4.50 / 4.51 — Linux動作可。M.2 SSDサポートあり
- 5.xx — 将来対応の可能性あり。GameOS VM内での動作になるため性能は制限される
- 6.xx以降 — 非対応
ファームウェアのダウングレードはできないため、現在のバージョンが対応範囲外であればこのツールは使えません。
解放されるハードウェア性能
Linux起動後のPS5は、以下のスペックで動作します。
- CPU: Zen 2 × 8コア / 16スレッド(最大3.5 GHz)
- GPU: RDNA 2(最大2.23 GHz)
- メモリ: 16 GB GDDR6
- 映像出力: HDMI 1080p / 1440p / 4K(いずれも60Hz)
- 音声出力: HDMI経由
付属のps5_controlツールを使えば、CPUとGPUのブーストクロックを有効にできます。ファンカーブの調整も可能です。ブーストを有効にする際はファンも必ずオンにしてください。PS5の冷却機構はSonyの電力管理向けに設計されているため、ファンなしでのブーストはオーバーヒートの原因になります。
導入に必要なもの
必須のハードウェアは3点です。64 GB以上のUSBドライブ(外付けSSD推奨)、USBイーサネットまたはWLANアダプター、USBキーボードとマウスです。PS5の内蔵Wi-FiとBluetoothは現時点でLinux用ドライバーがないため使えません。ネットワーク接続にはUSBアダプターが必要です。
任意でM.2 SSDを用意すれば、Linux専用パーティションとして使えます(ファームウェア4.xx以降)。DualSenseコントローラーを無線で使いたい場合はBluetoothドングルも必要です。
セットアップの流れ
導入は大きく5ステップに分かれます。
まず、ps5-linux-imageリポジトリをクローンし、ビルドスクリプトでUbuntu 24.04のイメージを生成します。Linux・macOSではシェルスクリプト、Windowsの場合はWSL2とDockerを使います。
次に、生成したイメージをUSBドライブに書き込みます。ddコマンドまたはBalena Etcherが使えます。
3ステップ目がジェイルブレイクです。umtx2エクスプロイトを使い、PC上で偽DNSサーバーとHTTPSホストを起動します。PS5のネットワーク設定でDNSをPCのIPに向け、ユーザーマニュアルページからエクスプロイトを実行します。
4ステップ目で、ps5-linux-loader.elfペイロードをTCP経由でPS5に送信します。
最後に、PS5がレストモードに入りLEDが静止したら電源ボタンを押します。LEDが白に変われば起動成功です。
知っておくべき制約
ps5-linuxはソフトモッドです。Linuxを起動するたびにエクスプロイトの再実行が必要で、デュアルブートには対応していません。通常再起動するとPS5 OSに戻ります。
その一方で、内蔵SSDは一切変更されません。PS5としてゲームを遊ぶ用途は引き続き使えます。
そのほかの制約も把握しておく必要があります。スタンバイからの復帰は非対応です。スクリーンセーバーにバグがあるため無効化が推奨されています。一部のモニターでは1440p・4K出力に互換性の問題が報告されており、その場合は1080pへのフォールバックが必要です。DualSenseは有線USB接続では動かず、Bluetoothドングル経由でのみ使えます。
どんな人に向いているか
GPU価格の高騰が続くなか、使わなくなったPS5 Phatを低コストのLinuxマシンとして再活用したい人にとって、ps5-linuxは現実的な選択肢です。Zen 2 × 8コアとRDNA 2 GPUの組み合わせは、Steam Deckを上回る処理性能を持ちます。Steamゲームやエミュレーターも動作します。
ただし、毎回のエクスプロイト実行が必要な点、ファームウェアの制約がある点を考えると、日常的なメインPCの代替としてはハードルが高いのも事実です。押し入れで眠っているPS5 Phatが対応ファームウェアだった場合に、試す価値のあるプロジェクトといえます。トラブルシューティングはプロジェクトのDiscordサーバーで受け付けています。