AIコーディングエージェントを複数同時に走らせると、ターミナルの切り替えだけで手が止まります。Claude CodeとCodexを並行して使いたいのに、ブランチが衝突し、どのエージェントがどこまで進んだか見失う。こうした問題を根本から解決するデスクトップIDEが登場しました。

この記事でわかること

  • Orcaが解決する「マルチエージェント開発」の課題
  • git worktreeを活用した分離設計の仕組み
  • 対応する20種類以上のCLIエージェント
  • Design Modeやエージェント間オーケストレーションなどの新機能
  • 料金と導入方法

Orcaとは

https://github.com/stablyai/orca

Orcaは、Stably AIが開発したオープンソースのデスクトップIDEです。複数のAIコーディングエージェントを1つのウィンドウ内でタブやペインに分けて並列実行し、進捗を一覧で管理できます。Electronベースで、macOS・Windows・Linuxに対応しています。

2026年3月にGitHubで公開され、4月29日時点の最新バージョンはv1.3.24です。MITライセンスで公開されており、GitHub上のスター数は約1,800に達しています。

複数エージェントを同時に使う課題

Claude Code、Codex、Gemini CLIなど、ターミナルで動くAIコーディングエージェントが急増しています。1つのプロジェクトで複数のエージェントを同時に使いたい場面も増えましたが、実際にやろうとすると3つの問題にぶつかります。

1つ目は、ブランチの衝突です。同じリポジトリで複数のエージェントが別々の機能を実装すると、作業ブランチが競合します。stashやブランチ切り替えを繰り返す手間が発生し、意図しない変更の上書きも起きやすくなります。

2つ目は、進捗の把握です。ターミナルのタブを行き来するだけでは、どのエージェントが作業中で、どれが完了待ちなのか一目で判断できません。

3つ目は、差分レビューの分断です。各エージェントが生成したコードの差分を確認するために、毎回git diffを打つか、別のGUIツールに切り替える必要があります。

主な機能

https://www.onorca.dev/

Worktree分離

Orcaの設計の核は、gitのworktree機能です。エージェントに新しいタスクを割り当てるたびに、独立したworktreeが自動で作成されます。stashやブランチ切り替えは不要です。各worktreeは完全に分離されているため、あるエージェントの変更が別のエージェントの作業に影響しません。

マルチエージェントターミナル

複数のエージェントをタブやペインで横並びに実行できます。各エージェントの状態(作業中・完了・要対応)がサイドバーのステータスドットで表示されるため、一目で進捗を把握できます。エージェントの作業が終わるとデスクトップ通知が届く仕組みです。

差分レビューとアノテーション

AIが生成したコードの差分をOrca内で直接確認できます。v1.3.24で追加されたAnnotate AI Diff機能では、差分の任意の行にコメントを書き、そのフィードバックをエージェントに送り返せます。行番号をコピーしたり、別のツールに切り替える必要はありません。

Design Mode

OrcaにはChromiumベースのブラウザが内蔵されています。開発中のアプリをプレビューしながら、Design Modeに切り替えると、UI上の要素をクリックするだけでエージェントのチャットにコンテキストとして送れます。変更したい箇所を指差して指示するだけで修正を依頼できます。

エージェント間オーケストレーション

v1.3.24で追加されたinter-agent orchestration機能により、複数のエージェントにタスクを振り分けて連携させる仕組みが導入されました。Agent Dashboard v2では、各エージェントのエンドポイント検出やステータスの一元管理が可能です。

対応エージェント

OrcaはCLIで動作するエージェントであれば基本的にすべて対応します。公式にサポートが明記されているのは、Claude Code、Codex、Gemini CLI、Pi、Hermes Agent、OpenCode、Goose、Amp、Auggie、Cline、Codebuff、Continue、Cursor、Droid、GitHub Copilot、Kilocode、Kimi、Kiro、Mistral Vibe、Qwen Code、Rovo Devなど20種類以上です。

ログイン不要で、各エージェントのサブスクリプションやAPIキーをそのまま持ち込めます。

料金

Orca自体は無料です。MITライセンスのオープンソースとして公開されており、機能制限もありません。ただし、実際の利用には各エージェント側のサブスクリプションやAPIアクセスが別途必要です。Claude CodeならAnthropicのサブスクリプション、CodexならOpenAIのアクセス権といった形で、エージェントごとの費用は従来どおり発生します。

類似ツールとの違い

CursorやWindsurfのようなAI搭載エディタは、特定のAIモデルとエディタが一体化した構成です。エージェントの選択肢が限られ、複数のエージェントを同時に走らせる設計にはなっていません。

Orcaのアプローチは異なります。エディタ自体にAIモデルを組み込むのではなく、既存のCLIエージェントを束ねるオーケストレーション層として機能します。使い慣れたエージェントをそのまま持ち込み、worktreeで分離しながら並列実行できる点が特徴です。

また、VS Codeの拡張機能でマルチエージェントを実現する方法もありますが、worktree単位の自動分離やエージェント横断の進捗管理はOrcaが標準で備えている機能です。

導入の注意点

Orcaは2026年3月に公開されたばかりのプロジェクトです。更新頻度は高く、v1.3.24までの約1ヶ月半で多くの機能が追加されていますが、安定性やエッジケースの対応はこれからの部分もあります。GitHubのIssuesを確認してから導入するのが安全です。

SSH接続でリモートマシン上のエージェントを操作する機能も備えていますが、ネットワーク環境によっては接続の安定性に差が出る可能性があります。

まとめ

AIコーディングエージェントの選択肢が増えるほど、それらを束ねて管理する仕組みの重要性が高まります。Orcaはworktreeによる分離設計と、エージェント横断の進捗管理で、マルチエージェント開発の実用的な基盤を提供しています。無料かつMITライセンスで、対応エージェントも幅広いため、複数のCLIエージェントを日常的に使っている開発者は試す価値があります。