車のボイスアシスタントに不満を感じたことはないでしょうか。決まったコマンドしか通じない、文脈を理解しない、結局スマホを触る——そんな時代が変わりつつあります。
Googleは2026年4月30日、「Google built-in」搭載車にAIアシスタント「Gemini」の展開を開始しました。従来のGoogle Assistantを置き換える大型アップデートで、対象は数百万台に及びます。
この記事でわかること
- Google built-in車両でGeminiが使えるようになった背景
- 対話・ナビ・車両制御の具体的な機能
- 対象メーカーと車種の範囲
- 今後の拡張予定
Google Assistantから何が変わったのか
これまでのGoogle Assistantは、あらかじめ決められた音声コマンドに依存していました。「○○に電話して」「○○を再生して」といった定型文でしか操作できず、会話の文脈を引き継げません。
Geminiでは自然言語での対話が可能になります。たとえば「ランチで外のテラスがある店を探して、急いでないから座れるところがいい」と話しかけると、Google Mapsの情報を参照して候補を返します。そのまま「駐車場はある?」「ベジタリアンメニューは?」と会話を続けられます。
従来は1回ごとにコマンドが途切れていた操作が、複数ターンの対話として成立するようになった点が最大の変化です。
主な機能は4つ
メッセージの要約と返信
受信メッセージをGeminiが要約し、音声で返信を作成できます。「ジェーンに向かってると伝えて、到着予定時刻も入れて」と指示した後、「やっぱりデザートを買っていくか聞いて」と修正を加えることも可能です。最初から言い直す必要はありません。
音楽リクエストの柔軟化
「ジャズのラジオ局をかけて」のようなあいまいなリクエストにも対応します。YouTube Musicなどのストリーミングアプリと連携し、「山道向けの70年代フォークロック、スローバラードは飛ばして」のような細かい指定も通ります。
車両固有の情報参照
Geminiはメーカー提供のオーナーズマニュアルを参照し、車種ごとの質問に回答します。「自動洗車機に入れるにはどう準備すればいい?」「トランクの開く高さを制限するには?」といった問いに、自分の車に合った答えが返ってきます。
EV向けにはバッテリー残量、到着時の予想残量、近くの充電ステーションの検索も統合されています。
車内環境の制御
「寒くて霧が出てる」と伝えるだけで、暖房の温度を上げてデフロスターをオンにします。具体的な設定値を指示しなくても、文脈から意図を汲み取って操作します。
Gemini Liveで「ながら学習」ができる
ベータ版として提供されている「Gemini Live」は、自由な会話形式のやり取りを可能にします。ステアリングのボタンや「Hey Google, let’s talk」で起動します。
目的地の歴史や雑学を聞いたり、旅行先のハイキングコースを相談したりと、運転中のブレインストーミングに使える機能です。回答の途中で割り込んで別の質問に切り替えることもできます。
ただし、複雑な話題に集中しすぎると運転への注意が散漫になるリスクはあります。安全のため、込み入った会話は停車中に行うのが賢明です。
対象は数百万台、OTAで既存車にも配信
Googleは2020年にGoogle built-inを初搭載した際、「車はソフトウェアアップデートで時間とともに進化する」と宣言しました。今回のGemini搭載は、その約束を具体化するものです。
GM(ゼネラルモーターズ)は米国で約400万台にGeminiを展開します。対象は2022年モデル以降のCadillac、Chevrolet、Buick、GMCの各ブランドです。
Volvoは2020年モデルまで遡る幅広い車種が対象です。C40、EC40、EX40、XC40、S60、V60、XC60、V90、S90、XC90、EX90、ES90、EX30、EX60の計14モデルに配信されます。5年前のXC60でも、最新のEX60と同じ会話AIが使えるようになります。
Polestarも米国で販売しているモデル全車種にGeminiを追加しています。
いずれもOTA(Over-the-Air)によるソフトウェアアップデートで提供され、ディーラーへの持ち込みは不要です。
まずは米国英語から、今後の拡張も発表済み
現時点での提供範囲は米国・英語のみです。Googleは今後数か月で対応言語と地域を拡大すると発表しています。
将来的にはGmail、Googleカレンダー、Google Homeとの連携も予定されており、車内からメールの確認やスマートホームの操作ができるようになる見込みです。
Android Autoでのスマートフォンミラーリング経由のGeminiは2025年から提供されていましたが、今回は車載OSネイティブでの動作です。スマホを介さずに車両のハードウェアやセンサーと直接連携できるため、バッテリー情報や空調制御といった機能はGoogle built-inでしか実現できません。
車のボイスアシスタントは長らく「使えない機能」の代名詞でした。GeminiのOTA展開は、既存オーナーにもAI進化の恩恵を届ける点で、自動車業界全体にとっても注目すべき動きです。
