スマートスピーカーの「次」を探しているなら、スタックチャンが答えの一つになるかもしれません。
M5Stack製AIデスクトップロボット「スタックチャン」が、出荷時ファームウェアのままHome AssistantとMCPを経由してエアコンを音声制御できることが実証されました。Xユーザーの@74th氏が動作確認し、「エアコンのオンオフが動いた」と報告しています。
この記事でわかること:
- スタックチャンのAI Agentモードが何を担うか
- Home Assistant MCP Serverとの接続構成
- Nature Remo LapisをMatter経由でつなぐ仕組み
- 設定の流れと現時点の注意点
スタックチャンとは何か
https://docs.m5stack.com/ja/StackChan
M5StackとコミュニティによってOSSで開発されたAIデスクトップロボットです。メインコントローラにESP32-S3を採用し、デュアルマイク・スピーカー・カメラ・サーボモーター2基を内蔵します。ウェイクワード「Hi, StackChan」で起動し、音声で会話できます。
注目すべきは出荷時ファームウェアの充実度です。AI Agentモードをはじめ、表情豊かなアニメーション、OTAアップデート対応、スマートフォンアプリとのバインドなどが追加プログラミングなしで使えます。AI AgentにはHome Assistant MCPプラグインを接続できる仕組みが標準で組み込まれており、これが今回の音声スマートホーム連携の起点になります。
制御チェーンの全体構成
今回実現した経路は次のとおりです。
スタックチャン(AI Agent)
→ Home Assistant MCP Server
→ Home Assistant
→ Matter Server
→ Nature Remo Lapis
→ エアコン
各層の役割を整理します。
Home Assistant MCP Serverは、Home AssistantをMCPサーバーとして動作させる公式統合機能です。MCP(Model Context Protocol)に対応したAIクライアントからHome Assistant上のデバイスを操作できるようにします。対応クライアントはスタックチャンだけでなく、Claude for DesktopやClaude Codeも含まれます。
Matter Serverは、スマートホーム相互接続規格Matterを扱うHome Assistantのコンポーネントです。Matter対応デバイスをHA上のエンティティとして登録・管理します。
Nature Remo Lapisは赤外線ブリッジ機能を持つスマートリモコンで、Matterバージョン1.2に対応しています。
https://shop.nature.global/products/nature-remo-lapis
赤外線リモコンで操作できる家電であれば機種を問わずLapisに登録でき、Matter経由で最大20台まで扱えます。エアコン・テレビ・照明などが対象です。2024年度グッドデザイン賞を受賞しており、価格は7,980円(税込)。
この構成のポイントは「Matterが橋渡しをする」点にあります。スタックチャンはHome AssistantをMCPで操作し、Home AssistantはMatter経由でNature Remo Lapisに命令を渡し、LapisがエアコンへIRコマンドを送ります。命令がいくつかのプロトコルをまたぐ形ですが、ユーザー側の操作は「エアコンをつけて」と声に出すだけです。
設定の大まかな流れ
https://www.home-assistant.io/integrations/mcp_server/
スタックチャン側はスマートフォンアプリ「StackChan World」から設定します。アプリでデバイスをバインドした後、AI AgentにHome Assistant MCPプラグインを接続し、HAのMCPエンドポイント(https://[HAのURL]/api/mcp)と認証トークンを入力します。
Home Assistant側の手順はシンプルです。「設定 → デバイスとサービス → 統合の追加」でMCP Serverを追加し、Matter Serverを有効化します。Nature Remo LapisをMatterデバイスとして登録した後、操作させたいエンティティを「音声アシスタントに公開」に設定すれば準備完了です。
公式ドキュメントによると、OAuthによる認証にも対応しており、Claude for DesktopからはOAuth Client IDにhttps://claude.aiを指定するだけで接続できます。
動作する音声コマンドの例
M5Stack公式ドキュメントが示すHome Assistant MCP接続後のコマンド例を引用します。
- 「寝室のライトをつけて」
- 「エアコンをつけて、25度に設定して」
- 「今、リビングの温度は何度?」
@74th氏の検証ではエアコンのオンオフ制御の動作が確認されています。詳細な設定手順は後日ブログにまとめる予定とのことで、具体的な手順書が公開されれば再現性がさらに高まります。
現時点の注意点
スタックチャンからHome AssistantへのMCP接続には、HAが外部からアクセス可能なURLを持っている必要があります。自宅ネットワーク内のみで構成する場合は、ローカルIPアドレスでの接続も選択肢になりますが、スタックチャンとHAが同一ネットワークにある前提です。
接続手順の詳細は現在、サードパーティのHACSプラグイン「ha-mcp-for-xiaozhi」のREADMEを参照する形が中心です。M5Stack公式チュートリアルは準備中とドキュメントに明記されており、今後整備される見込みです。
音声認識の精度はAI Agentに設定するモデルに依存します。StackChan WorldアプリではAIモデル・音色・応答速度・性格・記憶などを細かく設定できるため、用途に合わせて調整するとよいでしょう。
AIとスマートホームをつなぐ層としてのMCP
今回の構成は、MCPがAIエージェントと物理デバイスの間の「共通言語」として機能することを示しています。スタックチャン側もHome Assistant側も、互いの実装詳細を知らなくてよい設計です。
Matterが赤外線家電をデジタル操作可能にし、MCPがその操作をAIから呼び出せるようにする。この二つの規格が揃ったことで、「古い家電に声で命令する」という体験が現実的な選択肢になりました。