チャット型AIは便利ですが、セッションをまたぐと同じ前提説明を繰り返すことが多いです。2026年6月、XユーザーCyrilXBT氏は「ObsidianとHermes Agentの組み合わせが、いま最も強力な個人用OSになり得る」と指摘し、Obsidianに知識を蓄え、Hermes Agentが読み取り・推論・ワークフロー自動実行を担う構成を紹介しました。
この記事では、公式ドキュメントとオープンソース実装に基づき、その「個人用OS」が何を意味するのか、役割分担、導入手順、拡張の選択肢、運用上の注意点を整理します。
この記事でわかること
- ObsidianとHermes Agentを組み合わせたとき、それぞれが担う役割
- 公式が推奨するVaultのスコープ設計と、最初の接続手順
- Open Second Brainなど、Markdown記憶を強化する拡張の位置づけ
- うまく動かないときに確認すべきポイント
個人用OSとは何を指すのか
CyrilXBT氏の投稿では、Obsidianが「あなたが知っていることを永続的に保持する層」、Hermes Agentが「それを読み、横断的に推論し、重要なワークフローを自動実行する層」だと整理されています。OSという言葉は、単一アプリの機能紹介ではなく、知識の保存・検索・推論・定期実行を一つのループにまとめる設計思想を指します。
Hermes AgentはNous ResearchがMITライセンスで公開する自己改善型AIエージェントです。経験からスキルを生成し、セッションをまたいで記憶を保持し、TelegramやDiscordなどのメッセージング経由でも操作できます。ローカルマシンから月5ドル程度のVPSまで、常時稼働させる前提で設計されています(Hermes Agent公式README)。
ObsidianはローカルファーストのMarkdownノートアプリです。個人利用は無料で、wikilinkやグラフビューにより、人間が読み書きできる知識ベースを維持できます。
なぜこの組み合わせが効くのか
多くのAIエージェントは、コンテキストをプロンプト内に毎回貼り付ける運用になりがちです。トークン消費が増え、何を記憶しているか人間側から検証しにくいという課題があります。
Hermes公式のObsidian連携ドキュメントは、Obsidianを「レビュー可能なMarkdown層」、Hermesのメモリとセッション検索を「将来のエージェント実行に使うコンテキスト」と位置づけています。エージェントが書いたプロジェクト事実、セッション要約、スキル説明がVault内のMarkdownとして残るため、Obsidian上で開いて修正・リンク付け・バックアップできます(Hermes Agent Obsidian連携)。
DEV Communityの解説では、ベクトルDBよりMarkdown Vaultを選ぶ理由として、「曖昧な想起ではなく、名前付きで編集可能な記憶を人間とエージェントが共有できる」点が挙げられています。Hermes v0.14(2026年5月16日リリース)以降、hermes memory setup --provider obsidian --path ~/vaults/work の一行でObsidianプロバイダを接続できるとも記載されています(参考)。
ObsidianとHermesの役割分担
| 層 | 担うこと | 典型アウトプット |
|---|---|---|
| Obsidian | 人間が読む知識、リンク、日次ノート、グラフでの俯瞰 | プロジェクトノート、日報、手動メモ |
| Hermes Agent | ツール実行、推論、スキル学習、定期タスク、マルチチャネル応答 | 調査結果の要約、自動生成スキル、cronレポート |
| 連携フォルダ | エージェントが読み書きするスコープ付きMarkdown | /Hermes や /Agent Memory 配下の要約・事実メモ |
公式は「Vault全体を最初から開放しない」ことを明記しています。プライベート日記、クライアント情報、認証情報はスコープ外に置き、エージェント用フォルダだけを共有するのが安全な初期構成です。1件の無害なメモリを書かせ、Obsidianでタイムスタンプとリンクを確認してから範囲を広げる手順が推奨されています(Hermes Obsidianプラグイン解説)。
導入手順(最小構成)
1. Hermes Agentのインストール
公式のワンライナーで導入できます。
curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/NousResearch/hermes-agent/main/scripts/install.sh | bash
hermes setup
2. Obsidian Vaultの準備
既存Vaultがある場合は、その中に Agent Memory など専用フォルダを新設します。新規でも構いません。
3. メモリプロバイダの接続
hermes memory setup --provider obsidian --path /path/to/your-vault
hermes memory status
パスはHermesプロセスから見える絶対パスに揃えます。ノートが生成されない場合、ターミナルから見える権限と、ゲートウェイ起動ユーザーの権限が一致しているかを確認します。
4. スモークテスト
Hermesに「プロジェクトXのビルドコマンドはnpm run build」と覚えさせ、Obsidianで対応するMarkdownができたか確認します。ここで秘密情報が混ざっていれば、フォルダスコープを狭めます。
5. ゲートウェイと定期実行(任意)
hermes gateway でTelegram等を接続し、自然言語のcronで朝のブリーフィングや週次レポートを無人実行できます。READMEでは、日次レポートや夜間バックアップを自然言語でスケジュールする例が示されています。
活用例:自動化が効く場面
個人用OSとしての価値は、単発チャットではなく繰り返し走るワークフローに出ます。第三者の運用記事では、HermesにRedditの不満スレッドを毎日要約させVaultへ書き込む、競合の週次調査を月曜朝に自動投入する、といった例が紹介されています(参考)。CyrilXBT氏の投稿も「Morning…」で切れており、朝のブリーフィング用途を想定している可能性が高いです。
公式連携でサポートされる機能には、Vault検索、ノート作成、バックリンク付きクエリ、デイリーノート同期、テンプレート埋め込み、スキル・セッションノートのレビューなどがあります。人間はObsidianでグラフを眺め、エージェントはHermesのセッション検索とスキル実行で次のタスクに進む、という分業が可能です。
Open Second Brainで記憶を構造化する
より厳密な「第二の脳」を求める場合は、Open Second Brain(o2b)というHermes向けプラグインがあります。Vault内の Brain/ 以下に嗜好・シグナル・証拠がMarkdownで蓄積され、夜間の dream パスで繰り返し修正がルール化されます。ベクトルDBに閉じ込めず、grepやgit、Obsidianのバックリンクで監査できる設計です。
導入は次の流れです。
hermes plugins install itechmeat/open-second-brain --enable
hermes gateway restart
o2b init --vault /path/to/your-vault --name "My Second Brain"
o2b brain init --vault /path/to/your-vault --primary-agent hermes
Claude CodeやCodexなど他エージェントもMCP経由で同じBrainを読み書きできます。Hermesを実行エンジン、Obsidianを可視化・編集面、o2bを記憶のスキーマ層と捉えると、CyrilXBT氏が言う「ほとんど誰もまだ組んでいない」構成に近づきます。開発者の解説では、HermesをVPSで常時稼働させ、Obsidianは人間向けUIとして使い分ける方針が述べられています(参考)。
うまくいかないときの切り分け
Obsidianにノートが出ないのに「忘れた」と感じる場合、原因は連携ではなくHermes側のメモリ設定にあることがあります。公式は、プロファイル選択、メモリプロバイダ、セッション状態、補助モデルの健全性を先に確認するよう案内しています。Obsidianは可視化レイヤーであり、メモリパイプラインそのものの代替ではない、と明記されています。
プライベートな文脈がプロンプトに漏れるときは、Vaultスコープを狭めるか、エージェント専用プロファイルにVaultを分離します。記憶が古いと感じるときは、Hermesがフォルダを読んでいるのか、要約を書き込むだけなのかを hermes memory status で確認します。
個人用OSを試すときの判断基準
Obsidian×Hermesは、すでにMarkdownで知識を溜めている人、Telegramなどからエージェントを常時叩きたい人、定期調査や要約を無人化したい人に向きます。逆に、チーム向けの構造化データベースが主戦場なら、Notion連携など別のHermes統合の方が適する、と公式は比較しています。
まずは小さなスコープフォルダと1件のスモークテストから始め、Obsidianでエージェントの記憶を人間の目で監査できる状態を作る。そこからcronとスキルを足していく流れが、公式が示す安全な個人用OSの組み方です。

