暗号資産のAIエージェントは、いま「動く」段階から「稼ぐ」段階へ移りつつあります。
Root Edge(root)は2026年6月25日、収益源の進捗をXで報告しました。Hyperliquidの紹介報酬、LI.FI経由のスワップ手数料、LLMエージェント経由の取引、x402課金のMCP呼び出しが、実運用で収益として立ち始めたと述べています。AIとブロックチェーンの接点が、デモを超えた実装フェーズに入った事例として読めます。
この記事でわかること
- Root Edgeが報告した5つの収益チャネルとその仕組み
- Hyperliquid・LI.FI・x402がエージェント収益化に使われる理由
- 開発者や利用者が押さえるべき技術的な前提条件
Root Edgeが報告した収益の全体像
Root Edgeは、暗号資産向けのクオンツ研究とデータ基盤を提供するプロジェクトです。リアルタイム市場ダッシュボード「Edge」と、自然言語で注文を出せるAIトレーディングエージェント「rootAI」で構成されています。MCP(Model Context Protocol)サーバーを公開し、LLMから市場データやシグナルにアクセスできる設計です。
今回の投稿タイトルは「Rev/Fee Source Update」で、収益源ごとの進捗を箇条書きにした内容です。具体的には次の5点が挙げられています。
- TelegramとDiscordで配信するトレーディングシグナル経由のHyperliquid紹介報酬が発生し始めた
- LI.FI Protocolを組み込んだEdge基本版で、スワップの紹介手数料が入り始めた
- LLM/エージェント経由のスワップが有効化され、実際の取引が発生している
- x402課金のPro版MCP呼び出しが収益化フェーズに入った
- AerodromeFiのLP報酬を継続的に回収し、流動性プールへ再投入している
いずれも「構想段階」ではなく、運用中のプロダクトで収益が発生し始めたという報告です。金額の開示はありませんが、複数チャネルが同時に動き出した点が注目されます。
Hyperliquidシグナルと紹介報酬の仕組み
Root EdgeはTelegram(t.me/rootedge)とDiscordでトレーディングシグナルを配信しています。Hyperliquidのパーペチュアル市場向けに、建玉変化やファンディングレート、大口フローなどをもとにした方向性シグナルを届ける運用です。
Hyperliquidには、第三者フロントエンドやエージェントが注文を仲介した際に報酬を得られる仕組みがあります。公式ドキュメントでは「Builder codes」と呼ばれ、注文ごとにビルダーアドレスと手数料率を付与します。パーペチュアル取引では最大0.1%、スポット売り側では最大1%まで設定できます。ユーザーは事前にEIP-712署名で最大手数料を承認し、ビルダーは紹介報酬と同様の手順で手数料を請求します。
加えて紹介コード制度もあり、紹介されたユーザーは最初の2,500万ドル取引量まで手数料4%割引、紹介者はそのユーザーの最初の10億ドル取引量まで手数料の10%を受け取れます。Root Edgeの報告は、SNSでシグナルを見た利用者がHyperliquidで取引し、紹介報酬が実際に発生し始めたことを示しています。
LI.FI連携スワップの紹介手数料
Edgeの基本版(app.rootedge.ai)では、クロスチェーンの流動性集約プロトコルLI.FIを使ったスワップ機能を提供しています。LI.FIは60以上のチェーンでDEXアグリゲーターやブリッジを束ね、1つのAPIで最適ルートを提示するインフラです。
インテグレーターはLI.FI Partner Portalでアカウントを作成し、integrator文字列とfeeパラメータをクオート要求に付与することで、取引量の一定割合を手数料として受け取れます。EVMチェーンではFeeForwarderコントラクトにより、取引実行時に手数料が設定ウォレットへ直接送金されます。Root Edgeはこの仕組みで「swap ref. fees」が入り始めたと報告しています。
LI.FIはAIエージェント向けにMCPサーバー(https://mcp.li.quest/mcp)も公開しており、クオート取得やチェーン一覧の参照をツールとして提供します。MCPサーバー自体は読み取り専用で、トランザクション署名は外部ウォレットが担います。EdgeがLI.FIを組み込むことで、人間のUI操作とエージェント経由の実行の両方から、同じ収益モデルを適用できる構造になっています。
LLMエージェント経由スワップの変化点
今回の報告で特に新しいのは、LLM/エージェントインターフェース経由のスワップが「有効化され、実際に取引が発生している」点です。Root Edgeは、利用者がAPIキーやウォレットを自分で用意しなくても使える環境を整えたと述べています。推論コストをサービス側が負担する「free inference」に加え、Googleアカウント経由でウォレットを作成できる機能もapp.rootedge.aiで提供開始したとしています。
これは、AIエージェントの利用障壁を下げる設計です。従来のDeFi連携では、ウォレット接続・ガス代管理・APIキー取得が開発者と利用者の双方に負担でした。Root Edgeはダッシュボード上のエージェントチャットとMCP経由のデータアクセスを一体で提供し、スワップ実行までを同一ワークスペースに収めています。rootAIはブラウザ内のエージェントキーでローカル署名する設計を掲げており、注文データがサーバーに送られない点もセキュリティ面の訴求になっています。
x402課金のPro版MCP
Root Edgeは無料の公開MCP(https://mcp.rootedge.ai/mcp)に加え、有料のPro版(https://mcp.rootedge.ai/pro)を提供しています。Pro版では、Hyperliquid向けのグレード付きシグナル取得ツールが有料化されています。公式ドキュメントによると、signals_recentとsignals_by_coinは1回0.01 USDC、signals_stream_sinceは0.05 USDCです。決済はBaseメインネット上のUSDCで、x402プロトコルによりオンチェーン精算されます。
x402はCoinbaseが提唱するHTTPネイティブの決済プロトコルで、HTTP 402 Payment Requiredを使い、APIキーやサブスクリプションなしに従量課金を実現します。Root EdgeのPro MCPでは、支払い情報をMCPのtools/callリクエストの_metaフィールドに載せる方式を採用しています。エージェントは最初の呼び出しで402相当の応答を受け取り、EIP-3009のtransferWithAuthorizationでUSDC支払いを署名して再試行する流れです。
Root Edgeはこのx402課金のMCP呼び出しが「materializing(収益化し始めた)」と報告しています。AIエージェントがデータ取得のたびに自動でマイクロペイメントを行うモデルが、暗号資産トレーディング分野で実運用に入った事例と言えます。
開発者にとどまる示唆
Root Edgeの報告は、AIエージェント開発者にとって実装の設計図にもなります。収益源を1つに絞らず、取引所紹介・スワップ手数料・有料API・流動性提供と分散させている点が特徴です。
Hyperliquid連携を検討する場合、ビルダーコードの承認フローとエージェントウォレットの署名設計が前提になります。LI.FI連携ではPartner Portalでのインテグレーター登録と、クオートAPIへのfeeパラメータ付与が必要です。MCPで課金するなら、x402対応クライアントの実装と、Base上USDC残高の管理が求められます。
いずれも「エージェントが判断する」部分と「オンチェーンで決済・実行する」部分を分離する思想が共通しています。LLMはルーティングやシグナル解釈に集中し、署名と精算はウォレットやプロトコル層が担う。この分業が揃って初めて、エージェント経由の暗号資産取引は収益モデルと結びつきます。Root Edgeの進捗報告は、その接続が2026年6月時点で複数ライン同時に動き始めたことを示す材料です。