3百万人以上が利用権を持つ米国防総省のAI基盤が、また一段階前進した。

2026年4月27日、国防総省(DoW)は生成AIプラットフォーム「GenAI.mil」にGoogleの最新モデル「Gemini 3.1 Pro」と「Gemini 3.0 Flash」を正式追加した。同日、政府向け画像生成機能「Nano Banana 1」も初めて搭載され、130万人超のアクティブユーザーが画像の生成・編集を行えるようになった。

この記事でわかること:

  • GenAI.milとは何か、どのような経緯で作られたか
  • Gemini 3.1 Pro追加で何が変わるか
  • 10万体超のAIエージェントを生み出したAgent Designerの仕組み
  • Nano Banana 1による政府向け画像生成の意味
  • 商用版から8週後という実装スピードの評価

GenAI.milとは何か

GenAI.milは、米国防総省が2025年12月9日に本格運用を開始した生成AI専用プラットフォームだ。軍人・文民・請負業者の合計300万人に対し、フロンティアAIモデルへのアクセスを一元提供することを目的としている。

最初に統合されたのはGoogle CloudのGemini for Government。IL5(インパクトレベル5)という厳格なセキュリティ基準のもと、機密ではない管理対象情報(CUI)を扱える環境で提供されている。IL5は、国防総省が機微な非機密データを取り扱う際に要求する最上位の基準だ。

ローンチから1週間で50万ユーザー、1か月で100万ユーザーを獲得。Google Public SectorのCEO、Karen Dahut氏は「ゼロレイテンシー問題・ゼロダウンタイムでこの規模を実現できるクラウドプロバイダーは他にない」とコメントしている。

今回のアップデート内容

Google Cloud Next(ラスベガス)の開催にあわせ、3つの機能が追加された。

Gemini 3.1 Proの正式提供。 数週間のプレビュー期間を経て、全ユーザーへの正式提供を開始した。Pentagon CDO(最高データ責任者)のGavin Kliger氏は「アメリカのAIの最前線を代表するモデルだ」と述べた。主な改善点として、幻覚の低減・出力品質の向上・生産性の加速が挙げられている。

Gemini 3.0 Flashの同時追加。 高速・軽量なモデルが加わり、応答速度を重視する業務に対応できるようになった。

Nano Banana 1の初搭載。 Gemini for Government向けのネイティブ画像生成・編集機能が初めて使えるようになった。Nano Banana(ナノバナナ)とはGoogleのGemini 3世代の画像生成モデルファミリーを指す名称で、テキストや既存の画像を使って業務用の画像を生成・編集できる。

商用ユーザーがGemini 3.1 Proにアクセスできるようになったのは2026年2月。GenAI.milでの正式提供はその約8週後になる。Dahut氏は「この速さで政府向けクラウドの認定を通せる会社は他にない」と説明する。

現場での活用事例

Navy Recruiting Commandのある担当者は、Geminiを使って人事・アカウント管理用のデータベース自動化システムを構築した。以前は「数年」かかっていた作業を3か月で完成させ、年間10週分の労働コストを削減した。

国防兵站局(DLA)のラボ長は、作業指示書の起草にかかる時間を「数週間から数時間」に短縮した。この効率化で、ラボ近代化向けの100万ドルの予算を確保できた。

ある部署では、議会向けレポートを少人数で急ごしらえしなければならない状況が発生した。GenAI.milを活用した担当者からは「ここ5年で最高のレポートが書けた」という声が届いたという(DefenseScoop取材より)。

AIエージェント10万体超の意味

今回の更新に先立つ数週間で、見逃せないデータが浮上している。

GenAI.milで提供されているAgent Designerを使い、10万体を超えるAIエージェントが構築された。Jacob Glassman国防次官補代理が2026年4月のBox Federal Summitで明らかにした。Agent Designerは専門的なコーディングスキルを必要とせず、自然言語でエージェントの動作を設定できるノーコードツールだ。構築されたエージェントはすべてIL5認証を取得しており、機微な非機密情報を扱う業務に適用できる。

Kliger氏は「以前はLLMがチャットインターフェースにすぎなかった。今は自律的にタスクを実行できるプラットフォームになっている」と語る。この動きは、生成AIを「使うツール」から「働かせるシステム」へと転換していく流れを示している。

今後の展開

2026年4月時点でのGenAI.milの状況:利用権を持つユーザーは300万人、アクティブユーザーは130万人超、構築済みのAIエージェント数は10万体以上に達している。

GoogleはGenAI.milへの独占パートナーではない。OpenAIのChatGPTとxAIのGrokも導入が計画されており、複数ベンダー戦略が進んでいる。

Kliger氏は「今取り組んでいることが、次の10年の基礎になる。中国との競争においても、Googleのようなフロンティアラボとの連携が国家安全保障に直結している」と語った。国防総省が生成AIを現場の業務基盤として本格稼働させている実態は、政府機関におけるAI活用の新しい基準となりつつある。