「取引先への請求書を作って」と入力するだけで、AIエージェントが取引先の登録から請求書の発行まで一連の作業を自動で完了する。2026年3月、クラウド会計ソフト「freee」を運営するフリーが公式MCPサーバー「freee-mcp」を公開し、SNSで異例の反響を呼んでいる。

この記事でわかること:

  • freee-mcpが何を自動化できるのか
  • 会計・人事労務・請求書など6種類のAPIへの対応内容
  • Remote MCPとローカルMCPの2つの接続方法
  • Agent Skillsを組み合わせて精度を高める仕組み
  • Claude Desktop・Claude Codeへの設定手順

https://github.com/freee/freee-mcp

freee-mcpとは

MCP(Model Context Protocol)とは、AIが外部サービスのデータやツールを安全に利用するための共通規格だ。freee-mcpはその規格に準拠したfreee公式のサーバーで、AIエージェントからfreeeの各種APIを直接呼び出せるようにする。

GitHubのリポジトリは2026年4月時点で423スターを獲得しており、最新バージョンはv0.25.4(2026年4月27日リリース)。Apache-2.0ライセンスのオープンソースとして公開されている。

AIに任せられる業務の範囲

freee-mcpがカバーするのは次の6つのAPIだ。

会計(32種類のスキル)は最も機能が充実している。取引の登録・取得、勘定科目・取引先の管理、請求書の作成、経費申請の処理など、日常的な経理業務の大半に対応する。「1年分の売上高の推移を分析して」と依頼すれば、レポートが自動で生成される。

人事労務(28種類のスキル)では、従業員情報の管理、勤怠データの取得、給与明細の確認、年末調整の処理が対象になる。

請求書(4種類のスキル)では請求書・見積書・納品書を扱える。工数管理(7種類)ではプロジェクトや工数の記録、販売(5種類)では案件・受注の管理が可能だ。さらにfreeeサイン(電子契約、8種類のスキル)では文書やテンプレート、印鑑の管理に対応している。

リリース直後、SNSでは公認会計士や税理士、経理担当者から「5人で実行していた作業を1人でこなせるようになった」「記帳がほぼ自動で完了した」という声が相次いだ。数百万インプレッションに達した投稿も出るなど、業界外にも広がった。

2通りの接続方法

Remote MCPで接続する(推奨)

freeeが提供するリモートサーバーに直接つなぐ方法で、ローカル環境のセットアップが不要なためすぐに使い始められる。

Claude Desktopでは「カスタマイズ」→「カスタムコネクタを追加」から以下を設定する。

  • 名前:freee
  • URL:https://mcp.freee.co.jp/mcp

設定後にfreeeアカウントでOAuth認証を行えば、Claude Desktopからfreeeを操作できるようになる。

ローカルでMCPサーバーを起動する

freeeアプリストアで自前のアプリを登録し、ローカルで動かす方法だ。コールバックURLに http://127.0.0.1:54321/callback を設定してClient IDとClient Secretを取得したうえで、次のコマンドを実行する。

npx freee-mcp configure

対話式ウィザードが認証情報の設定からOAuth認証、事業所の選択まで案内する。完了後、出力された設定をClaude Desktopの設定ファイルに追加すれば使えるようになる。

{
  "mcpServers": {
    "freee": {
      "command": "npx",
      "args": ["freee-mcp"]
    }
  }
}

Agent Skillsで精度を高める

freee-mcpにはMCPサーバーとは別に「Agent Skills」が用意されている。これはfreeeの各APIリファレンスと操作レシピをAIエージェントのコンテキストに注入し、正確なAPI呼び出しをガイドする仕組みだ。

Agent Skillsがない状態でもfreee-mcpは動作するが、スキルを追加することでAIが「どのエンドポイントをどのパラメータで呼べばよいか」を把握しやすくなる。請求書作成や経費精算など、複数のAPIを組み合わせる操作で精度が上がる。

Claude Codeへのインストールはプラグインコマンドで完結する。

claude plugin marketplace add freee/freee-mcp
claude plugin install freee-mcp@freee-mcp-marketplace

その他のエージェント(Cursor、Codexなど)では次のコマンドでスキルだけを追加できる。

npx skills add freee/freee-mcp

GitHub CLI(v2.90.0以降)でのインストールにも対応しており、MicrosoftのAgent Package Manager経由での配布も行われている。

データ作成のベストプラクティス

freee-mcpを使ってデータを新規作成する際は、過去データを参照してから依頼するとミスが少ない。たとえば請求書を作る場合、次のように頼むと取引先・品目・税区分が自動で引き継がれる。

先月の〇〇社への請求書を参考に、今月分を作成して

このパターンは経費精算や取引登録でも有効で、勘定科目や部門の指定ミスを防ぎやすい。

業界への影響

freee共同創業者の横路隆CAIOは「従来のSaaSは人が使いやすいことに価値があったが、これからはAIが正しく仕事をしてくれることが価値の源泉になる」と語っている。freee-mcpのリリースはこの設計思想の転換を具体的な形で示したものだ。

競合のマネーフォワードも同様のAIエージェント対応サービスを開始しており、日本の業務SaaSにおけるMCP対応の波は広がりつつある。freeeが長年APIファーストで設計してきたシステムが、AI時代に直接的な強みとして機能している。