会議の文字起こしや要約は、今や多くのツールが提供する機能になった。Otter.aiはその先を目指し、「会議を組織の知識にする」基盤として再設計を始めた。
2026年4月28日、Otter.aiは「Conversational Knowledge Engine(会話型ナレッジエンジン)」を発表した。MCPへの双方向対応、Otter AI Chatの刷新、Otter for Desktop(Mac・Windows)の3機能がそろってGA(一般提供)となった。
この記事でわかること:
- OtterがMCPクライアントとサーバーを同時対応した意味
- Gmail・Notion・SalesforceのデータをOtterで横断検索する方法
- ClaudeやChatGPTがOtterの会議履歴にアクセスできる仕組み
- Otter for Desktopで変わる録音の範囲
- ノーコードで使える新しいAI Chatの特徴
単なるノートツールから「知識の器」へ
Otter.aiは2015年ごろから会議録ツールとして普及し、現在3500万人のユーザーを持つ。しかし会議の文字起こし・要約だけでは差別化が難しくなっている。Read AI、Fireflies.ai、Fathomも同様の機能を揃えており、競合は増える一方だ。
同社CEOのSam Liang(共同創業者)はこう語る。「個別のミーティングメモは目的地ではなかった。目的地は、数千の会議と数千の人々を繋ぎ、そのデータを構造化・知能化・自律実行するシステムを作ることだ」
この方針転換を支えるのがMCPだ。
MCP双方向対応が変えること
MCP(Model Context Protocol)は、AIツールと外部データソースを共通の規格で繋ぐプロトコルで、2024年後半にAnthropicが公開して以来、急速に業界標準になっている。
Otterは今回、MCPをクライアントとサーバーの両側から実装した。
MCPクライアントとして(外部データを引き込む)
Otter AI Chatから、Gmail・Google Drive・Notion・Jira・Salesforceのデータを直接参照できるようになった。会議録だけでなく、メールのスレッドやドキュメント、CRMの顧客情報を横断して質問できる。近日中にMicrosoft Outlook、Teams、SharePoint、Slackへの対応も予定されている。
また、会議後に自動でNotionページへサマリーを書き込んだり、Gmailの下書きに議事録を送ったりといった「プッシュ操作」も可能になった。
MCPサーバーとして(外部AIからのアクセスを受け付ける)
AnthropicのClaudeやChatGPTなど、外部のAIツールがOtterに蓄積した会議履歴をコンテキストとして参照できる。たとえば「直近5件の商談内容を踏まえた提案書を作って」とClaudeに依頼すると、Otterの会議データを引き出して回答する、という使い方が実現する。
Metrigyのアナリスト、Irwin Lazar氏はNo Jitterへのコメントでこう述べている。「ノートアプリはMCP経由でデータをサードパーティモデルに開放せざるを得なくなる。AnthropicやMicrosoft、Googleなど各社は、社内の活動知識を改善するために会議のアーティファクトにアクセスしたいからだ」(参考)
刷新されたOtter AI Chat
Otter AI Chatはインターフェースを全面的に作り直した。
以前は会議ごとにチャットを開く形だったが、今回の刷新でプラットフォーム全体で常時表示されるUIになった。ChatGPTやClaudeと同じような感覚で使えるチャット形式で、見ている画面(特定の会議・チャンネル・全会話履歴)をコンテキストとして自動的に参照しながら回答する。
また、デフォルトでプライベートモードになったため、企業内での利用に安心できる設計になった。
Otter for Desktopで録音範囲が広がる
Otter for Desktopは、スケジュールされた会議だけでなく、あらゆる音声入力からリアルタイムに文字起こしを行うデスクトップアプリだ。
マイク・ヘッドフォン・Bluetoothデバイスなど任意の音声入力に対応しており、Zoom・Microsoft Teams・Google Meet・Slack Huddleなどを問わずキャプチャできる。「ボットが会議に参加する方式」ではなく、デバイスのオーディオ入力を使う仕組みのため、任意のアプリケーションから録音できる。
Macアプリは2025年末にリリース済みで、今回Windows版が新たに登場した。
なお、Otter CEOはTechCrunchのインタビューで「企業顧客の多くは、ボットが参加する透明性のある方式を好む。議事録が参加者全員と共有される点が好評だ」と語っており、ボット参加方式も引き続き提供される(参考)。ボット乱立を防ぐデデュプリケーション機能も実装済みだ。
料金と利用開始
今回発表した3機能はすべて一般提供(GA)が始まっており、Otter.aiのアカウントがあれば試せる。無料プランから有料のPro・Business・Enterpriseまで複数のプランがある。企業向け機能の一部はBusinessプラン以上が必要になる可能性があるため、公式サイトで確認すると確実だ。
まとめ
Otter.aiは「会議録ツール」から「組織の会話アーカイブ」へ役割を再定義しようとしている。MCP双方向対応によって、ClaudeやChatGPTなどのAIと会議データが繋がり、外部ツールとの往来も双方向になった。
会議ツールの差別化競争はデータの「活用できる範囲」へ移りつつある。Otterがこの転換で3500万ユーザーの会話資産をどこまでAIに繋げるか、注目される。

