CursorがIDEの枠を超えた。2026年4月29日、Cursor公式がTypeScript向けの「Cursor SDK」をパブリックベータとしてリリースしました。これまでエディタ内でしか動かせなかったAIコーディングエージェントを、数行のTypeScriptからプログラムで起動・制御できるようになります。

この記事でわかること:

  • Cursor SDKとは何か、何が変わるのか
  • ローカル・クラウド・セルフホストの3つの実行方式
  • コードサンプルで見る基本的な使い方
  • CI/CDやプロダクト組み込みなどの活用例
  • 料金体系と既存のCursorプランとの関係

Cursor SDKとは何か

https://cursor.com/blog/typescript-sdk

Cursor SDKは、Cursorのデスクトップアプリ・CLI・Webアプリで動いているエージェントランタイムに、外部のTypeScriptコードからアクセスするためのパッケージです。npmからインストールできます。

npm install @cursor/sdk

これまでCursorのAIエージェントを使うには、エディタのGUIかCLIを経由する必要がありました。SDKの公開により、CI/CDパイプライン、社内ツール、さらには自社プロダクトにCursorのエージェント機能を直接組み込めるようになります。

SDKを通じて起動したエージェントは、Cursorが内部で使っているのと同じ基盤を利用します。コードベースのインデックス作成、セマンティック検索、MCPサーバー接続、スキルの自動読み込み、フックによるエージェントループの拡張——これらすべてがSDK経由でも使えます。

3つの実行方式

Cursor SDKでは、エージェントの実行場所を3つから選べます。

ローカル実行は、自分のマシン上でエージェントを動かす方式です。高速なイテレーションに向いています。local: { cwd: process.cwd() } を指定するだけで、カレントディレクトリに対してエージェントが作業を始めます。

クラウド実行は、Cursorが提供する専用VMでエージェントを動かします。サンドボックス化された環境でリポジトリのクローンが自動的に作られ、開発環境のセットアップも済んだ状態で起動します。ノートPCがスリープしてもネットワークが切れても、エージェントは動き続けます。作業完了後にPRの作成やブランチのプッシュを自動で行う設定も可能です。

セルフホスト実行は、自社ネットワーク内のワーカーでエージェントを動かす方式です。コードや実行結果を社外に出したくないケースに対応します。

基本的な使い方

最小限のコードは以下のとおりです。

import { Agent } from "@cursor/sdk";

const agent = await Agent.create({
  apiKey: process.env.CURSOR_API_KEY!,
  model: { id: "composer-2" },
  local: { cwd: process.cwd() },
});

const run = await agent.send("Summarize what this repository does");

for await (const event of run.stream()) {
  console.log(event);
}

Agent.create でエージェントを生成し、send でプロンプトを渡します。レスポンスは stream() でストリーミング取得できます。モデルの指定は model.id フィールドを変えるだけで切り替え可能で、Cursorが対応しているすべてのモデルを使えます。

クラウド実行の場合は、local の代わりに cloud オプションを指定します。GitHubリポジトリのURLとブランチを渡すと、クラウドVM上でそのリポジトリに対してエージェントが作業します。autoCreatePR: true を設定すれば、完了時にPRが自動で作成されます。

Cursorハーネスの全機能が使える

SDK経由のエージェントでも、Cursorの内部ハーネスがそのまま利用できます。主な機能は以下のとおりです。

コンテキスト管理: コードベースのインデックスやセマンティック検索、instant grepでエージェントが効率的にコードを探索します。

MCPサーバー: .cursor/mcp.json で設定したMCPサーバーや、SDK呼び出し時にインラインで渡したMCPサーバーに接続できます。外部ツールやデータソースとの連携が可能です。

スキル: リポジトリの .cursor/skills/ ディレクトリに配置したスキルファイルを自動で読み込みます。

フック: .cursor/hooks.json でエージェントループの各段階に処理を挟めます。クラウド・セルフホスト・ローカルのすべてで動作します。

サブエージェント: メインのエージェントが Agent ツールを使ってサブエージェントを起動し、サブタスクを委任できます。サブエージェントごとに別のプロンプトやモデルを指定できます。

実際の活用例

すでにRippling、Notion、Faire、C3 AIといった企業がCursor SDKを使っています。

最も多いユースケースはCI/CDとの連携です。プルリクエストの変更内容を自動で要約したり、CIの失敗原因を特定して修正コードを含むPRを更新したりするエージェントが動いています。

社内ツールへの組み込みも進んでいます。エンジニア以外のチームがコードを書かずにプロダクトデータを検索できる社内アプリケーションの裏側で、Cursor SDKのエージェントが動いているケースがあります。

さらに踏み込んだ例として、自社の顧客向けプロダクトにCursorのエージェント機能を埋め込み、エンドユーザーがホストアプリケーションから離れずにAIエージェントを使えるようにしている企業もあります。

CursorはGitHubに公開リポジトリを用意しており、クイックスタート、プロトタイピングツール、カンバンボード、コーディングエージェントCLIの4つのサンプルプロジェクトをフォークして使えます。

料金体系

Cursor SDKの料金はトークン消費量ベースの従量課金です。既存のCursorのサブスクリプションプランとは別で、SDK経由のエージェント実行に対して標準のトークン消費料金がかかります。

Cursor自体のプランはPro+が月額60ドル、Ultraが月額200ドルです。SDKを本格的に使う場合は、エージェントの実行頻度とモデルの選択によって月額コストが変わります。コスト効率を重視するなら、Cursorが提供するComposer 2モデルが選択肢に入ります。汎用モデルと比べてコストを抑えつつ、コーディングタスクでは同等の性能を発揮するとCursorは説明しています。

IDEからプラットフォームへ

Cursor SDKの公開は、CursorがIDEベンダーからエージェント実行基盤のプラットフォーマーへ転換する動きの一環です。

これまでコーディングエージェントは、開発者個人がエディタ内で対話的に使うツールでした。SDKによってエージェントがプログラムから呼び出せるインフラになったことで、組織レベルでの自動化や、他社プロダクトへの組み込みという新しい用途が開けています。

同様のSDKは、AnthropicがClaude Code SDKとして、CognitionがDevin APIとしてすでに提供しています。CursorのSDKが差別化できるポイントは、コードベースのインデックスやMCPサーバー連携といったIDE由来のハーネス機能をそのまま外部から使える点です。エージェントの「頭脳」だけでなく「道具箱」ごと外部に開放した形になります。

Cursor SDKはパブリックベータとして全ユーザーに公開中です。TypeScript以外の言語対応や、より多くのワークフロー・デプロイパターンへの拡張を進めていくとCursorは表明しています。