ヒューマノイドロボットが研究室を出て、家庭に届く日が近づいています。OpenAI出資のノルウェー発スタートアップ1X Technologiesが、米カリフォルニア州ヘイワードに量産工場を開設しました。年間10万台体制を目指す同社の家庭用ロボット「NEO」は、2026年内の出荷開始を予定しています。

この記事でわかること

  • 1X Technologiesが開設したNEO工場の規模と生産体制
  • NEOの主要スペックと家庭での用途
  • 導入コストと購入方法
  • 他社ヒューマノイドとの違い

1X Technologiesとは

https://www.1x.tech/

1X Technologies(旧Halodi Robotics)はノルウェー発のロボティクス企業です。2023年にOpenAIのスタートアップファンドが主導するシリーズA2ラウンドで2,350万ドルを調達し、注目を集めました。その後、EQT Venturesが主導するシリーズBで1億ドルを追加調達。Samsung NEXT、Tiger Globalも出資しており、累計調達額は約1億3,700万ドルに達しています。

同社のミッションは、安全に人と共存できる汎用ヒューマノイドロボットの開発です。業務用ロボット「EVE」で得た知見を基盤に、家庭向けの「NEO」を開発しました。

NEO工場の規模と垂直統合モデル

https://www.humanoidsdaily.com/news/1x-goes-vertical-inside-the-hayward-factory-aiming-for-100-000-humanoids

2026年4月30日、1Xはカリフォルニア州ヘイワードに「NEO Factory」を開設したと発表しました。約5,400平方メートル(58,000平方フィート)の施設で、従業員200名以上が稼働しています。建設期間はわずか3カ月です。

最大の特徴は垂直統合型の生産体制です。モーター、バッテリー、腱駆動機構、センサーなど主要部品をすべて自社で製造しています。多くの競合がグローバルなサプライチェーンに依存する中、1Xは地政学リスクを回避しつつ品質管理を徹底する戦略を採りました。

独自開発の「Revo2モーター」はロボットの心臓部にあたるアクチュエータです。銅線の巻き取りからステーターの加工まで工場内で完結しており、すでに17,000基を製造しました。NEOの手は22自由度(DoF)を持ち、専用ポリマーの成型から触覚センサーの組み込みまで一貫生産しています。

初年度の生産能力は年間10,000台です。予約開始からわずか5日で初期生産分が完売したと1Xは発表しています。さらに、サンカルロスに建設中の第2工場が完成すれば、2027年末までに年間100,000台の体制を目指します。

CEOのBernt Børnich氏は「量産はプロトタイプ開発とはまったく別物だ。だから私たちは、マシンを作るマシンを構築した」と述べています。

NEOの主要スペック

https://www.1x.tech/discover/neo-home-robot

NEOは家庭環境に特化した設計です。身長167cm、体重30kgと人間に近いサイズで、動作音は22dBと冷蔵庫より静かです。

処理能力の中核を担うのが「NEO Cortex」です。NVIDIAのJetson Thor SoCを搭載し、2,070 TFLOPS(FP4)のAI推論性能を持ちます。安全制御、認識、推論をすべてローカルで処理するため、クラウド通信の遅延に左右されません。センサーには8.85メガピクセルのステレオフィッシュアイカメラ2基(90Hz)とビームフォーミングマイクを搭載しています。

身体能力も注目に値します。約68kg(150ポンド)の持ち上げと約25kg(55ポンド)の運搬が可能です。腱駆動アクチュエータ「Myofiber」により、人間の筋肉に近い滑らかな動きを実現しています。バッテリー容量は842Whで、約4時間の連続稼働と24分の急速充電に対応します。

安全面では、全身を3Dラティス構造のポリマーで覆い、挟み込みのリスクをゼロにしました。30kgという軽量設計も、万が一の接触時の衝撃を抑える効果があります。

AIと人間のハイブリッド運用

NEOのAI運用には「ヒューマン・イン・ザ・ループ」方式を採用しています。ロボットが自律処理できないタスクに遭遇した場合、訓練されたオペレーターがリモートで操作を引き継ぎます。

この仕組みは単なるフォールバックではありません。オペレーターの操作データがAIの学習データとして蓄積され、自律性が段階的に向上する設計です。1Xの工場内でもNEO自身が物流作業やパーツの補充を行っており、実環境でのデータ収集が進んでいます。

現在、量産ラインから出たNEOは従業員の家庭テストプログラムに優先的に投入されています。一般消費者への出荷前にハードウェアとソフトウェアの両面を磨き込む方針です。

導入コストと購入方法

NEOの価格は買い切りで20,000ドル(約300万円)、またはサブスクリプションで月額499ドル(約75,000円)です。公式サイトから予約を受け付けており、2026年内の出荷開始を予定しています。

家庭用ヒューマノイドとしては現実的な価格帯といえます。Tesla Optimus(目標価格2〜3万ドル)やFigureのロボット(価格未公表)と比較しても、月額制の選択肢がある点は個人ユーザーにとってハードルが低い設計です。

競合との違い

家庭用ヒューマノイド市場には、Tesla(Optimus)、Figure、Apptronik(Apollo)などが参入しています。1X NEOが差別化されるポイントは3つあります。

第一に、垂直統合による部品の内製化です。モーターからバッテリーまで自社工場で作ることで、品質とコストの両面を管理しています。第二に、腱駆動方式の採用です。剛体ギアを使わず柔軟な動きを実現しており、家庭内の安全性で優位に立ちます。第三に、ヒューマン・イン・ザ・ループによる段階的な自律化です。完全自律を前提とせず、人間の補助付きで実用レベルのサービスを早期に提供する戦略です。

一方、テレオペレーターの人件費がサブスクリプション価格にどう影響するか、自律化の進捗次第でサービス品質がどう変わるかは、今後の注目点です。

まとめ

1X Technologiesは、ヒューマノイドロボットを研究開発から量産フェーズへ移行させた数少ない企業の一つです。垂直統合の生産体制、NVIDIA Jetson Thorによるエッジ推論、そして人間とAIのハイブリッド運用という3つの柱で、2026年内の消費者向け出荷を目指しています。年間10万台という目標が実現すれば、ロボットが家庭に普及する転換点になる可能性があります。