MicrosoftがPostgreSQLの新サービスを本格投入しました。Amazon AuroraやGoogle AlloyDBに対抗する「Azure HorizonDB」は、AI時代のデータベースとして注目を集めています。

この記事でわかること:

  • Azure HorizonDBの特徴と従来のPostgreSQLとの違い
  • DiskANNベクトルインデックスによるAI検索の仕組み
  • AuroraやAlloyDBとの位置づけの違い

Azure HorizonDBとは

https://azure.microsoft.com/en-us/products/horizondb

Azure HorizonDBは、Microsoftが2025年11月のIgniteで発表したクラウドネイティブなPostgreSQL互換データベースサービスです。コンピュートとストレージを分離した設計を採用し、大規模ワークロードに対応します。

従来のAzure Database for PostgreSQLとは異なり、ゼロから構築された新しいアーキテクチャが特徴です。ストレージは最大128TBまで自動拡張し、コンピュートはプライマリとレプリカノードを合わせて最大3,072 vCoreまでスケールアウトします。

従来のPostgreSQLと何が違うのか

HorizonDBの核心は「分離アーキテクチャ」です。従来のPostgreSQLではコンピュートとストレージが同一ノードに結合されており、スケールアップが唯一の拡張手段でした。HorizonDBはストレージを共有レイヤーとして独立させることで、コンピュートだけを必要に応じて増減できます。

この設計により、マルチゾーンでのコミットレイテンシがサブミリ秒に抑えられます。Microsoftの公式発表では、トランザクションワークロードにおいてオープンソースPostgreSQLの最大3倍のスループットを実現するとしています。

AI特化の2つの機能

HorizonDBが競合と差別化を図る最大のポイントはAI機能の統合です。

DiskANNベクトルインデックス

多くのPostgreSQLベースのサービスがpgvector拡張のHNSWインデックスに頼る中、HorizonDBはMicrosoft Researchが開発したDiskANNをネイティブ統合しています。最大の特徴は「フィルタ述語のプッシュダウン」です。

通常のベクトル検索では、類似度検索を実行した後にWHERE句でフィルタリングします。HorizonDBのDiskANNでは、フィルタ条件をベクトル検索の内部に組み込めるため、不要な結果を早期に排除します。Microsoftのベンチマークでは、フィルタ選択性に応じてクエリレイテンシが最大3分の1に短縮されるとしています。

この仕組みは、ECサイトの商品検索やRAG(検索拡張生成)で「カテゴリ+類似度」のような複合条件を高速処理する際に威力を発揮します。

ビルトインAIモデル管理

2つ目の機能は、Azure AI Foundryの生成・埋め込み・リランキングモデルをデータベース内から直接呼び出せる仕組みです。設定不要で、SQLクエリの中からモデルを実行できます。

従来はアプリケーション側でAPIを叩いてベクトル化し、その結果をDBに格納する必要がありました。HorizonDBではその処理をDB内で完結させるため、データ移動のオーバーヘッドがなくなります。

AuroraやAlloyDBとの違い

クラウドネイティブなPostgreSQLサービスは3大クラウドが揃い踏みしています。

Amazon Auroraは2014年に登場し、分離アーキテクチャの先駆者です。11年以上の稼働実績があり、Serverless v2による自動スケーリングや15リードレプリカのサポートなど、成熟したエコシステムを持ちます。ベクトル検索にはpgvectorを利用します。

Google AlloyDBは分析性能に強みがあり、カラムナエンジンにより標準PostgreSQLの100倍高速な分析クエリを実現すると公称しています。ベクトル検索にはScaNN拡張を使います。

HorizonDBの独自性は、ベクトルインデックスとAIモデル管理をDB層にネイティブ統合した点です。pgvectorやScaNNが「拡張機能」として後付けされるのに対し、HorizonDBではAI機能がアーキテクチャの一部として設計されています。

現在のステータスと利用方法

HorizonDBは現在プライベートプレビュー段階です。利用可能なリージョンはCentral US、West US3、UK South、Australia Eastの4つに限定されています。料金体系は未公開で、一般提供(GA)の時期も発表されていません。

プレビューへの参加申請はMicrosoftの公式ページ(aka.ms/PreviewHorizonDB)から行えます。

なお、MicrosoftはPostgreSQL本体への貢献にも注力しており、社内に19名のPostgreSQLプロジェクトコントリビューターを擁しています。2026年リリース予定のPostgreSQL 19への貢献も進行中です。

開発者向けツールとの連携

HorizonDBの発表と同時に、VS Code向けPostgreSQL拡張のGA(一般提供)も発表されました。この拡張ではGitHub CopilotがPostgreSQLデータベースのコンテキストを認識するため、スキーマやテーブル構造を踏まえた高精度なコード補完が得られます。

パフォーマンス監視ダッシュボードからワンクリックでGitHub Copilotのエージェントモードを起動し、パフォーマンス問題の診断と解決策の提示まで一貫して行える点も特徴です。

まとめ

Azure HorizonDBは、AIワークロードを前提に設計されたクラウドネイティブPostgreSQLです。DiskANNのフィルタ述語プッシュダウンやビルトインモデル管理は、RAGやベクトル検索を多用するアプリケーション開発者にとって魅力的な機能です。

プレビュー段階のためプロダクション利用には時期尚早ですが、AIアプリケーションのデータ層を検討している開発者は動向を追う価値があります。