AIエージェントを複数動かすほど、「誰がどれを承認したのか」「どのエージェントがどのデータに触れたか」が見えなくなる。

GoogleはGoogle Cloud Next ’26で、この問題に正面から向き合うGemini Enterprise appの大幅な機能追加を発表しました。エージェントの発見・作成・協業・統制を一つの画面で完結させる仕組みが整い、企業がAIエージェントを点ではなく面で管理するための基盤が形になっています。

この記事でわかること

  • エージェントを探して使い始めるAgent Gallery/Marketplaceの仕組み
  • ノーコードでエージェントを作るAgent Designerの使い方
  • チームとエージェントがリアルタイムで協業するProjectsとCanvas
  • Agent Identity・A2A・カスタムMCPサーバーによるガバナンス強化

https://cloud.google.com/gemini-enterprise/agents

Gemini Enterprise appは、企業内のAIエージェントを一元管理するGoogleのプラットフォームです。Google製エージェント(Deep Research、Data Insights、NotebookLM Enterpriseなど)、社内で独自に開発したエージェント、パートナー企業が提供するエージェントの3種類を、1つのコントロールプレーンから管理できます。

2026年4月〜5月にかけて、4つの領域で機能が更新されました。

エージェントを探して使い始めるAgent Gallery

エージェントの発見・管理の拠点となるAgent Galleryが一般提供(GA)に移行しました。

社員がAgent Galleryにアクセスすると、Google製エージェント・社内開発エージェント・パートナー製エージェントを自然言語で検索できます。業種や用途でフィルタリングする機能も備わっており、「Gemini Enterprise互換」などの検証バッジも確認できます。

管理者はAgent Galleryに表示するエージェントの可視性を制御できます。パートナー製エージェントへのアクセスリクエストも管理者が承認する仕組みになっており、全社員が任意のエージェントを無制限に使える状態を避けられます。

Agent Galleryから利用できる選択肢の一つがAgent Marketplaceです。Adobe、Atlassian、Salesforce、ServiceNow、Workdayなど70以上のパートナーが開発したエージェントを、追加の開発なしに社内導入できます。Googleはこのパートナーエコシステムの拡充に向けて7億5,000万ドルのイノベーションファンドを設けています。

ノーコードでエージェントを作るAgent Designer

すべてのエージェントを外部から調達するだけでなく、社員が自分でエージェントを作れる仕組みも加わりました。

Agent DesignerはコードなしでAIエージェントを定義するツールです。スケジュールや外部システムのイベントをトリガーにしたエージェントを、フローチャート形式の画面で設計できます。

このツールの設計上の特徴は、生成AIの柔軟な判断と決定論的なビジネスロジック(条件分岐・承認フロー・SLAなど)を明示的に組み合わせられる点にあります。「AIに任せる部分」と「必ずルールに従わせる部分」を分けて設計できるため、金融や医療など厳格な運用基準が求められる現場でも導入しやすくなっています。

技術チームが独自エージェントを開発したい場合は、Agent Development Kit(ADK)を使ってVertex AI Agent Engine上に構築し、Gemini Enterprise appに登録して管理できます。

チームとエージェントがリアルタイムで協業するProjects

個人でAIを使う段階から、チームとエージェントが一緒に作業する段階へ移行するための機能として、ProjectsとCanvasが追加されました。

Projectsは、人間とエージェントが同じワークスペースを共有する仕組みです。チームメンバーとエージェントが同時にドキュメントやスライドを編集でき、会話しながら作業を進められます。従来はAIツールと業務アプリを行き来する必要がありましたが、Projectsに統合されたCanvasエディタで作業が完結します。

エージェントが長時間かけて実行する複雑なタスク(調査・分析・レポート作成など)は、Inboxで状況を確認しながら管理できます。エージェントが途中で判断を求めてきた際も、Inboxから返答して作業を続けさせられます。

ガバナンスと統制を支える3つの機能

エージェントの数が増えるにつれて重要になるのが、「どのエージェントが何をしているか」を把握・制御する仕組みです。Gemini Enterprise appはこの課題に3つの機能で対応しています。

Agent Identityでは、登録された各エージェントにSPIFFE ID(セキュアなサービス認証の標準識別子)が割り当てられます(2026年4月21日よりパブリックプレビュー)。IDを持つエージェントは追跡可能になり、どのエージェントがどの操作を実行したかを監査ログで確認できます。

Agent2Agent(A2A)プロトコルへの対応も同時に追加されました。A2Aはエージェント同士が連携するためのオープン標準で、Gemini Enterprise上のエージェントと外部プラットフォームで動くエージェントが相互に通信できます。特定のベンダーに依存しないエージェント間連携が実現します。

カスタムMCPサーバー接続(2026年4月28日よりパブリックプレビュー)では、企業が独自に立てたMCPサーバーをGemini Enterpriseに接続できます。社内のプライベートデータや内製ツールを、外部へデータを送信せずにエージェントから参照させる仕組みです。デフォルトでは無効になっており、管理者が明示的に有効化する必要があります。

始め方と料金

https://cloud.google.com/gemini-enterprise/agents

Gemini Enterprise appは30日間の無料トライアルで試せます。

Agent Gallery(GA)とAgent Designer(GA)はすべてのエディションで利用できます。Agent Marketplace経由のパートナーエージェント、ADKエージェントの登録・管理、A2Aプロトコル対応などは、StandardおよびPlusエディションが対象です。

Agent IdentityとカスタムMCPサーバー接続は現在パブリックプレビュー段階です。本番環境での利用に際しては、SLAの扱いと組織ポリシーの設定を事前に確認してください。

まとめ

Gemini Enterprise appに加わった今回の変化は、企業がAIエージェントを「試す」段階から「組織として運用する」段階に移るための仕組みを整えています。70以上のパートナーエージェントを使えるAgent Marketplace、コード不要で作れるAgent Designer、チームとエージェントが共同作業するProjects、そして追跡・制御・外部連携を支えるガバナンス機能。これらが揃ったことで、Gemini Enterprise appは「AIアシスタント集合体」から「エージェントを動かすインフラ」へと性格が変わりました。