AIエージェントがWebを使うには、ブラウザが必要です。しかし「ブラウザをどう管理するか」「エージェントが詰まったときどうするか」「何をしているか見えない」——この3つの壁が、自律型エージェントの実用化を阻んでいました。
Cloudflareは2026年4月15日、「Browser Rendering」を「Browser Run」に改名し、AIエージェント向けに特化した6つの新機能を追加しました。Live View、Human in the Loop、CDP直接接続、MCP対応、WebMCP、セッション録画——これらが揃ったことで、エージェントによるブラウジングが実用レベルに達しています。
この記事でわかること:
- Browser RunがBrowser Renderingから何を変えたか
- Live ViewとHuman in the Loopによる人間介入の仕組み
- MCP ClientとWebMCPで何ができるか
- /crawl endpointとSession Recordingsの使い方
- 料金の詳細と無料枠でできる範囲
https://blog.cloudflare.com/browser-run-for-ai-agents/
「Browser Rendering」から「Browser Run」へ
Cloudflareは以前から「Browser Rendering」というサービスでヘッドレスブラウザ(画面なしのChrome)を提供していました。スクリーンショット取得、PDF生成、マークダウン抽出といった用途に使われてきた機能です。
改名の理由はシンプルです。Browser Renderingという名前は「レンダリング(描画)」という静的な処理を連想させ、実際にやっていること——エージェントがブラウザを動かしてWebを操作するという動的な用途——が伝わらなかった。
Browser Runでは、この「エージェントがブラウザを走らせる」用途に正面から向き合った設計になっています。
エージェントが今、何をしているかが見える:Live View
最初の問題は「見えない」ことでした。エージェントがブラウザを動かしていても、何が起きているかわからない。失敗したときも、なぜ失敗したのか原因をつかむのが難しかった。
Live Viewは、エージェントのブラウザセッションをリアルタイムで見られる機能です。ページの内容だけでなく、DOM・コンソール・ネットワークリクエストまで確認できます。ログインページが出ている、CAPTCHAが表示されている、期待していたボタンがない——こうした状況を即座に把握できます。
CloudflareダッシュボードのBrowser Runセクション「Live Sessions」タブから、実行中のセッションをクリックするだけでアクセスできます。
エージェントが詰まったときに人間が入れる:Human in the Loop
エージェントが苦手な場面があります。ログイン、CAPTCHA、想定外の確認画面。こういうときに自動化が止まってしまうと、最初からやり直しになります。
Human in the Loopは、エージェントが詰まった瞬間に人間が介入し、その場で操作して、終わったらエージェントに制御を戻せる仕組みです。今はLive ViewのURLを開いて手動で操作する形で利用できます。今後は、エージェント自身が「助けが必要」とシグナルを出し、人間に通知を飛ばして引き継ぐフローも追加予定です。
あらゆるエージェントから接続できる:CDP Endpoint
以前のBrowser Renderingは、CloudflareのWorkersから使うことが前提でした。Browser RunではChrome DevTools Protocol(CDP)のエンドポイントを直接公開しています。
CDPはブラウザ自動化の標準プロトコルです。PuppeteerやPlaywrightも内部ではCDPを使っており、既存のCDP自動化スクリプトがあれば、接続先のWebSocket URLを変えるだけでBrowser Runに移行できます。
// Before: セルフホストのChromeに接続
const browser = await puppeteer.connect({
browserWSEndpoint: 'ws://localhost:9222/devtools/browser'
});
// After: Browser Runに接続(1行の変更)
const browser = await puppeteer.connect({
browserWSEndpoint: 'wss://api.cloudflare.com/client/v4/accounts/<ACCOUNT_ID>/browser-rendering/devtools/browser',
headers: { 'Authorization': 'Bearer <API_TOKEN>' }
});
Workers不要で、任意の言語・環境から接続できる点が特徴です。
Claude DesktopやCursorのリモートブラウザとして使える:MCP Client対応
CDPエンドポイントの公開により、Claude Desktop・Cursor・Codex・OpenCodeといったMCPクライアントが、Browser Runをリモートブラウザとして使えるようになりました。
Chromeチームが公開しているchrome-devtools-mcpパッケージを経由して接続します。Claude Desktopの設定例は次のとおりです。
{
"mcpServers": {
"browser-rendering": {
"command": "npx",
"args": [
"-y",
"chrome-devtools-mcp@latest",
"--wsEndpoint=wss://api.cloudflare.com/client/v4/accounts/<ACCOUNT_ID>/browser-rendering/devtools/browser?keep_alive=600000",
"--wsHeaders={\"Authorization\":\"Bearer <API_TOKEN>\"}"
]
}
}
}
サイト側がエージェント向けAPIを宣言する:WebMCP対応
エージェントがWebサイトを操作するとき、UIを見てボタンを特定し、クリックし、結果を確認するというループを繰り返します。UIの変更でこのループが壊れる問題が常にあります。
WebMCPは、GoogleのChromeチームが開発した新しいブラウザAPIです(Chromium 146以降)。サイト側がエージェント向けに使えるツールを宣言しておけば、エージェントはUIを解析しなくてもそのツールを直接呼び出せます。
例えば、旅行予約サイトがsearch_flights(出発地, 目的地, 日付)というツールを宣言していれば、エージェントはスクリーンショットを取って解析する手間なしに直接検索できます。Browser RunはWebMCP対応ブラウザのプールを試験的に提供しており、wrangler browser create --labコマンドで利用できます。
セッションをすべて記録して再生する:Session Recordings
Live Viewはリアルタイムの監視ですが、すべてのセッションを張り付いて見ることはできません。Session Recordingsは、ブラウザセッションをDOM変化・マウスとキーボード操作・ページ遷移の形で記録し、後から再生できる機能です。
ブラウザ起動時にrecording: trueを渡すだけで有効になります。セッション終了後、CloudflareダッシュボードのRunsタブまたはAPIから録画を取得し、rrweb-playerで再生できます。
同時接続数が4倍に:120ブラウザ並列
並列で動かせるブラウザ数がデフォルト30から120に増えました。プールには起動済みのブラウザが常に待機しているため、コールドスタートの待ち時間はほぼ発生しません。さらに高い同時接続数が必要な場合はリクエストで対応しています。
サイト全体を一括クロールする:/crawl endpoint
単一ページの操作ではなく、サイト全体を収集したい場合向けの機能も追加されています。/crawlは開始URLを渡すだけで、ページを自動探索してHTML・Markdown・構造化JSONで返すAPIです。クロール深度の指定や変更のないページのスキップも設定できます。
robots.txtとAI Crawl Controlを遵守する設計で、Cloudflareのbot検出をバイパスしません。
料金
Workers FreeとWorkers Paidの両方で利用できます。
| Workers Free | Workers Paid | |
|---|---|---|
| ブラウザ時間 | 10分/日 | 月10時間 + 超過分$0.09/時間 |
| 同時接続(Browser Sessions) | 3ブラウザ | 月平均10ブラウザ + 超過分$2/ブラウザ |
Quick Actions(スクリーンショット、PDF、マークダウン取得)はブラウザ時間のみの課金です。Browser Sessions(Puppeteer、Playwright、CDP)はブラウザ時間と同時接続数の両方が課金対象になります。
Workers Paidで50時間のBrowser Sessionsを使い、15日間は10ブラウザ・残り15日間は20ブラウザで動かした場合、月額$13.60が目安です。
使い始めるには
既存のBrowser Renderingユーザーは何も変更不要です。同じAPIが引き続き動作します。新規利用はWorkersダッシュボードのBrowser RunセクションまたはCloudflare Workers Free/Paidプランで今すぐ始められます。