ネットワーク担当チームは縮小しているのに、管理すべき機器は増え続けている。そんな現場の矛盾を解消しようと、Extreme Networksが2026年5月5日に発表したのが自律型AIエージェント「Extreme Agent ONE」です。
この記事でわかること:
- 従来のコパイロット型AIと何が違うのか
- CoworkerとOperatorという2つのモードの機能と提供時期
- スキルマーケットプレイス「Extreme Exchange」の概要
なぜ今、プロンプト不要のAIが求められるのか
従来のネットワーク管理AIは「聞かれたら答える」設計でした。管理者がプロンプトを入力し、AIが回答する——コパイロット型と呼ばれるこの形式は、多くのベンダーがいまも採用しています。
しかし現場はその速度に合っていません。ネットワークはより大規模になり、接続デバイスは増え続け、ビジネスへの依存度は高まっています。Extremeの顧客調査では、93%がAI対応ネットワーキングへの信頼を示し、57%が「数週間以内に成果を期待している」と回答しています。
待ち続けるAIでは間に合わない状況が、エンタープライズの現場で広がっています。
Extreme Agent ONEとは
Extreme Agent ONE は、Extreme Networks(NASDAQ: EXTR)が年次カンファレンス「Extreme Connect 26」で発表したエンタープライズネットワーク向けのAIエージェントです。同社が「Extreme Platform ONE」として展開するクラウド管理プラットフォームの一部として提供されます。
AIスタックと呼ばれる4層の構造を基盤にしており、各層が分担して自律的な動作を実現します。
- AIインフラ層: 推論機能を担います。先進的なAIモデルを使い、継続的に精度を向上させます
- AIコア層: リアルタイムのコンテキストを提供します。ユーザー・デバイス・ポリシーの状態を常に把握します
- スキル層: ベストプラクティスを実行可能なワークフローとして蓄積します
- エージェント層: ガバナンスルールの範囲内で分析・判断・実行を自律的に処理します
この4層の上に、企業のルールへの準拠を保証するガバナンスのしくみが加わります。
Agent ONE Coworker:プロンプトなしで動くAIアシスタント
2026年Q3(7月予定)に最初にリリースされるのが「Agent ONE Coworker」です。ITチームと並走する形で動作します。
最大の特徴は、呼ばれなくても先に動く点です。Coworkerはネットワークを常時監視し、異常の兆候を検知した時点でアクションを起こします。中核機能の一つが「Nudge(ナッジ)」で、状況に応じた提案を自発的に届けます。
具体的な使用例として、学校のWi-Fiが混雑し始めた際に修正案を提案・自動適用するケースや、小売店でピーク時間帯のPOS端末の遅延パターンを検知してトラフィックの優先度変更を推奨するケースが挙げられています。
その他の主な機能:
- ネットワークデータや設定ドキュメントへの会話形式でのアクセス
- サポートケースの作成から解決までのワークフロー自動化
- ライブデータを元にしたリアルタイムダッシュボードのオンデマンド生成
- AI主導のWi-Fi最適化
Agent ONE Operator:人が離れていても動き続けるエージェント
2026年Q4に登場するのが「Agent ONE Operator」です。Coworkerよりさらに高い自律性を持ちます。
Operatorはガバナンスの範囲内でタスクを独立して実行し、リアルタイムのイベントに対応しながらスケジュールされたワークフローも並行して処理します。IT担当者が画面から離れている間も、ネットワークの監視・最適化・改善を止めません。各インタラクションから継続的に学習するため、使い続けるほど精度が上がる設計です。
Extreme Networksはこれを「アシスタント型AIから常時稼働型AIへの転換」と位置づけています。
Extreme Exchange:スキルを追加するマーケットプレイス
Agent ONE Operatorの機能を拡張するしくみとして、「Extreme Exchange」も同時に発表されました。Extreme Platform ONE向けのAIスキルマーケットプレイスです。
医療・教育・小売・製造といった業種に特化したスキルを配信するほか、IT管理ツール、セキュリティ、オブザーバビリティ、クラウドプラットフォームとの統合にも対応しています。Extremeが提供するファーストパーティスキルとパートナー開発のスキルを利用できます。将来的には顧客が独自スキルを作成・公開できる機能も追加される予定です。
コパイロットとの違い
ZK ResearchのアナリストであるZeus Kerravala氏は、今回の発表を「多くのベンダーがいまもAIをコパイロットとして提供している中、Extremeは推論・コンテキスト・実行をネットワーク自体に組み込む別の道を歩んでいる。真の自律インフラへの明確な一歩だ」と評価しています(参考)。
コパイロット型との最大の違いは、AIが「受け身」か「能動的」かです。コパイロットはプロンプトを待ちますが、Agent ONEは問題が起きる前に動きます。ガバナンス層を設けている点も特徴で、AIが過度に自律しないよう企業のルールを常に参照する設計になっています。
提供時期と対象
Agent ONE CoworkerはExtreme Platform ONEの一部として2026年Q3に提供開始。Agent ONE OperatorはQ4に続きます。対象はExtremeのネットワーク機器とクラウド管理プラットフォームを利用している企業です。
ネットワーク運用をAIに任せる範囲をどこまで広げるか、判断の参考にしてください。