ゲーム中に話しかけるだけでヒントをくれるAI——Microsoftのその試みは、約14か月で幕を閉じた。

2026年5月5日、Xbox CEO の Asha Sharma はXへの投稿で、Xboxモバイルアプリ上のCopilotを段階的に終了し、コンソール向けの開発も停止すると発表した。

この記事でわかること:

  • Gaming Copilotがどんな機能だったか
  • 廃止に至った理由と新CEOの考え方
  • Sharmaが目指す「AIの正しい使い方」とは何か

Gaming Copilotとは何だったか

https://www.geekwire.com/2026/microsofts-new-xbox-chief-nixes-gaming-copilot-for-mobile-and-console-shakes-up-leadership/

MicrosoftがGaming Copilotを初めて公開したのは、2025年3月のGame Developers Conference(GDC)だ。「ゲームのAIサイドキック」として位置づけられ、プレイ中にヒントを提示したり、中断前の続きを要約したり、実績の進捗を確認したりできる音声AIアシスタントとして設計された。

2025年5月にXboxモバイルアプリとWindows 11でベータ版の展開を開始。同年10月にはROG Xbox Allyハンドヘルドにも広がった。コンソール(Xbox Series X/S)への本格展開は2026年を予定していたが、正式リリースには至らなかった。発表から廃止までの期間は約14か月だ。

なぜ廃止されたか

Sharmaは4月30日のXへの投稿で、Xboxは「リアルタイムグラフィックスの向上」「コンテンツの発見性改善」「パーソナライゼーションの深化」にAIを再集中させると表明していた。チャットボット型のCopilotはこの方針に合わなかった。

「私たちの進む方向と合わない機能を段階的に退場させる」──Sharmaの廃止発表文はその位置づけを明確にしている。

Gaming Copilotに対しては、発表当初から「問題のない場所に解決策を置いている」と冷ややかに見る向きがあった。ゲームの攻略情報を提供するためにネット上のガイド記事を無断で取り込んでいた点も問題視されており、GeekWireは「自分の蒔いた種を食べている」と表現している(参考)。

「正しいAI活用」の具体例:Auto SR

Sharmaが対比として挙げたのが「Automatic Super Resolution(Auto SR)」だ。OSレベルでNPUを使って動作する超解像技術で、ゲームのフレームレートと画質を同時に底上げする。プレイヤーが意識しなくても効いている「裏方のAI」だ。

NPUで処理するためGPUへの負荷はゼロに抑えられる。2026年4月30日にXbox Insiders向けのプレビュー版が公開され、Forza Horizon 5での動作が確認されている。

「ユーザーが気づかないところで体験を改善する」——これがSharmaのAI方針の核心だ。

経営再建とセットで動く

今回の廃止は、Sharmaが2026年2月にXbox CEOに就任して以降の一連の施策の延長線上にある。前任のPhil Spencerが38年間のMicrosoft勤務を経て退職後、SharmaはMicrosoftのCoreAI部門のトップからXbox部門のトップへ転身した人物だ。

就任後は矢継ぎ早に動いている。Game Passの価格引き下げ、「Microsoft Gaming」から「Xbox」への名称回帰、成功指標をゲームソフトの売上からデイリーアクティブプレイヤー数に変更——Copilot廃止もその流れだ。

リーダーシップの刷新も並行して進んでいる。CoreAIからエンジニアリング・設計・グロース・インフラの各分野に新幹部4名を迎え入れた一方、20年以上のキャリアを持つ古参幹部2名が退任した。ゲーミング収益は直近四半期で53億ドルと前年同期の57億ドルから減少。過去6四半期中4四半期で前年割れが続いており、ハードウェア収益は33%落ち込んでいる。「スピードを上げる」と繰り返すSharmaの言葉の背景に、この数字がある。

Gaming Copilotの終了は、AIを製品に無理やり組み込んできた時代への一つの反省として読める。ゲームAIの評価軸が「何ができるか」から「邪魔にならず役立っているか」に移る。その転換点を示した撤退だ。