Vertex AIが動きました。企業のAIエージェント管理が根本から変わります。

Googleは2026年4月23日、Vertex AIを進化させた「Gemini Enterprise Agent Platform」を正式公開しました。エージェントを作るだけでなく、スケールさせる・ガバナンスを効かせる・継続的に最適化するという4つの柱を持つ統合基盤です。

この記事でわかること:

  • Vertex AIから何が変わったか
  • Build/Scale/Govern/Optimizeの4機能柱の内容
  • Agent Registry・Identity・Gatewayのガバナンス3機能の役割
  • 対応する200以上のモデルの種類
  • ComcastやPayPalなど大手企業での導入例

Vertex AIからの進化点

Vertex AIが「モデルを呼び出す場所」だったとすれば、Gemini Enterprise Agent Platformは「エージェントを組織内で安全に動かし続けるための場所」です。今後はVertex AIのすべてのサービスとロードマップがこのAgent Platform経由で提供されます。

変化の背景は明確です。生成AIが個人利用から業務利用へ移行するにつれ、複数のエージェントが同時に社内システムを横断して動く状況が生まれました。セキュリティポリシーが適用されているか、どのエージェントが承認済みか、異常な動作はないかを把握する仕組みがなければ、エージェントは統制不能なリスクになります。

構築から最適化まで4つの柱

Build(構築)

ローコードのAgent Studioと、コードファーストなAgent Development Kit(ADK)の2つのアプローチを用意します。ADKはグラフ型のマルチエージェント構成に対応し、毎月Geminiモデルで6兆トークンを処理する実績があります。テンプレート集「Agent Garden」にはコード分析・請求書処理・財務分析などのひな型が入っており、すぐに試せます。

Scale(スケール)

再設計されたAgent Runtimeはコールドスタートをサブ秒に短縮し、数秒でエージェントのプロビジョニングを完了できます。複数日にわたる長時間ワークフローも動かせるため、長期の顧客育成シーケンスや深い推論を要するタスクにも対応します。Agent Memory Bankは会話から記憶を動的に生成し、低レイテンシで正確なコンテキストを保持します。

Govern(ガバナンス)

エージェントが組織内に増えるほど浮かぶ問題に答える3つの機能を追加しました。後のセクションで詳しく見ます。

Optimize(最適化)

Agent Simulationで合成ユーザーとの対話をデプロイ前にテストできます。本番後はAgent Observabilityが推論の全トレースを可視化し、Agent Optimizerが実際の失敗を自動でクラスタリングしてシステム指示の改善案を提示します。

ガバナンスを担う3機能

Agent Identity: 各エージェントに暗号化された一意のIDを付与します。すべての行動が監査可能な形で追跡でき、認可ポリシーに紐づけて管理されます。

Agent Registry: 社内のすべてのエージェント・ツール・スキルを一元管理する情報源です。承認済みの資産だけを利用できる状態に保ち、組織内でのエージェントの検索性とガバナンスを両立させます。

Agent Gateway: エージェントとツール間のセキュアな接続を一元管理する制御点です。Model Armorによってプロンプトインジェクションやデータ漏洩への保護が組み込まれています。

この3機能が連動することで、「誰が承認したエージェントなのか」「何をしているのか」「不審な挙動はないか」をリアルタイムで把握できる体制が整います。

200以上のモデルに対応

Model Gardenを通じて200以上のモデルを使えます。ファーストパーティの選択肢はGemini 3.1 Pro・Gemini 3.1 Flash Image・Lyria 3・Gemma 4など。AnthropicのClaude Opus・Sonnet・Haikuをはじめ、MetaやMistralのサードパーティモデルも選べます。

大手企業での導入事例

Comcastはかつてスクリプトベースだったサポートbotを、ADKで対話型の生成AIエージェントへ刷新しました。初回解決率が上がり、繰り返しの問い合わせが減ったと報告しています。

PayPalはAgent RuntimeとAgent Payment Protocol(AP2)で、決済に特化したエージェント基盤を構築しています。コンプライアンスが厳しい金融領域でも、決定的なフロー(特定の手順を外れない処理)と生成的なフロー(状況対応型の処理)を使い分けながら本番運用しています。

がん医療のColor HealthはADKとAgent Runtimeで仮想がんクリニックを運営し、乳がんスクリーニングの受診率を高めています。医療のような高感度領域でも、エージェントが予約取り次ぎから適格性判断まで担える実例です。

エージェントが増えた後の課題にこたえる

多くの組織は、エージェントを動かすこと自体よりも、増えたエージェントを管理することに詰まっています。Gemini Enterprise Agent PlatformのGovern機能は、その局面に照準を合わせています。Vertex AIから移行を検討している企業、またはエージェントのガバナンス体制を整えたい企業にとっては具体的な選択肢になります。

Google Cloudのコンソールから今すぐアクセスでき、Gemini Enterprise Business Editionが導入の窓口になっています。