AIエージェントがAPIを呼び出すたびに、アカウント登録、APIキーの管理、サブスクリプション契約を求められる。これはエージェントが自律的に動くことを前提とした設計ではない。Solana FoundationとGoogle Cloudが2026年5月5日に共同発表した「pay.sh」は、その問題を解消するAPIゲートウェイだ。AIエージェントがSolanaのウォレットだけを使って、アカウントなし・APIキーなしでAPIを従量課金で呼び出せる仕組みを提供する。

この記事でわかること:

  • pay.sh が解決するAIエージェントとAPIの摩擦
  • x402プロトコルの仕組みと役割
  • 対応するAPIカタログの内容(72サービス)
  • CLIのインストールから初回リクエストまでの手順
  • Claude CodeやCodexとの連携方法

https://pay.sh/

エージェントが壁にぶつかる理由

現在のAPIは「人間が使う」ことを前提に設計されている。利用開始にはメールアドレスで会員登録し、クレジットカードを登録し、APIキーを発行して環境変数に設定する、という手順が必要だ。

Claude CodeやOpenClaw、Codexといったエージェントが自律的にタスクをこなすとき、この手順が大きな障壁になる。エージェント自身はWebフォームを操作できず、メールで確認コードを受け取ることもできない。結果として、APIを使うたびに人間の介入が必要になる。

pay.sh はこの摩擦を取り除く。

ウォレットが認証情報になる仕組み

pay.sh を使うと、Solanaのウォレット残高がそのまま認証情報として機能する。エージェントはAPIを呼び出すたびにウォレットから必要な額をステーブルコインで支払い、レスポンスを受け取る。アカウントも不要で、APIキーも不要だ。

この仕組みを実現しているのが「x402」と「MPP(Machine Payment Protocol)」という2つのオープン規格だ。x402はHTTPの402ステータスコード(Payment Required)を拡張したプロトコルで、APIが支払いを要求し、エージェントが自動的に支払いを完了してリクエストを再送する流れを標準化する。支払いはSolanaネットワーク上でステーブルコインを使って決済され、数秒で完了する。

pay.sh はGoogle Cloud上で動くAPIプロキシとして機能しており、Google Cloudのサービスへの認証・クォータ管理・レートリミットを代行する。エージェント側はSolanaウォレットの署名だけを用意すればよく、プロバイダー側のアカウント設定は一切必要ない。

72のAPIが即日使える

2026年5月時点で72のAPIがカタログに登録されている。公式のGoogle Cloud APIと、サードパーティが提供するコミュニティAPIの2層構成だ。

公式のGoogle Cloud APIとして、テキスト生成・マルチモーダル推論を担うGemini、データウェアハウスのBigQuery、コンテナ実行基盤のCloud Run、Gemini Enterprise Agent Platformが利用できる。

コミュニティAPIは用途別に整理されている。eコマース領域ではRyeやBigCommerce、データ分析ではExa・Dune Analytics・Nansen、通信系ではAgentMailやStableEmail、Solanaインフラ関連ではHelius・Quicknode・Alchemy・The Graphといったサービスが並ぶ。画像生成のfal.aiや、マルチチェーンRPCを提供するQuicknodeも登録済みで、対象は着実に拡大している。

価格はAPIごとに異なり、1リクエストあたり$0.001〜$10程度の幅がある。無料枠が用意されているサービスも多い。

インストールと初回リクエスト

CLIはHomebrewでインストールできる。

brew install pay
pay setup
pay skills update

pay setup でSolanaウォレットを紐付け、pay skills update でAPIカタログを更新する。呼び出しは pay curl を使う。通常の curl とほぼ同じ書き方で、pay.sh 経由でAPIにアクセスできる。

pay curl https://api.example.com/endpoint \
  -d '{"prompt": "summarize this article"}'

エンドポイントのURLは pay skills endpoints <サービス名> <リソース名> で確認できる。

Claude CodeやCodexとの連携

pay.sh はClaude Code、Codex、OpenClaw、Hermes、Geminiとの連携を想定して設計されている。スキルファイル(Agent Skills JSON)が公式に提供されており、MCPに登録するだけで各エージェントから pay.sh のカタログを参照・実行できる。

エージェントが自律的に動く過程で外部データが必要になったとき、pay.sh のカタログからサービスを発見し、コストを確認してから支払いを実行する、という流れをエージェント自身がこなせる。人間が介在するのはウォレットへの入金だけだ。

料金と入金方法

ウォレットへの入金はクレジットカードまたはステーブルコインで行う。オンランプ(法定通貨からSolanaステーブルコインへの変換)はMoonpayなどのパートナー経由で60秒程度で完了する。課金は呼び出しごとに発生し、月額固定費や最低利用額はない。

プロバイダー側も、従来のような請求管理を持たずにエージェントからの収益を受け取れる。pay.sh がステーブルコインを法定通貨に換えてプロバイダーへ送金する仕組みになっている。

自分のAPIを登録したい場合

pay.sh のレジストリはオープンソースで公開されており、GitHubにプルリクエストを送ることで自作のAPIを登録できる。x402に対応したAPIであれば、エージェント向け従量課金の受け口を手軽に用意できる。

まとめ

AIエージェントが増えるほど、エージェントが自律的に外部サービスを使えるかどうかが開発体験の分かれ目になる。pay.sh は「アカウント登録という人間向けの手順」を省略するための実用的な回答だ。Solana FoundationとGoogle Cloudがバックに付いており、x402というオープン規格を採用しているため、特定のベンダーに依存しない設計になっている点も評価できる。Claude CodeやCodexをすでに使っている開発者であれば、brew install pay から試せる。