フロントエンド開発の基盤を握るVercelが、シリーズCで1億200万ドルを調達しました。
この記事では、2021年6月に発表された資金調達の内容と、Next.jsの採用拡大にどうつながるかを整理します。Web開発やJamstackに取り組む開発者が、Vercelの位置づけを把握するうえで役立つ情報です。
この記事でわかること
- VercelのシリーズC調達額・企業評価額・投資家の内訳
- 調達時点でのNext.jsとVercelプラットフォームの成長指標
- 開発者向けにVercelが提供する主な機能とメリット
- フロントエンド中心の開発潮流(Jamstack)との関係
1億200万ドル調達でユニコーン入り
2021年6月23日、VercelはシリーズCで1億200万ドル(約102Mドル)の資金調達を発表しました。ラウンドを主導したのは既存投資家のBedrock Capitalで、Accel、CRV、Geodesic Capital、Greenoaks Capital、GVといった既存投資家に加え、8VC、Flex Capital、GGV、Latacora、Salesforce Ventures、Tiger Globalが新規参加しています。
Vercel公式ブログによると、企業評価額は10億ドルを超え、累計調達額は1億6300万ドルに達しました。CEOのGuillermo Rauch氏は、資金をグローバルな人材採用、研究開発、プラットフォーム革新に充てると述べています。
Next.jsの作者自身が立ち上げた企業がユニコーン入りしたことは、フロントエンド開発への投資が本格化していることを示しています。
調達時点で加速していたNext.js
VercelはNext.jsの開発元です。Next.jsは2016年にGitHubで公開されたReact向けのオープンソースフレームワークで、サーバーサイドレンダリング(SSR)や静的サイト生成(SSG)を組み合わせたWebアプリ開発を支援します。
調達発表時点の指標は、採用拡大の勢いをはっきり示しています。
- npmの週次ダウンロード数が410万から620万へ50%増加
- Alexa上位1万サイトのうちNext.jsを使うホームページが50%増加
- コントリビューター1,600人以上、累計ダウンロード620万
- Vercel Edge Networkへのトラフィックが半年で2倍、週次デプロイ数は4倍
- エンタープライズ顧客数が3倍に増加
Google Chromeチームと共同開催したNext.jsコミュニティイベントには6万5,000人以上が参加しました。GoogleもNext.jsのJavaScript最適化に協力しており、大規模なエコシステムが形成されています。
Vercelが開発者に提供する価値
Vercelは「開発・プレビュー・公開」を一気通貫で行うフロントエンド向けクラウドプラットフォームです。Next.js単体のフレームワークに加え、実務で使える機能をプラットフォーム側で補完しています。
プレビューデプロイとGit連携
GitHub、GitLab、Bitbucketと連携し、コードをプッシュするたびに自動デプロイが走ります。プレビューURLを関係者に共有できるため、本番反映前にUIや挙動を確認しやすくなります。Rauch氏はVentureBeatの取材で、大規模な開発組織が「コードを書いた瞬間にライブプレビューが得られる」点を重視していると語っています。
エッジ配信とCDN
Vercelは世界70都市にCDN(コンテンツ配信ネットワーク)を展開しています。調達発表時点では週1,200億リクエスト、9ペタバイトのデータ配信規模でした。動的なページ生成にも対応し、トラフィックの増減に合わせてスケールします。
Jamstackとの相性
Vercelのミッションは、推定1,100万人のJavaScript開発者にJamstackのワークフローを提供することです。JamstackはJavaScript、API、Markupの頭文字を取った構成で、アプリのロジックをクライアント側に置き、バックエンドとは疎結合に保つ設計思想です。
Rauch氏は、クラウドインフラやKubernetes、既製APIによってバックエンドがコモディティ化するなか、Web開発の革新はフロントエンド側で起きていると指摘しています。Vercel上ではフロントエンドに集中し、データ取得や認証などは外部APIに任せる構成が取りやすくなります。
採用企業と開発者への示唆
Vercelの顧客には、GitHub、IBM、McDonald’s、Uber、Facebook、TikTok、Hulu、Ticketmasterなどが名を連ねています。調達発表時点で約2万5,000社がプラットフォームを利用していました。
COVID-19以降、オンライン体験の品質が売上に直結する場面が増え、サイトの速度と信頼性への要求が高まっています。Rauch氏は、顧客満足度の高いオンライン体験がリピートにつながると述べており、パフォーマンス重視のフロントエンド基盤への投資背景と一致します。
開発者個人にとっても、Next.jsのスキル需要は調達後も拡大を続けています。オープンソースのNext.jsはVercelに依存せず利用できますが、VercelがNext.jsの開発を継続的に資金投入できる体制を整えたことは、フレームワークの長期メンテナンスにとってプラスです。
資金調達後のVercelとNext.js
今回の1億200万ドル調達は2021年6月の発表です。その後VercelはシリーズD(2021年11月・1億5000万ドル)、シリーズE(2024年5月・2億5000万ドル)、シリーズF(2025年9月・3億ドル)と追加調達を重ね、Next.jsとVercel AI SDKなどの開発投資を続けています。
ただし、2021年時点で示された方向性——フロントエンド開発体験の統合、Next.jsエコシステムの拡大、エッジ配信の強化——は現在もVercelの中核戦略です。JamstackやReactベースのWeb開発に携わる開発者は、Vercelの資金調達を「フロントエンドが主戦場になった」という業界トレンドの一つの指標として捉える価値があります。