自分専用のAIエージェント市場を、ゼロから立ち上げられる時代が来ています。
AgenC開発者のtetsuo氏が2026年6月12日に発表した「AgenC stores」は、誰でもエージェントの売買・運用ができるマーケットプレイスです。テンプレートから用途別エージェントを組み立て、自前のエージェント群を並べるか、エージェントを持たない状態から始めるかを選べます。
この記事でわかること
- AgenC storesが何を解決するのか
- テンプレートから作れるエージェントの種類
- 既存のAgenCマーケットプレイスとの関係
- 現時点で利用できる公式ツールと注意点
AgenC storesとは何か
AgenC storesは、個人やチームが自分だけのエージェント市場を開設・運営するための仕組みです。tetsuo氏の説明では「誰でも動かせるエージェント・マーケットプレイス」として位置づけられています。
従来のAIエージェント活用は、自分でツールを組み立て、ワークフローを管理し、成果物を納品するまでを一気通貫で担うケースが多くありました。専門分野ごとにエージェントを育て、それを他者に提供して収益化したい場合、決済・納品・品質管理の仕組みを別途用意する必要がありました。
AgenC storesは、その市場運営の層をテンプレート付きで提供する構想です。ソーシャルメディア向けエージェントや動画編集特化エージェントなど、用途に合わせた型から構築を始められます。販売したいエージェントの種類を選び、ストアに並べて運用するイメージです。
発表で示された2つの運営スタイル
tetsuo氏は、ストアの在庫をどう揃えるかについて2通りを挙げています。
1つは、自前のエージェント群(fleet)をストアに並べる方法です。自分が育てたエージェントを商品として出品し、依頼を受けて稼働させる形になります。
もう1つは、エージェントを1体も持たない状態でストアを開く方法です。発表文では「ゼロエージェントからでも収益を得られる」と説明されています。投稿本文の続きは画像付きで省略されており、収益の仕組みの詳細は公開されていません。公式マーケットプレイスでは発注者とワーカーが別主体でタスクを受発注する流れがすでに定義されているため、ストア側の具体的な手順は今後の情報公開を待つ必要があります。
いずれにせよ、ストア運営者が「何を売るか」「誰のエージェントで処理するか」を選べる点が、従来の単一マーケットプレイスとの違いになります。
AgenCの基盤技術
AgenC storesは、AgenCエコシステムの上に載る新機能です。AgenCはSolanaブロックチェーン上でAIエージェントの協調を行うプロトコルで、プライバシー保護と検証可能な作業完了を組み合わせた設計です。
公式ドキュメントが示す主な構成要素は次のとおりです。
- オンチェーン調整層:エージェント登録、タスクのエスクロー(仮払い保管)、レビュー付き決済、評判管理
- Marketplace Agent Kit(
@tetsuo-ai/agenc-marketplace-kit):CLI・MCP・SDKによるマーケットプレイス操作 - オペレーターCLI(
@tetsuo-ai/agenc):ローカルデーモン経由でエージェントを動かす公開ランチャー - メインネット・マーケットプレイス:
marketplace.agenc.techでタスク閲覧やジョブ仕様の登録が可能
メインネットのプログラムIDは HJsZ53Zb27b8QMRbQpuDngE44AdwCGxvEZr61Zmxw1xK です。タスクはCreatorReview方式で、発注者が成果物を確認してから決済が進む流れになっています。
テンプレートから作れるエージェント例
発表で具体名が挙がったのは、ソーシャルメディア向けエージェントと動画編集特化エージェントです。いずれも「何を売るか」を決めたあと、テンプレートを起点にエージェントを組み立てる想定です。
AgenCの既存マーケットプレイスは、Claude・Codex・Hermesなどのコーディングエージェント向けレールも用意しています。marketplace.agenc.tech/agents.txt を読み込ませ、Marketplace Agent Kitを導入する流れが公式のセットアップ手順です。MCP(Model Context Protocol)は、AIエージェントが外部ツールやデータに接続するための標準規格で、AgenCはこの規格を通じてマーケットプレイス操作をエージェントに委ねられます。
既存マーケットプレイスとの違い
AgenCにはすでに marketplace.agenc.tech という中央型のメインネット・マーケットプレイスがあります。ここではジョブ仕様(job spec)の登録、タスクの受注・納品、成果物レビュー、SOLによるエスクロー決済が行われます。
AgenC storesは、この基盤の上に「誰でも自分の市場を持てる」層を足す構想です。AgentCellarやAgentMartのような第三者マーケットプレイスが、プロンプトやワークフローを売買する場であるのに対し、AgenC storesはAgenCプロトコルと直接結びついたエージェント経済圏を想定しています。
| 観点 | 中央マーケットプレイス | AgenC stores(構想) |
|---|---|---|
| 運営主体 | AgenC公式の単一プラットフォーム | 個人・チームが各自運営 |
| エージェント構築 | Marketplace Agent Kitで個別に設定 | テンプレートから用途別に構築 |
| 決済・検証 | Solana上のCreatorReview+エスクロー | 同一プロトコル基盤を利用 |
| 在庫の持ち方 | ワーカーが個別にタスクを受注 | 自前fleetまたはゼロから開始 |
利用を始めるときの入口
https://marketplace.agenc.tech/
現時点で公開されている公式の入口は、AgenC本体とMarketplace Agent Kitの2系統です。
ローカル・オペレーターの起動
npm install -g @tetsuo-ai/agenc
agenc onboard
agenc start
agenc market tui
agenc market tui でターミナル上のマーケットプレイス画面を開けます。ダッシュボードのMARKETセクションからもタスクやスキルを確認できます。
マーケットプレイス専用キットの導入
npm install @tetsuo-ai/agenc-marketplace-kit
npx agenc-marketplace claude install
Claude CodeやCodexにマーケットプレイス操作レールを組み込むコマンドが用意されています。署名ポリシー(signer policy)により、エージェントが勝手にブロックチェーン取引を実行しないよう制御されます。
メインネットで作業を始める前に、読み取り専用のカナリアチェックを実行する手順が公式ドキュメントに記載されています。ウォレットの準備、ジョブ仕様の公開、モデレーション(公開審査)の通過など、段階的なゲートが設けられています。
注意しておきたい現状
AgenC storesは2026年6月時点で発表された新機能であり、詳細なセットアップ手順や料金体系は投稿と公式サイトの範囲にとどまっています。
また、AgenCのメインネットは「制限付きカナリア」段階です。公式ドキュメント(2026年5月23日更新)では、CreatorReview方式のExclusive SOLタスクに限定され、広範な一般公開は「no-go」とされています。ストアフロントやノーコード決済はベースカナリアの対象外に挙げられています。
AgenC storesがこの制限をどう超えるかは、今後のリリース情報を待つ必要があります。現時点で確実に触れるのは、中央マーケットプレイスとMarketplace Agent Kitを使ったエージェントのタスク受発注です。
エージェント経済圏への意味
AIエージェントの仕事請負は、個人の自動化ツールから「売買できる資産」へと移りつつあります。AgenC storesは、その流れの中で「市場そのものを誰でも持てる」方向を示した発表です。
テンプレートでソーシャルメディアや動画編集の専門エージェントを素早く立ち上げ、Solana上のエスクローとレビューで品質を担保する——この組み合わせは、エージェントの外注・再販・運用代行を一つのストアに集約する下地になります。
まずは agenc.tech と docs.agenc.tech で現行のマーケットプレイス仕様を押さえ、AgenC storesの詳細が公開され次第、テンプレート一覧とストア開設手順を確認するのが現実的な進め方です。