「あの人の名前、何だっけ」と思い出せない瞬間、誰もが一度は経験します。

GoogleのAIアシスタント「Gemini(ジェミニ)」には、こうした日常の忘れ物を減らすためのMemory(メモリー)機能があります。覚えておいてほしい情報を会話で伝えるだけで、後から自然な言葉で取り出せます。

この記事でわかること

  • Memory機能の仕組みと、メモアプリとの違い
  • 名前・レストラン・記念日など具体的な使い方
  • 設定の場所、利用条件、保存してはいけない情報
  • 他社AIから記憶を移行する方法

https://gemini.google.com/

Memory機能とは

Memoryは、Geminiがユーザー個人の情報を保持し、将来の会話で参照するための機能です。Googleは2025年8月に過去のチャットから好みや文脈を学習する「Personal context(パーソナルコンテキスト)」を発表し、2026年3月のGemini Dropでは設定名を「Past chats」から「Memory」に改め、他社AIアプリからの記憶インポートも追加しました。

WRDWの技術解説では、この機能を「デジタル第二の脳」と表現しています。メモ帳に書き込むのではなく、会話の流れの中で記憶させ、会話の流れの中で思い出す点が特徴です。

なぜ必要か

スマートフォン向けのメモアプリは長年存在します。それでも多くの人が、人の名前やロッカーの暗証番号、行きたい店の名前を忘れます。理由は、メモを探す行為そのものが面倒だからです。フォルダを開き、キーワードを思い出し、該当ノートを見つける——この手順が小さな摩擦になり、結局思い出せないまま終わることがあります。

Memoryはこの摩擦を取り除きます。覚えておいてほしい内容をその場でGeminiに伝え、後日「あのレストランどこだっけ」と聞くだけで答えが返ってきます。

基本的な使い方

利用の流れは次の2ステップです。

1. 記憶させる

チャットで「Remember(覚えておいて)」と付けて伝えます。Google公式ヘルプの例では、次のような指示が挙げられています。

  • 「車を持っていないことを覚えておいて」
  • 「ベジタリアン向けのレシピを常に出して」

WRDWの例では、友人フィリップの妻の名前を「Carol(キャロル)」と記憶させ、数週間後に「フィリップの妻の名前は?」と聞いて正しく答えが返る、というデモが紹介されています。

2. 後から聞く

記憶させた内容は、自然言語で質問するだけで呼び出せます。「行きたいと言っていたレストランはどこ?」のように、キーワードを正確に覚えていなくても構いません。

設定画面から直接追加することもできます。Geminiアプリの「Personal context(パーソナルコンテキスト)」、またはWeb版左下の「Personal Intelligence(パーソナルインテリジェンス)」から、保存したい情報を入力して登録します。

こんな情報向き

WRDWが挙げる用途は、次のとおりです。

  • 人の名前や家族構成
  • ロッカーの暗証番号
  • 服のサイズ
  • お気に入りのレストラン
  • 旅行の好み
  • プレゼントのアイデア
  • 記念日
  • 読みたい本や観たい映画

いずれも「覚えておきたいのに、いざという時に出てこない」類の情報です。一度Geminiに預けておけば、会話の中で自然に参照できます。

過去のチャットから学習するMemory

Memoryにはもう一つの側面があります。過去のGeminiとの会話そのものから、好みや文脈を自動で学習する機能です。Google公式ブログ(2025年8月発表)によると、この設定はデフォルトでオンになっており、以前話した趣味やプロジェクトの内容を踏まえた提案が返ってきます。

例えば日本文化のYouTubeチャンネルについて過去に相談していれば、「自分の興味に合う新しいコンテンツ案は?」と聞いた際に、その文脈を反映した回答が得られます。

過去チャットの参照を使ったか確認したい場合は、Geminiに「Did you use any info from past chats?(過去のチャットの情報を使いましたか?)」と尋ねられます。回答の下部「Sources and related content(ソースと関連コンテンツ)」に「Previous chats(過去のチャット)」と表示されていれば、過去の会話が参照された証拠になります。

利用条件と設定場所

Google公式ヘルプに記載された利用条件は次のとおりです。

  • 18歳以上
  • 個人のGoogleアカウントでサインイン(仕事用・学校用・監督付きアカウントは非対応)
  • 「Keep Activity(キープアクティビティ)」がオンであること

対応環境は、Geminiモバイルアプリ、Web版(gemini.google.com)、Gemini in Chrome(提供国のみ)です。GemsやLiveチャットではMemoryは使えません。

設定の場所は、Web版左下の「Settings and help(設定とヘルプ)」→「Personal Intelligence」→「Memory」です。いつでもオン・オフを切り替えられます。

他社AIから記憶を移行する

2026年3月のGemini Dropで、ChatGPTなど他社AIアプリから記憶やチャット履歴をGeminiへ移行する機能が追加されました。設定画面のインポートオプションから、他社AIにコピーするプロンプトを貼り付けて要約を取得し、その結果をGeminiに貼り返す方法と、ZIPファイルでチャット履歴ごとアップロードする方法の2種類があります。別のAIアシスタントから乗り換える際、一から自己紹介し直す手間を省けます。

保存してはいけない情報

WRDWは、Memoryをパスワードマネージャーの代わりに使わないよう注意を促しています。次の情報は保存対象外にしてください。

  • パスワード
  • 銀行口座の認証情報
  • 社会保障番号(日本ではマイナンバーに相当)
  • セキュリティコード
  • 非公開のアカウント情報

クラウド上にデータが残る以上、ゼロリスクはありません。Gemini Apps Privacy Hubでも、Memoryがオンの場合、チャット内の機微な情報がパーソナライズに使われる可能性があると明記されています。

プライバシーを守るTemporary Chat

機微な話題を一時的に相談したい場合は、Temporary Chat(一時チャット)が使えます。Temporary Chatの内容は最近のチャット一覧やGemini Apps Activityに残らず、パーソナライズにも使われません。最大72時間保持された後に削除されます。Memoryをオンのまま、特定の話題だけ記憶させたくない場面で有効です。

メモアプリとの違い

メモアプリは情報を「保存場所」として管理します。Memoryは情報を「会話の文脈」として管理します。フォルダ分けや検索キーワードの工夫が不要で、人に話しかけるように覚えさせ、人に聞くように取り出せます。Google Assistantにも「Hey Google, remember that…」という記憶機能がありますが、Gemini Memoryはテキストチャットを中心に、より幅広い個人情報を文脈付きで保持できる点が異なります。

記憶の削除と修正

覚えさせた内容を消したい場合は、該当情報を含むチャットをGemini Apps Activityから削除します。GmailやGoogle Photosなど連携アプリのデータも参照している場合は、チャット削除に加えてアプリの連携解除が必要です。どちらか一方だけでは、残ったデータから再参照される可能性があります。

内容が間違っている場合は、Memoryがオンの状態でチャット内から直接訂正します。Google公式ヘルプは、Geminiが常に正確とは限らないと述べています。

使い始める前の確認

Memoryは日常の細かな忘れ物——名前、行きたい店、服のサイズ——を減らす実用的な機能です。会話ベースで記憶させられる手軽さが強みです。一方で、パスワードや金融情報は預けず、設定画面でオン・オフを自分で管理することが前提です。まずは「覚えておきたいけど、いつも忘れる」情報を一つGeminiに伝え、数日後に聞いてみる——この一手から試すのがおすすめです。