Cursorで覚えた設定を、Codexの別セッションでまた説明し直していませんか。Walrus Memoryは、AIエージェント向けのポータブル記憶レイヤーで、複数の開発ツール間で文脈を共有できるようになりました。

この記事では、2026年6月15日にWalrus公式が案内した連携先とSDK群の全体像、導入手順、既存のクライアント内蔵メモリとの違いを整理します。

この記事でわかること

  • Walrus Memoryが対応した開発ツールとSDKの一覧
  • curl一発で始められるセットアップの流れ
  • MCP経由で使える記憶操作ツールの種類
  • 暗号化とオンチェーン権限管理の仕組み

複数のAI開発ツールを一つの記憶ストアに統合

Walrus Protocolは2026年6月15日、Walrus Memoryの連携先とSDK群をまとめて案内しました。対応ツールはClaude Code、Cursor、Codex、Gemini CLIに加え、MCP(Model Context Protocol)ネイティブ対応、OpenClawとNemoClaw向けファーストパーティプラグイン、Python・TypeScript・JavaScriptの各SDKです。アダプターを挟まず接続できる点が強調されています。

https://walrus.xyz/products/walrus-memory/

Walrus Memoryは、セッションが終わっても文脈を失わないポータブル記憶レイヤーです。公式ドキュメントによると、記憶の所有権とアクセス制御はSuiのスマートコントラクトで管理され、Walrusに保存される前にSealで暗号化されます。Cursorで保存した事実がClaude DesktopやCodexからも参照できるため、ツールを切り替えても同じ記憶空間を使い回せます。

なぜクライアント内蔵メモリでは足りないのか

多くのAIクライアントは会話ごとにコンテキストをリセットします。プラットフォーム側のメモリ機能を使えば一部は残りますが、データは各サービス内に閉じ込められ、ユーザーが所有権を持てないケースが多いです。複数エージェントが関わるワークフローでは、前のエージェントの判断を次のエージェントが参照できず、同じ確認を繰り返す原因になります。

Walrus Memoryは記憶をクライアント外の共有ストアに置くことで、この断絶を解消します。公式製品ページでは、マルチエージェント連携、カスタマーサポート、個人アシスタントなど、セッションをまたぐ文脈が必要な用途を想定しています。現時点ではベータ版であり、開発体験の改善が継続中です。

curl一発から始めるセットアップ

導入の入口はシンプルです。次のコマンドを実行すると、AIクライアント向けのセットアップ手順が返ってきます。

curl -sL https://memory.walrus.xyz/skills/setup

返却された指示に従い、利用中のクライアントを特定してMCP設定を追加します。ローカルでMCPコマンドを動かせるClaude Desktop、Claude Code、Cursor、Codexなどは、共通でnpx経由のパッケージ@mysten-incubation/memwal-mcpを使います。Node.js 20以上が必要です。

Cursorの場合、設定ファイル~/.cursor/mcp.jsonに次のエントリをマージします。既存のMCPサーバー設定は上書きせず、追記してください。

{
  "mcpServers": {
    "memwal": {
      "command": "npx",
      "args": ["-y", "@mysten-incubation/memwal-mcp"]
    }
  }
}

設定変更後はクライアントを完全終了してから再起動します。macOSではウィンドウを閉じるだけでは不十分で、Cmd+Qでの終了が推奨されています。初回起動時はnpxがパッケージを取得するため、5〜10秒ほどかかる場合があります。

ウォレット認証とMCPツールの使い方

https://docs.wal.app/walrus-memory/mcp/overview

ログインはターミナルから次のコマンドを実行する方法が推奨されています。

npx -y @mysten-incubation/memwal-mcp login --prod

ブラウザが開き、Google(zkLogin)またはSui対応ウォレットで承認すると、認証情報が~/.memwal/credentials.jsonに保存されます。MCPクライアント側からはmemwal_loginツールで同じフローを起動することもできます。認証情報がない状態でもMCPサーバーはクラッシュせず、memwal_loginだけが使える認証待ちモードで起動します。

利用できる主なMCPツールは次のとおりです。

  • memwal_remember:好みや決定事項などの事実を保存
  • memwal_recall:自然言語クエリで関連記憶を検索
  • memwal_analyze:テキストから複数の事実を抽出して個別保存
  • memwal_restore:検索インデックスをWalrusから再構築
  • memwal_health:接続確認
  • memwal_login / memwal_logout:認証とサインアウト

namespace引数でworkpersonalのように記憶空間を分けられます。Cursorでは起動引数に--namespace workを付けるか、環境変数MEMWAL_NAMESPACEで既定値を固定できます。

SDKでアプリに組み込む場合

https://docs.wal.app/walrus-memory

エージェント連携だけでなく、アプリケーションへの直接組み込みにも対応しています。TypeScriptでは@mysten-incubation/memwal、Pythonではmemwalパッケージを使い、同じリレーヤーAPI経由でrememberrecallanalyzeを呼び出します。Vercel AI SDK向けには@mysten-incubation/memwal/aiミドルウェアも用意されています。GitHubリポジトリはMystenLabs/MemWalで公開されています。

リレーヤーは埋め込みベクトルの生成、Seal暗号化、Walrusへのアップロード、セマンティック検索をまとめて処理します。開発者はデリゲートキーとアカウントIDを取得し、本番リレーヤーhttps://relayer.memory.walrus.xyzに接続する形が基本です。自己ホストのリレーヤー運用にも対応しています。

プラットフォーム内蔵メモリとの違い

観点 クライアント内蔵メモリ Walrus Memory
持ち運び 利用中のクライアント内に限定 Cursor・Codex・Claude Codeなど横断で共有
所有権 プラットフォーム依存 Suiコントラクトでユーザーが管理
暗号化 サービス側の実装に依存 Sealで暗号化してからWalrusに保存
導入 各製品の設定画面 MCP設定またはSDK統合

RedisやPostgres、ベクトルDBを自前で組み合わせる方法と比べ、Walrus Memoryは記憶の暗号化・検索・権限管理をリレーヤーが担うため、エージェント連携の初期構築が短く済みます。一方、オンチェーン要素とウォレット認証が前提になる点は導入前に確認が必要です。

試すときの注意点

Walrus Memoryはベータ版のため、APIや設定手順が更新される可能性があります。~/.memwal/credentials.jsonの内容はAPIキー相当なので、リポジトリやチャットログに貼らないでください。リモートMCP(ChatGPTのカスタムコネクタなど)を使う場合は、Bearerトークンをヘッダーに直接設定する必要があり、ローカルnpx方式より秘密情報の扱いに注意が要ります。

複数ツールを日常的に使い分ける開発者にとって、一つの記憶レイヤーを共有できる点は実務上のメリットが大きいです。まずはcurlでセットアップ手順を取得し、普段使うクライアント一つにMCPを追加して動作確認するのが現実的な第一歩です。