マルチエージェントの頭脳を、好きなコーディングエージェントから呼び出せる時代が一段進みました。
2026年7月2日、Sakana AIは公式Xで「Fugu is now available on OpenCode!」と発表しました。Sakana AIはFuguのマルチエージェント・オーケストレーション開発中、モデル検証の主力ツールとしてOpenCodeを使っていたと明かしています。両社は「コーディングエージェントの未来は、オープンで集合的なエコシステムにある」という哲学を共有すると述べています(参考)。
この記事では、発表の意味、FuguとOpenCodeそれぞれの位置づけ、OpenCodeからFuguを使うための設定手順を整理します。
この記事でわかること
- Sakana FuguがOpenCodeで使えるようになった背景
- Fuguが「1つのモデルAPI」として動く仕組み
- OpenCodeへのプロバイダー設定手順
- FuguとFugu Ultraの使い分け
発表の要点—開発現場で使われていた連携が正式化
Sakana AIの投稿が伝える核心は、新機能の追加というより「検証に使っていた環境への正式対応」です。Fugu開発チームは、複数モデルを束ねるオーケストレーションの品質を確かめる段階でOpenCodeを日常的に使っていた。今回の発表で、その組み合わせが一般ユーザー向けにも明示された形になります。
Fuguのテクニカルレポートでも、Claude Code、Codex、OpenCodeといったコーディングアシスタント環境から収集したマルチターンの実利用データを、エンドツーエンド学習に使ったと記されています(参考)。つまりOpenCodeはFuguの外側の宣伝用パートナーではなく、開発と評価の両方に関わるツールとして位置づけられています。
Fuguとは—裏側で複数モデルを束ねる「1つのAPI」
Sakana Fuguは、複数のフロンティアモデルを動的に編成するマルチエージェント・システムです。ユーザーから見ると1つのLLMにリクエストを送るだけですが、内部ではタスクの難易度に応じてモデル選択、委譲、検証、合成を自動で行います。
基盤にはICLR 2026で発表された2本の論文「TRINITY」と「Conductor」があります。TRINITYは進化戦略で最適化したコンパクトなコーディネーターがThinker・Worker・Verifierの役割をLLMプールに振り分ける仕組みです。Conductorは強化学習でエージェント間の通信トポロジーと指示文を学習し、単体モデルを上回る協調を実現します(参考)。
APIはOpenAI互換で、https://api.sakana.ai/v1 に向けてリクエストを送ります。Chat CompletionsとResponsesの両エンドポイントに対応しており、ツール呼び出しや推論を伴うコーディングエージェント向けにはResponses APIの利用が推奨されています(参考)。
OpenCodeとは—プロバイダーを選べるOSSコーディングエージェント
OpenCodeは、ターミナル上で動くオープンソースのAIコーディングエージェントです。Anthropic、OpenAI、Googleなど複数プロバイダーに対応し、APIキーを自分で持ち込む(BYOK)設計が特徴です。特定ベンダーに縛られず、モデルを切り替えながら開発できます。
TUI(ターミナルUI)を中心に、デスクトップアプリやIDE拡張も提供されています。buildエージェントはファイル編集やシェル実行を伴う本番開発向け、planエージェントは読み取り専用の分析・計画向けです。Tabキーで切り替え、Plan→Buildの流れで実装前に設計を固める使い方が想定されています(参考)。
OpenCodeは75以上のLLMプロバイダーをサポートし、公式に載っていないOpenAI互換APIもカスタムプロバイダーとして追加できます。Fugu連携は、この拡張性を活かした組み合わせです。
OpenCodeでFuguを使う手順
Sakana AIはCodex向けにワンラインインストーラー(curl -fsSL https://sakana.ai/fugu/install | bash)を提供していますが、OpenCode向けの専用インストーラーは公開されていません。OpenCodeではカスタムプロバイダーとしてSakana APIを登録する流れになります。
1. Sakana APIキーを取得する
SakanaコンソールでAPIキーを作成します。キーは生成時に一度だけ表示されるため、ダイアログを閉じる前に安全な場所へ保存してください。fuguモデルはデフォルトで全対応プロバイダーにルーティングします。特定プロバイダーを除外したい場合は、APIキー作成時に「Fugu custom model pool」を有効にし、利用するプロバイダーのみを残します。
2. OpenCodeに認証情報を登録する
OpenCodeのTUIで /connect を実行し、一覧から「Other」を選びます。プロバイダーIDには sakana など覚えやすい名前を入力し、APIキーを登録します。
3. opencode.jsonにプロバイダーを定義する
プロジェクト直下、または ~/.config/opencode/opencode.json に次の設定を追加します。FuguはResponses APIを使うため、npmパッケージに @ai-sdk/openai を指定します(参考)。
{
"$schema": "https://opencode.ai/config.json",
"provider": {
"sakana": {
"npm": "@ai-sdk/openai",
"name": "Sakana Fugu",
"options": {
"baseURL": "https://api.sakana.ai/v1"
},
"models": {
"fugu": {
"name": "Fugu",
"limit": { "context": 1000000, "output": 32768 }
},
"fugu-ultra": {
"name": "Fugu Ultra",
"limit": { "context": 1000000, "output": 32768 }
}
}
}
},
"model": "sakana/fugu"
}
環境変数 SAKANA_API_KEY を設定したうえで opencode を起動し、/models コマンドから sakana/fugu または sakana/fugu-ultra を選びます。
FuguとFugu Ultraの使い分け
Fuguは性能とレイテンシのバランス重視で、日常のコーディングやコードレビュー、インタラクティブなチャット向けです。Fugu Ultraはより深いエージェントプールを動員し、論文再現、セキュリティ分析、文献・特許調査など高難度タスク向けに設計されています(参考)。
OpenCode上では /models または起動時の -m sakana/fugu-ultra で切り替えられます。複雑なリファクタリングや長時間の調査タスクではUltra、軽い修正や対話的な作業ではFuguが向いています。
Codex連携との違い
Sakana AIはCodex CLI向けに専用プロファイルと codex-fugu ランチャーを提供しています。インストーラーはCodexのバージョンを固定し、ストリーム切断への耐性設定(最大2時間のアイドルタイムアウト、リトライ回数の調整)まで含めて自動構成します(参考)。
OpenCode連携はそのような専用ラッパーではなく、OpenAI互換APIをカスタムプロバイダーとして載せる方式です。設定の手間はCodexより増えますが、OpenCode固有のPlan/Buildモード、MCP連携、LSPサポートなどを活かしたい場合にメリットがあります。すでにOpenCodeを主力にしている開発者は、既存ワークフローを変えずにFuguのマルチエージェント推論を足せます。
利用上の注意
Sakana Fuguは2026年6月22日に一般提供(GA)を開始し、日常利用向けサブスクリプションと従量課金プランを提供しています。2026年7月末までに登録すると、初回加入プランの2か月目が無料になるキャンペーンも実施中です(参考)。
一方、EU・EEA域内ではGDPR等の対応作業中のため、現時点では利用できません。日本国外からのアクセスは可能ですが、通信環境や現地規制により使えない場合もあります。
Fugu Ultraのような重いタスクでは、クライアント側のタイムアウトを長めに設定する必要があります。Sakanaの公式ドキュメントでも、複雑なタスクではタイムアウト延長を推奨しています。
オープンなエコシステムという文脈
今回の発表が示すのは、1社のモデルと1社のエージェントが固定で結ばれる未来ではない、という点です。Sakana AIはFugu内部で複数ベンダーのモデルを束ね、ユーザー側には単一APIとして見せます。OpenCodeは逆に、ユーザーが好きなモデルをエージェントに載せ替えられるオープンな土台を提供します。
両者の組み合わせは、ベンダーロックインを避けつつフロンティア級の推論をコーディング現場に持ち込む、という方向性の一致を表しています。Sakana AIのテクニカルレポートがOpenCodeを実環境のデータソースとして挙げている事実も、研究とプロダクト、OSSツールが相互に循環するエコシステムの具体例と言えます。
