Aspire 13.2が3月末にリリースされた。今回のリリースでは、AI coding agentがそのまま使えるCLIの大幅強化と、要望が多かったTypeScript AppHostのプレビュー対応が目玉だ。
この記事でわかること:
- Aspire 13.2の主要な変更点
- AIエージェント向けCLIの新コマンドと使い方
- TypeScript AppHostが可能にすること
- ダッシュボードと新しいインテグレーションの概要
https://devblogs.microsoft.com/aspire/aspire-13-2-announcement/
Aspireとは
Aspireはマイクロサービスやクラウドネイティブアプリの開発を効率化するMicrosoftのオーケストレーションプラットフォームだ。かつては「.NET Aspire」という名称だったが、Aspire 13.0でPythonとJavaScriptを第一級市民として取り込み、マルチ言語プラットフォームへと変貌した。
AppHostと呼ばれる設定ファイルに各サービスの依存関係やインフラを記述すれば、ローカル開発環境のセットアップ、コンテナ管理、サービスディスカバリー、テレメトリの収集を自動で行う。
AIエージェントに最適化されたCLI
13.2の最大の柱はCLIの刷新だ。AI coding agentがAspireを扱う際に生じていたペインポイント——ログのコピー貼り付け、手動でのプロセス再起動、スクリーンショットの共有——を直接解消する機能が追加された。
バックグラウンド起動(detachedモード)
aspire start
aspire resource api restart
aspire wait api --status healthy --timeout 120
aspire startでAppHostをバックグラウンド起動し、aspire resourceでリソースを個別に停止・再起動できる。aspire waitは指定したリソースがhealthyステータスになるまでコマンドをブロックするため、エージェントは次のアクションに安全に進める。
isolatedモードで並列実行
--isolatedフラグを使うと、ランダムなポートと独立したシークレットで環境を起動できる。git worktreeを複数持つ開発フローや並列テストで、環境の衝突が起きなくなる。
ドキュメントアクセス(aspire docs)
aspire docsコマンドは、aspire.devのドキュメントをエージェントのワークフローに直接取り込む。追加のMCPを設定しなくても、エージェントがドキュメントを検索・参照できる。
そのほかのCLI追加機能として、ビルド前に環境全体を検証するaspire doctor、デバッグ用スナップショットを出力するaspire export、設定ファイルを一元管理するaspire.config.json、ファーストクラスな証明書・シークレット管理が加わった。
TypeScript AppHost(プレビュー)
Aspire 13.0でJavaScriptとPythonが第一級サポートになって以来、最も多かったリクエストがTypeScriptによるAppHost記述だ。13.2でプレビューとして実現した。
これまでC#で記述していたリソースグラフ定義を、TypeScriptで書けるようになる。リソース、参照、インテグレーションといったモデルはC#版と同一で、CLIとVS Code拡張機能はどちらのAppHostでも同じように動作する。
TypeScript AppHostはAspireのオーケストレーションホストとローカルトランスポート層で通信する設計で、他言語へ拡張しやすい基盤を持っている。今後さらに言語サポートが追加される予定だ。C#を書かない開発者がAspireを採用する際の最大の障壁がこれで取り除かれる。
ダッシュボードの改善
テレメトリのエクスポート・インポート機能が追加された。トレース、スパン、ログ、リソース構成をJSONまたは.env形式でエクスポートし、aspire exportで作成したスナップショットを別の環境にインポートしてデバッグコンテキストを共有できる。
テレメトリHTTP APIも追加されており、スパン、ログ、トレースへのプログラムアクセスが可能になった。外部ツールからの参照や自動化に使いやすい。
他の改善として、GenAI visualizerのスキーマ処理とツールインスペクションの向上、リソースグラフのadaptive force-directedレイアウト採用、フィルターや展開状態のUIステート保持、機密データのクエリ文字列値マスキングがある。
新しいインテグレーション
Docker Composeパブリッシュがプレリリースから安定版に昇格した。新規対応はAzure Virtual Network、Azure Data Lake Storage、MongoDB Entity Framework Coreの3つだ。
Azure AI FoundryインテグレーションはMicrosoft Foundryインテグレーションに置き換えられた。次世代のMicrosoft Foundryへの移行に伴うものだが、既存コードへのブレーキングチェンジがあるため、移行時は公式のマイグレーションガイドを確認する必要がある。
JavaScriptプロジェクトではBunがパッケージマネージャーの選択肢に加わった。VS Code拡張機能は20件以上の機能追加を受け、アクティビティバーへの専用Aspireパネル追加、リソース状態のインラインCodeLens表示などが含まれる。
まとめ
Aspire 13.2は、AI coding agentと人間の開発者の両方を同時に強化することを意図したリリースだ。detachedモードやisolatedモード、aspire waitといったCLI機能は、エージェントが自律的に作業できる環境を整える。TypeScript AppHostはC#を書かない開発者へのドアを開く。
アップデートは以下のコマンドで適用できる。
aspire update --self
aspire update