ストレージのIOPS上限がボトルネックになって、PostgreSQLのスループットが頭打ちになっているケースは少なくない。2026年4月7日、MicrosoftはAzure Database for PostgreSQLにおけるPremium SSD v2の正式提供(GA)を発表した。性能を変えずにコストを据え置くのではなく、コストを変えずに性能を大幅に引き上げる選択肢が正式に使えるようになった。

この記事でわかること:

  • Premium SSD v2がもたらす性能改善の具体的な数値
  • Premium SSDとの比較と価格の考え方
  • 既存インスタンスからの2つの移行手順

https://techcommunity.microsoft.com/blog/adforpostgresql/premium-ssd-v2-is-now-generally-available-for-azure-database-for-postgresql/4508445

従来のPremium SSDが抱えていた制約

これまでのPremium SSDは、IOPSを上げるにはディスクサイズを拡大するしかなかった。32 TiBのディスクで最大20,000 IOPSというのが上限で、コンカレント接続が増えるとストレージがボトルネックになりCPUやメモリが十分に残っていても性能が頭打ちになる構造だった。

Premium SSD v2はこの制約を取り除く。ディスクサイズとIOPS・スループットを独立してスケーリングできるため、容量が少ないディスクでも必要なIOPSを確保できる。160 GiBのディスクで最大80,000 IOPSを達成できる構成も可能だ。

Premium SSD v2の主な仕様

最大スペックの比較は次のとおり。

項目 Premium SSD Premium SSD v2
最大IOPS 20,000 80,000
最大スループット 900 MiB/s 1,200 MiB/s
最大ディスクサイズ 32,767 GiB 65,536 GiB
サイジング単位 固定サイズ区分 1 GiB単位で任意に設定

ダウンタイムなしでIOPSとスループットを個別に変更できる点も特徴だ。ピーク時だけ性能を引き上げ、オフピーク時は下げる運用が可能になる。

また、一定のベースライン性能が追加費用なしで含まれている。

  • 399 GiB以下のディスク: 3,000 IOPS・125 MiB/sが無料で付属
  • 400 GiB以上のディスク: 最大12,000 IOPS・500 MiB/sが無料で付属

中規模以下のワークロードであれば、ベースライン分だけでも十分なケースがある。

pgbenchによるベンチマーク結果

MicrosoftはAzure East USリージョンで、350 GiBのデータベースに対してpgbenchのTPC-Bテストを実施している。テスト条件はクライアントVMとDBサーバーを同一アベイラビリティゾーンに配置し、ストレージティア以外の変数を揃えた状態で計測した。

シナリオ1: 最大IOPS構成での比較

各ティアのIOPS上限をフルに設定した場合の結果。

クライアント数 Premium SSD (TPS) Premium SSD v2 (TPS) 向上率
32クライアント 4,123 10,562 約156%向上
256クライアント 11,465 43,000超 約279%向上

レイテンシも対照的な結果が出た。256クライアント時にPremium SSDの平均レイテンシが22.3 msまで上昇したのに対し、Premium SSD v2は5.8 msで安定していた。Premium SSDはクライアント数が増えるとIOPS上限に達して性能が頭打ちになるが、Premium SSD v2は線形にスケールし続けた。

シナリオ2: 同一価格帯での比較

月額578ドル相当の構成で、ストレージティアだけを変えてテストした結果。

クライアント数 Premium SSD (TPS) Premium SSD v2 (TPS) 向上率
8クライアント 715 1,813 約154%向上
32クライアント 1,352 3,643 約169%向上

32クライアント時のIOPSは、Premium SSDの4,968 IOPSに対してPremium SSD v2は13,620 IOPSを記録した。同じコストでスループットが1.5〜2.7倍になる結果は、OLTPや同時接続数の多いSaaSアプリに直接効く数値だ。

既存インスタンスからの移行手順

Premium SSDからPremium SSD v2への移行方法は2つある。どちらもpg_dumpによるロジカルマイグレーションより高速に完了できるとされている。

方法1: バックアップからリストア

既存のPremium SSDインスタンスのバックアップを使い、Premium SSD v2を指定して新インスタンスにリストアする。移行後はバーチャルエンドポイントを使って接続先を切り替えることで、アプリ側の設定変更を最小限に抑えられる。元のインスタンスはバックアップ保持期間が経過してから削除する流れが推奨されている。

方法2: リードレプリカ経由で昇格

Premium SSD v2を指定したリードレプリカを作成し、昇格させる方法。ダウンタイムをさらに短縮したい場合に有効だ。昇格後はバーチャルエンドポイントで接続先を切り替える。

提供状況

2026年4月時点でPremium SSD v2は世界48リージョンで利用できる。注意点として、ホストキャッシュは非対応で、ストレージサイズのスケールダウンはできない(増やすのみ可能)。

まとめ

Premium SSD v2は、ストレージがボトルネックになっているPostgreSQLワークロードに対して、コストを変えずに大幅な性能改善をもたらす選択肢だ。同一価格でスループットが最大2.7倍、レイテンシが6〜7割低下するベンチマーク結果は実戦的な数値といえる。移行はリストアかレプリカ昇格の2択で、アプリコードの変更は不要だ。