AIを使って仕事は速くなった。でも、「指示し続ける」という手間は消えていない。

チャットで依頼して、結果を確認して、次の指示を出して…これはコパイロットを使っているのではなく、コパイロットを管理しているにすぎない。

Yutori Inc.が4月23日にリリースしたDelegateは、そのギャップを埋めるために作られた自律型AIエージェントだ。

この記事でわかること:

  • DelegateがチャットAIと根本的に何が違うのか
  • Scouts・Navigator・Yutori Localの3層アーキテクチャ
  • 料金プランと他ツールとの比較

Delegateとは何か

https://yutori.com

Yutori Inc.はDevi Parikh・Abhishek Das(共同CEO)とDhruv Batra(Chief Scientist)が立ち上げたAIスタートアップだ。3人はいずれもMeta出身の研究者で、コンピュータビジョンと身体AIに深い専門知識を持つ。

社名の「Yutori(ゆとり)」は日本語の「余裕」「思考の余白」から取っている。Abhishek Dasは「精神的なゆとりを取り戻すためのAI」と表現する。製品名Delegateのコンセプトは、ユーザーが「プロンプトを打ち続ける」のではなく「タスクを委任する」こと。投げたらあとはエージェントが判断して動く。

「コパイロット」では解決しない問題

生成AIの登場でアウトプットの速度は上がった。それでも多くのツールは依然として「チャット型」だ。チャット型では、ユーザーが文脈を毎回補い、次の指示を出し、進捗を確認し続けなければならない。

Devi Parikは「チャットは反応的なAIとの向き合い方だ」と語る。DelegateはChatGPTのようなチャットインターフェースではなく、ユーザーがその場を離れてもバックグラウンドでタスクを進め続ける「能動的な参加者」として設計されている。SiliconANGLEのデモでは、Parikが一日のやることを「脳内ダンプ」として一度に投げ込み、Delegateがそれをタスクに整理して実行可能なものから着手する様子が示された(参考)。

3層構造の製品アーキテクチャ

Yutoriは機能を段階的に積み上げてきた。現在のDelegateは3つのコンポーネントで構成される。

Scouts — 常時監視エージェント

2025年6月に公開されたScoutsは、Webを常時監視するサブエージェントだ。競合の価格変更、採用情報、ニュース、商品の値下がりを自動で追いかける。

「Scout」一つが一種の「番人」として機能し、変化があれば通知を送る。ユーザーは改めて確認しに行く必要がない。Scoutsは現在、Gmail・Slack・Notion・Linear・GitHubなどにも直接接続でき、公開Webに限らず認証済みのサービスも監視対象にできる。

Navigator — 自律ブラウジングエンジン

2025年11月に公開したNavigatorは、ブラウザ操作を自律で行うWebエージェントだ。フォームへの入力、ボタンのクリック、予約の実行などを画面上で人間の代わりにこなす。

動力源は独自モデル「n1」で、Qwen3-VLをベースにシミュレーション環境と実際のWebサイトの両方で強化学習(RL)を行っている。Online-Mind2Webベンチマークで78.7%のタスク成功率を記録し、Gemini 2.5(69.0%)、Claude 4.0(61.0%)、OpenAI Operator(61.3%)を上回る(参考)。処理速度はClaude 4.5比3.3倍、Gemini 2.5比2.7倍速い。

Yutori Local — 認証サイトへのアクセス

公開Webだけではカバーできない、ログインが必要なサービスへのアクセスにはデスクトップアプリ「Yutori Local」を使う。現在はmacOS対応で、Windowsは近日公開予定。

このアプリを経由することで、エージェントは認証済みのサービス上でも操作できる。チケット購入や決済を伴うアクションも実行可能だ。認証情報はデバイス外に出ない設計で、パスワードがYutoriのサーバーに渡ることはない。

タスクの投げ方

Delegateへのタスク投げ方は複数ある。専用メールアドレス(hi@delegate.yutori.com)に転送するか、SlackでDelegateをメンションするか、iOSアプリから送るかで、どこで作業中でも手を止めずに委任できる。

料金プラン

Scoutsは以下3プランで提供されている。

プラン 月額 Scout数 監視頻度
Starter 無料 1件 毎日
Essential $15 10件 毎時
Enhanced $100 無制限 毎時

NavigatorはAPI経由で従量課金制。Delegate本体はウェブサイト上のサインアップから利用できる。

他ツールとの違い

ChatGPT・Claude・Geminiといったチャット型AIとの最大の差は、「ユーザーが離れた後も動き続ける」点だ。チャット型はユーザーが能動的に動かす必要があるが、Delegateはバックグラウンドで処理を続け、判断が必要なときだけ呼び返す。

コンピュータ操作という観点では、Claude CoworkやOpenAI Atlasと機能が重なる部分がある。ただし、Navigatorの独自モデルによるベンチマーク性能と、Scoutsによる常時監視エージェントとの組み合わせは、現時点でYutoriに固有の強みだ。

セキュリティ面ではSOC 2 Type IとGoogle認定のCASA Tier 2を取得しており、エンタープライズでの採用にも対応できる。

まとめ

Yutori Delegateは「AIをどう操作するか」より「AIにどう任せるか」を問い直すプロダクトだ。Scoutsによる常時監視、Navigatorによる自律ブラウジング、Yutori Localによる認証サイトアクセスを組み合わせた3層構造が、「委任」というコンセプトを支えている。Meta出身の研究者チームが開発したNavigatorの性能は数値でも裏付けられており、AIエージェントの実用性を一段引き上げる可能性がある。